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泡になって。

作者: 春砂美心
掲載日:2026/06/17

肌が春の終わりを感じ始めて、カゲロウと睨めっこしながら潰れたアスファルトを歩く。


背中とリュックサック。


白いワイシャツが背中にピタリとへばりつく感覚、夏を感じる。


今日は上司に嫌な顔をされながら、勇気を振り絞って定時で帰る。


午後6時、まだこんなにも明るいのか。


季節の変わり目に気づけなかった自分に嫌気がさしながら、街の景色を見て思う。


「お、鈴木?おい、おい!」


「おー!前田!」


おそらく高校の同級生だろうか。


まだ若い頃を思い出すほど肥えていないのに。羨ましい。


華の金曜日。


道端ですれ違って声をかけるほどの友人はいないけれど、さっきの子たちに憧れたわけではないけれど、今日は誰かと呑みたい気分になった。


電話をかける。


電話をかける。


電話をかける。


ゆっくり、ゆっくり。駅前の居酒屋まで時間をかけて歩いた。


あー。キンキンのビールが飲みたい。


昔話に花を咲かせて、ツマミに机の上でおしくらまんじゅうをさせたい。


乾杯がしたい。上司以外と乾杯がしたい。


メニューが恥ずかしがって赤らめるほど片っ端から目を通した。


アップルジュースが机に運ばれる。


何故だろう。ひとりぼっちに怯えて、躊躇った。


アップルジュースで童心を飾る。


ゴトッ。


しまった。やってしまった。


グラスが床へ一直線。


せっかく頼んだアップルジュース。


まるで本当に子供に戻ってしまったかのように。


なぜか溢れたアップルジュースが泡をなしてビールに見えた。


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