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短編詰め合わせ

私は「  」が「  」です

作者: 猩々緋

 ある日クラスメイトに言われた。

 「森宮さんて香住(かすみ)さんと仲良いよね。今日なんで休みか知ってる?」

 森宮とは私のことであり、香住とは私がよく一緒にいる人だ。彼女は今日学校を欠席している。担任も彼女が欠席していることしか告げなかった。

 私は首を横に振った。するとクラスメイトは「そっか、ごめんね」と行ってしまった。

 彼女があのクラスメイトと親密そうに話している場面など見たことがない。数度会話をしている程度だ。おそらく、ただの興味本位だったのだろう。

 

 私はよく彼女と一緒にいる。休み時間だったり、グループを作らなければならない時、必ず彼女は私のところへ寄ってくる。

 何故一緒にいるのかと問われれば、好きな物が同じだったからだ。私たちの場合それは漫画だった。

 私はジャンルを問わずいろいろな漫画を読んでいた。引っ込み思案だからそれをネタに誰かと話をするということは少なかったのだが、彼女は積極的に話しかけてきた。

 彼女も多くの漫画を読んでいた。少女漫画に少年漫画、青年漫画に、時には成人向けのものまで読んでいるらしい。

 けれど、彼女には酷い「クセ」があった。いや、正確にはクセと言わないのかもしれない。

 彼女はほとんどのものを否定する。

 私が話題に出した漫画を、「それ面白くないよね」と即座に否定した。私は「面白くない」と話そうとしたのではない。「面白い」と話そうとしたのだ。

 「そうかなぁ?」と返せば、「うん、ぜんぜん面白くない」と返ってくる。いくつか言葉を交わしたが、彼女は貶すような事しか言わなかった。

 そんな会話を、今まで何十回としている。

 またある時は、私がゲームをしている目の前で「それ面白くない」と私の手元を指して言った。

 私は面白いと思っているからそのゲームをしているのである。

 また違うゲームをダウンロードし、面白かったので友達にも勧めてみた。体験版があったのでそれをしてみて貰うと、また彼女が「それ面白くない」と、勝手にボタンを連打して早々にゲームを終了させた。

 彼女は自分が気に入った物のみしか許していないようだった。私が友達に勧めたゲームだって、彼女はプレイしたこともない。後ろからプレイを見ていたわけでもない。

 彼女は私がはっきり「好きだ」と言った物まで否定する。貶す。そして最後に言うのだ。

 「あんたってくそゲーとか好きだよね」

 だから、私は彼女が大嫌いだった。正直、向こうから寄って来たときには心中でため息を吐く。

 けれど、私は彼女に言えていない。「構わないで」と言えていない。


 私は携帯に手を掛け、彼女のアドレスを引き出した。そしてメール作成画面へ移動する。

 「今日どうしたの?」そう書いてメールを送信した。


 私は彼女が大嫌いです。

 けれど、誰かに嫌われることを恐れて「嫌い」と言えない私が、私は大嫌いなのです。

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