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笑いの授業  作者: ひろみ透夏
終章

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32/32

【おまけ】12年後のふたり

 

2025年 11月12日――。


東京ミルネ・ザ・きちもと

M-1準々決勝(ボケツッコミ変更)



高城・塚田:はいど~も~、カグラ坂で~す。


塚田:一見強面(いっけんこわもて)のわたしが塚田徹で……


高城:爽やか好青年のぼくが高城亮介で~す。

   匂いだけでも(おぼ)えて帰ってください。


塚田:できればコンビ名の方を(おぼ)えてくださいね~。

   匂いなんてお願いしなくても、嫌でも印象に残りますから。


高城:最近どうですかあなた?(ぶんぶん腕を振り回して)

   他人(ひと)を傷つけてますか?


塚田:いきなり何ですか、ひとを見た目で判断して。

   わたし怖そうに見えますけど反社(はんしゃ)じゃないですから、やたらに他人(ひと)を傷つけたりしませんよ。


高城:でもね、直接暴力をふるわなくても、他人(ひと)を傷つけることってあるんですよ。

   デブとかブスとかキモいとか、無駄にデカイ、顔が怖い、ネタ飛ばす……。


塚田:ああ、言葉の暴力ね。……後半、わたしのこと言ってます?


高城:いまは思ったことをうっかり()口にしただけでアウトですから。


塚田:うっかりも何も、思いっきりストレートな悪口でしたけどね。

   ひとを見て目で判断する、あなたが一番気をつけてくださいよ。

   いまはコンプライアンスが厳しいですから、すぐに視聴者からクレームが飛んできますよ。


高城:大丈夫。ぼくは口が裂けてもそんなことは言いません。

   『お笑い虎の穴』で特別な訓練を受けて育ちましたから。


塚田:さっきフツーに言ってましたけどね、デブとかブスとかキモいとか。

   ……ちなみに『お笑い虎の穴』の訓練ってどんな?


高城:うっかり他人(ひと)を傷つけようものなら、カナヅチ持って追いかけ回されるんです。


塚田:こわっ! えげつない暴力! ひとのすることじゃない、鬼! 悪魔!!

   そんな極悪非道なことをする人間が、この世にいるんですか?


高城:確実にいます。ただね、ネガティブな思いも心に(とど)めておけば罰は受けないんです。


塚田:確かに。思っちゃうことは仕方ないですから。


高城:そのネガティブな思いを誰かと共有して他人(ひと)を笑うと、ノコギリで首を斬られるんです。


塚田:グロいな! いちいちグロいんだよ『お笑い虎の穴』の罰!

   そっちの方がコンプラに引っかかるじゃねえか!

   だけど堅苦(かたくる)しい世の中だなぁ。お笑いやめようかな……。


高城:安心して塚田さん。(よう)はひとを(さげす)む笑いをしなけりゃいいんですよ。

   (さげす)みのないイジり()なら、他人(ひと)を傷つける可能性はグンと減ります。


塚田:ああ確かに、でもそんなすぐにできますか? 

   さっきもあなた、デブ、ブス、キモいとか言ってましたけど。


高城:や、やめろ~~~っ!!(辺りを見回す)

   どこでアイツが見てるか、わからなんだぞ~~っ!!


塚田:こわっ! トラウマになってるじゃねえか!

   いまも何処(どこ)かで見張ってるかのよ『お笑い虎の穴』のやつ。

   心が休まらねえな!


高城:さっきからきみ、お笑いに対してマイナスなことばっかり言ってますけど……。


塚田:おまえだよ、ずっとおまえが言ってるの!


高城:いいこともたくさんあるんですよ、笑いの基本は「緊張と緩和」ですから。


塚田:ああ確かに。一触即発(いっしょくそくはつ)のピリついた状態でオナラして、思わずみんなで笑っちゃったり。


高城:クラスに馴染(なじ)めなかった子が、起死回生(きしかいせい)の一発ギャグで人気者になったり。


塚田:他にも、大人しいと思ってた子がじつは天然キャラで、みんなからマスコットのように……。


高城:や、やめろ~~~っ!!(頭を抱える)


塚田:今度は何だよ!


高城:天然に手を出すな! 気軽に天然をイジると夜の校舎に監禁されるぞ!


塚田:なんて過酷な訓練受けてきたんだよ、それフツーに犯罪だぞ。


高城:それだけ難しいんですよ、お笑いは。

   誰かを笑う()のではなく、誰もが笑える()ように心がけるのがプロなんです。


塚田:ワザと滑稽(こっけい)なことをして笑って欲しい人もいると思いますけどね。


高城:そこの見極めが肝心(かんじん)なんです。

   それが出来ないひとは、三階建ての校舎の屋上から突き落とされます。


塚田:死んじゃうよ! スパルタ過ぎてフツーに死んじゃう!

   お前よく生きて卒業できたな!

   どこの誰だよ、その『お笑い虎の穴』を作ったサイコ野郎は!



高城:いまは、ぼくのお嫁さんです。


塚田:実話じゃねえか、もういいよ。




【完】




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