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17. 作戦

  

 

「 とりあえずファイナに偵察に行ってもらったけど、どうする? 」

「 どうするもこうするもな……。封鎖解除を待つか……最悪は強行突破しかない 」

「 ……それ、多分私たちが追われる側になるかもね? 」


過激な策はさておき、一度ハバート達と話し合うか二人悩んでいた時。


「 ……お二人とも、外を見てください 」


窓の付近で様子をうかがっていたシャンテが、二人に外を見るように促す。

彼女の窓の向こうを見つめる表情は少し険しい。

言われて二人は窓辺に近寄った。


「 これは…… 」

「 兵たちがうろついてるな。というかこの黒い霧は…… 」

「 いると思います。暴走者が 」


松明に照らされた外は異様な明るさを帯びていた。

なにより薄っすらと漂う黒い霧がただならぬ雰囲気を醸し出している。


「 いよいよ無関係では無くなってきたか…… 」


アニエスが疲れたように目を押さえる。


「 残念だったね、アニエス 」

「 仕方がありません、こればかりは。大事になる前に、はやくハバート達と合流しましょう……っと。 どなたです? 」


またもやノックの音が聞こえた。3人とも少し警戒するが、その奥では聞きなれた声が返ってきた。


「 あー、オレだオレ。 あれ? これって詐欺になる? 」

「 ならんからさっさと入れ馬鹿! 」


アニエスに一蹴され、ハバートがフォックと共に部屋に入ってきた。

その様子は怒鳴られたというのに相も変わらず飄々としている。


「 もう、アニィさんたら短気ぃー。 そんなんじゃ早死にするぜ? 」

「 はぁ、どうでもいいから早く本題に入れ……これからどうする? 」


アニエスはどっと力の抜けるハバートの発言を聴き流し、先を促した。


「 うーん、まぁとりあえずだな。お前らも外は見たか? 」

「 あぁ。見たよ、黒い霧もな。 だから暴走者が出たんだろうと話してたんだ 」

「 ま、そうだろうな。で、さっそくオレ達の出番ってワケだが……。さっきこの辺の地図をもらってきたんだ 」

「 へぇ~どれどれ? 」


地図にはヒストスクと書いてあり、村の詳細や村近隣の様子が描かれている。

アニエスがそれを見ながらつぶやいた。


「 なんというか……ごく普通の村だな、森に囲まれた 」

「 あぁ。だが、ここに暴走者が出たということは、この場所に問題があるのか、はたまた別の要因があるのか……それを探る必要がある。が、暴走者を鎮めるのが先決だ 」

「 確かにな 」

「 だがその前に、偵察を…… 」

「 もう行ってるよ、ファイナが 」

「 ファイナ? 」


ハバートは少し驚いたように聞き返した。

無理もない、始終喧嘩腰の所しか見ていないからだろう。


「 うん。 ちょうど戻ってくる 」

「 え? 」


その場の呟きをよそにリゼラは、窓の外を見た。

そこに姿は見えないが、断言したリゼラを見てアニエスが軽く目を瞠っている。


「 分かるのか? 」

「 うーん。そんな気配がする、かなぁ?気のせいではないと思うけど 」


リゼラ自身も曖昧な答えしか見つからない。が、なぜか来ると断言できる。

ずっとファイナが彼女の影の中にいたからだろうか。

――――――そう、まるで糸が引かれるような感覚というべきか……

普段から気配や気の流れには敏感なリゼラだが、もしかしたら生来の能力に由来しているものなのかもしれない。

 ぐるぐると考えていると突然、リゼラは自分の中に何かが入ってくるような錯覚に陥った。

正確にいうと入ってきたのは自分の“影の中”のようだが。


『 戻ったわよ 』


部屋に響いた声に驚き、全員あたりを見回す。

が、姿はどこにも見えない。


「 ファイナ?“そこ”にいるの? 」


リゼラは己の影に目を留め、訝しげに声をかけた。


「 いるけどなによ? 」

「 うおお!?びっくりしたぜ……心臓に悪いな 」


ひょっこりとリゼラの影の中からファイナが顔を出す。

驚くハバートに彼女はどこかうんざりしたように水の体を波立たせている。

なぜ影の中にいるのかを聞けば影を移動してきたのだという。


「 おかえりファイナ。大丈夫? 」

「 ……まぁ、少しくたびれたわね 」

「 んで、外の様子はどうだったんだ? 」


調子を取り戻したハバートが問うと、ファイナはリゼラの影から出て、ぷかぷか浮かびながら呆れ気味に返した。


「 そうね。近くで騎士達が数人、|闇堕ち(オーグル化)した動物たちと戯れていたのと、少し離れたところで一人暴走者本体と闘っていた騎士がいたわ。地図だと……ここと、ここね 」

「 一人!? 騎士が一人で相手してるの? それって不味くない……? 」

「 あぁ、下手をしたら死ぬぞ……無謀な奴だな 」


普通はカルキリエの戒士さえ暴走者1名につき最低でも2、3人で相手をするものだ。

リゼラ達程のクラスなら1人でも対処できなくはない。が、それをただの騎士が1人で相手をするとなると、いうまでもなく危険である。


「 なおさら早くいかないと本当に死人が出るな…… 」


ハバートはぼそりと呟く。

数秒考えたのちに、口を開いた。


「 一つの案として、だ。リゼラとシャンテ。 お前らは真っ先に本体のもとに向かう。そして、その付近にオレが渡す転移の術式を張って、もし鎮められそうなら本体を鎮めてくれ。ただし騎士の救出が先だな。 次に俺とアニエスは近くの戦闘域から鎮めていく。オーグル化した動物だけだろうしな。この流れでどうだ? 」

「 うん、それでいいよ 」

「 了解、任せろ 」


全員とくに意見もなく頷いた。

フォックはというと宿で待機してもらうことになっている。治療の準備を行うらしい。なんとも心強い。

これで、一連の流れはきまったようだ。



 

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