泡になって。
肌が春の終わりを感じ始めて、カゲロウと睨めっこしながら潰れたアスファルトを歩く。
背中とリュックサック。
白いワイシャツが背中にピタリとへばりつく感覚、夏を感じる。
今日は上司に嫌な顔をされながら、勇気を振り絞って定時で帰る。
午後6時、まだこんなにも明るいのか。
季節の変わり目に気づけなかった自分に嫌気がさしながら、街の景色を見て思う。
「お、鈴木?おい、おい!」
「おー!前田!」
おそらく高校の同級生だろうか。
まだ若い頃を思い出すほど肥えていないのに。羨ましい。
華の金曜日。
道端ですれ違って声をかけるほどの友人はいないけれど、さっきの子たちに憧れたわけではないけれど、今日は誰かと呑みたい気分になった。
電話をかける。
電話をかける。
電話をかける。
ゆっくり、ゆっくり。駅前の居酒屋まで時間をかけて歩いた。
あー。キンキンのビールが飲みたい。
昔話に花を咲かせて、ツマミに机の上でおしくらまんじゅうをさせたい。
乾杯がしたい。上司以外と乾杯がしたい。
メニューが恥ずかしがって赤らめるほど片っ端から目を通した。
アップルジュースが机に運ばれる。
何故だろう。ひとりぼっちに怯えて、躊躇った。
アップルジュースで童心を飾る。
ゴトッ。
しまった。やってしまった。
グラスが床へ一直線。
せっかく頼んだアップルジュース。
まるで本当に子供に戻ってしまったかのように。
なぜか溢れたアップルジュースが泡をなしてビールに見えた。




