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14. 道中の地雷

サブタイは変えました。

     

  

   

 ひゅうっと耳元で風が鳴った。   

 見上げればどこまでも続く青、見下(みお)ろせば緑豊かな大地が広がっている。 

    

「 ……なぜこうなった 」


唐突にリゼラはぼそりとつぶやいた。


「 なによアンタっ。 なんか文句あんのっ!? 」


それに反応し、ぬうっ、と背後からファイナが顔を出す。

リゼラの身体がびくっとはねた。


「 い、いやいや! 何でもないよー。 ね! エク! 」


「 ……きゅ 」


青ざめた笑顔のリゼラに同意を求められたエクは、身体をこわばらせて小さくのどを鳴らす。

さすがにこんなところでずぶ濡れは勘弁したい。  

 

 現在空の上を飛行中の5人と2体は今のところ平和的に目的地の都市ハイハーネへと進んでいた。

一部を除いて、だが。

状況は数分前に遡る。







『 あぁ、その連絡手段についてだが…… 』


 おもむろにセレーヌが口を開いた。

手段については4人の推薦(・・・・・)でライナが同行する手はずだったが……何かあるのだろうか。

リゼラ達はふと何かを予感したが敢えてスルーを選んだ。が。


『 実は、ライナが不調でな。 急きょファイナに同行してもらうことになった 』


一瞬の沈黙。


『 え……えええええええ!!!! 』


エントランスホールに絶叫が響いた。

それを受けたファイナは苦い顔をしている。


『 だからアンタ達失礼よっ!! アタシだって仕方なく、主さまがいうから一緒に行ってやるんだからねっ!? 』


『 ……これでも根はいい子なんだ。 よろしく頼む 』


『 は、ははは…… 』




そして数分後。




『 ……あれ。 ちょっとみんな。 飛龍に騎乗するの早くない? 』


出発前の話し合いを終え、5人の中で一番最後に扉を後にしたリゼラの目には、さっそく外に用意されていた四つ脚の飛龍の背に、さも当然のようにペアを作って乗っている四人の姿があった。

……行動が早い、早すぎる。

リゼラは、ばっと視線を向けた。


『 いやーいたって普通だぜ? 良かったな、お前ら軽いから楽じゃん 』


『 なんかごめんねー。 はは 』


飄々といってのけるハバートと苦笑いをするフォック。

はっと瞠目し、アニエスたちを見やる。


『 ……………… 』


『 ファイナさんをよろしくお願いしますね、リゼラ 』


シャンテは狙っているのかそうではないのか、とにかく悪意のない微笑みを向けてくる。

アニエスに至っては沈黙を貫き、明後日のほうを見ていた。

 

『 おいこら………… 』


ぎりっとリゼラは歯噛みした。

ファイナの高飛車が取っつきにくいのは分かる。

だがしかし。いっせいにグルになるとはどういう事だ。

その時、リゼラが今出てきたばかりの扉が開いた。


『 ねぇちょっとっ! アタシは誰といっしょに乗ればいいの? 』


振り返るとぷかぷかと空中に浮いているファイナが扉から出てきた。いささか不機嫌そうである。

彼らはいっせいにリゼラを指差した。


『 ……ちょい。 君たち……? 』


彼らを顧みたリゼラの顔には「後で覚えてなよ……?」と書いてある。


『 ……ふーん。 ま、なんでもいいけど下手な運転しないでよねっ!? 』


『 …………りょーかい 』


先が思いやられる瞬間だった。





 と、そんなこんなで旅の仲間はリゼラを含め、アニエス、シャンテ、ハバート、フォック、そしてファイナ、エクスプリスの5人と2体になったのである。

中型飛龍は一頭につき2人乗りなのでアニエスはシャンテと、そしてハバートはフォックと相乗りしている。なのでリゼラがファイナとエクを乗せているという組み合わせだ。

もっともファイナもエクもリゼラの背中に引っ付いているか肩に乗っているか……という状態だが。

とりあえず2体にしっかりとくっついてもらえば、二人乗りよりも飛龍の操舵に気を使わずにいられるのは確かである。


「 しっかしオレ達って白い集団だな。 この人数が下に降りたら目立つかもな 」


後方にいるハバートが改めて言う。

全員白い服を着用しているのだが、後ろから全体を見るとやはり不自然なのだろうか。


「 そうか? まあ今更だろ。 分かりやすくていいんじゃない? 表向きは『 巡礼 』だからな。 ほかの巡礼者のグループより少し護衛の人数が多いと思えばいい 」


 アニエスの言うとおり、本来の目的である「 闇人の異変の原因を突き止めて解決する 」という目的は人々の混乱を避けるため、又、光と闇の両族の平和のために秘匿し、表向きは人々の思いを懺悔や助言で受け止める「 巡礼の旅 」という設定だ。

だから今回は他の巡礼者のように「 教会の巡礼 」らしさを全面に出すため、ハバートとフォック以外の全員は教会から支給された普段はあまり着ることのない紋章入りロングコートを羽織っている。

ハバートは元から神父服自体が白であり、フォックも支給された紋章入り白衣を着ていることからコートは必要としない。


「 ま、いざとなったら頼むよ。 イカサマ神父 」


「 イカサマは余計だって!! 」


アニエスの発言に喰い気味のツッコミをいれると、ハバートは「 まったく……少しは年上を…… 」となにやらぶつぶつと呟いていた。


「 ハバートってー、4人の中で一番お兄さん? 」


つぶやきに反応したのか彼の後ろに乗っているフォックが興味深そうに聞いた。


「 そうなの、今二十歳。 それなのにこいつら全然敬ってくれないんだぜ? ひどいよなー 」


わざと聞こえるように嘆いている。

が、誰一人として意に介していない。


「 は? 何言ってる? たかだか1、2歳の差だし今どき年齢なんて意味ないだろ。 それに、あんたのどこを敬えってのさ? 」


アニエスが後ろに向かって言った。するとハバートは悔しそうに何かを叫んでいる。

だが、アニエスは聞こえないふりをしている。

憮然としているハバートは諦めたのか話を続けた。


「 ちなみに、あのアニエスは18歳。 シャンテは16歳、オレらの中じゃ最年少だな。 んで、リゼラが17歳ってわけ。 ま、確かにアニエスの言うとおり年齢がどうのとかってあんまり意味ないけどな 」


ではなぜこの話をしているかというと単なる話題づくりである。


「 へー! みんなホントに若いんだねー! それでいて全員一級戒士ってすごいんだなー 」


フォックが心の底から感心したように声を上げた。


「 ま、まあな……あははは 」


こういう場合、何と返せばいいのか分からず笑いでごまかしてしまうのはいつものパターンだ。


「 フォックは何歳なの? 」


照れ隠しを含め、リゼラが話を振る。


「 えー? ボクはねー。 もう32になったかなー 」


「 へぇーそうなんだ! 32かー……って、ええッ!? 」


「 お前も外見と年齢が一致しないクチか…… 」


「 そ、そんなに意外かなー……でも若いって思ってもらえるのはなんだか嬉しいねー。 まぁ君たちの世代の若さには負けるけどねー…… 」


返ってきた反応に苦笑いをするフォックである。


「 なんかウチらの周りってそういうの多いな……。 けどフォックのそれでいくと先生の38は別に不自然じゃない……のか? おいリゼラ。 先生本当に38なんだよな? 」


アニエスが怪訝そうに尋ねる。


「 ……多分、ね。 本人は一応そう言ってた。 まぁ……いいじゃない? 歳が若かろうが何だろうが師匠は師匠だし。 ……私はずっとそう思ってるよ 」


リゼラの答えに「 それもそうだな 」とアニエスは頷き返した。

そして5人のあいだに訪れる沈黙。

もちろんそれを破ったのはハバートだった。


「 そういえば、ファイナはいくつなんだよ? 」


ニヤニヤしている。なにを期待しているのだろうか……。

精霊といった類は軽く300歳を超える事もあると、知らないわけではだろうに。

そもそも自分の歳をわざわざ律儀に覚えている精霊の方が少ないのだ。

当然、話をふられたファイナは白い目で見ている。


「 はんっ! アンタみたいなお子様になんで自分の歳なんかわざわざ言わなきゃならないのよっ! 」


が、ハバートはおちょくった笑みでからかった。


「 そうかーごめんごめん。 そうだよなぁー2000歳とかだったら結構歳だもんなぁーごめんなー? 」


ずいぶん面白がっているようだ。

明らかに調子に乗っている。


「 ハバート。 そういう態度はあまりはよくないと思いますよ? 」


「 その通りだな。 だからお前友達いないんだよ 」


ずっと成り行きを見ていたシャンテとハバートの悪癖に呆れたアニエスが注意をした。


「 そうそう。 それに例えファイナが1000歳だろうと2000歳だろうとファイナはファイナだし。 あいつの言う事気にしちゃダメだよ? 」


そしてリゼラがファイナをフォローをした。

……つもりだった。


「 …………よ…… 」


「 ……え? 」


小さく声が聞こえる。


「 アタシはっ! まだっ! 800歳よッ!!!! バカ―――――ッ!!!! 」



……思えばこれが地雷だったのだろうか。


  

       

結論:この世界では外見と年齢を気にしてはいけません


  

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