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33話 本屋にて。


 33話 本屋にて。


 今日は珍しく、一人きりの放課後だった。

 滝本はなんかネットのバラエティ番組に出るとかで、学校を休んでいる。


 独りで静かに豊かに過ごす時間は格別だ。


 近所の本屋に立ち寄って、テキトーに漫画の新刊をチェックしていると、

 ふと、隣の棚の向こうに、妙な動きをしている中学生を発見した。

 チラリと横目で確認する。

 リュックの口を開けて、棚から本を抜いて……入れている。


 万引きだった。


 蝉原に憑りつかれる前の僕だったら、完全にシカトしていたところだ。

 見て見ぬフリをして、そそくさと別の棚に移動していた。


 けど、なんだろう……気が強くなったのだろうか。

 僕は気づいたら、


「これこれ、だめだめ」


 と、普通に注意をしていた。

 僕も成長したものだ。


 なんて思っていると、その中学生は、


「あ?」


 と、めっちゃ切れてきた。


「死ね、ボケ」


 と、吐き捨てて、そのまま、さっさとどこかに歩いていこうとした。

 普通にカチンときた。


 いつもヤクザや暴走族を相手にしている僕に、よくも、あんな口をきけたものだ。


「ちょっと、ちょっと」


 そう言って追いかける。

 普通に店を出てどこかに向かっている中学生。

 万引き成立しちゃってるじゃないか。


 中学生は、店の裏手にある路地裏に入る。

 追いかけると、そこには、10人以上の中学生がいた。

 みんなワイルドに髪を染めていて、目つきが決まっている。


 昔の僕ならビビリ散らかすところだけど、


「あのぉ……万引きは、あまりよろしくないかと……存ずる次第であるといいますか……」


「あ? てめぇ、だれ?」


 リーダー格っぽい『汚い茶髪』がそう言うと、万引きをしていた中学生が、


「アっちゃん、あいつ、邪魔してきた。万引きするのはよくない、とかカッコつけて」


「ふざけてんな……」


 そう言いながら、汚い茶髪が僕の方に近づいてきた。


「金、出せ。モヤシ。それで許してやるよ」


 蝉原が毎日この体を鍛えているから、最近はそこまでモヤシじゃないと思うんだけど……

 でも、まあ、この茶髪は、けっこうガタイがよくて170センチを超えているので、

 客観的に見て、僕の方が明らかに弱そうではある。


「……万引きはよくないよ。想像以上に店にダメージを与えるって、前、なんかのニュースで言ってた……気がする」


「だから?」


「だからって言われたら……返答に困るけれど……」


「今さぁ……マジでイラついてんだわ。女にガキが出来たとか言われて、ガッツリ引いてんだわ。お前みたいなゴミの相手してる暇ねぇの、わかる?」


 中学生で、ずいぶんとエッジのきいた状態にいるね……

 僕が中学生の時は、女子としゃべったこともなかったよ……

 世の中、なぜか、ヤンキーがモテるんだよねぇ……


「おい、聞いてるか、ゴミ。なに、もしかしてビビってる?」


「あのさ……僕の顔、見たことない?」


「あ? ねぇよ」


 そこは所詮中学生かぁ……

 ある程度のチンピラには、だいぶ顔が売れていると思うんだけど。


「てか、いいから金。出せ。いまあるだけでいい。おろすのに10万いるとか言われてんだよ」


「……親御さんに頼むしかないんじゃないかな」


「うっせぇ、ぼけ」


 思いっきり殴られた。

 めちゃくちゃ痛い。

 夜間に殴られた時はアドレナリン的なアレがいっぱい出ていたから、まだマシだったけど、フラットな状態で受ける顔面パンチはハンパじゃない。


 普通に鼻血が出ているし、じんじんと熱く痛む。


「うわ、こいつ泣いてんだけど。きめぇ」


 普通に涙が出ていた。

 情けない……


(蝉原……悪いけど、ちょっと、こいつらシバいてくれないかな……)


 と頼んでみた。

 だが、


(蝉原さん? あのぉ……)


(せっかくだし、最後まで自分でやってみたら?)


(え……いや、ちょっとまってよ。え……マジで? いや、相手の数……あんなの、君以外……あの……蝉原さん?)


 そこから蝉原はガン無視だった。

 マジ……で……?



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― 新着の感想 ―
セミハラがいればなんとかなるという考えがどこかにあったせいで気が強くなったんですかねぇ
女にガキが出来たとか言われて、ガッツリ引いてんだわって中学生の抱えるトラブルが リアルに斜め上すぎて笑っちゃいました
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