【高城の章】ヒントってなんの? 02
第一校舎二階の教室を出たふたりは、道すがら何度も教室の窓から神楽坂先生の姿を確認しながら、音楽準備室に戻った。
「佐倉、俺だよ。開けて」
高城が音楽準備室のドアの前でそっと呼びかける。しかし返事はなかった。
試しにドアノブに手をかけてみると、ドアはするりと開いた。
「いないな。川に洗濯にでも出かけたか?」
(こんなときに、くだらないボケを言うなんて)
塚田の声を背中で聞きながら、高城はツッコミもせずに音楽準備室を見回した。
(まさか先生に見つかったなんてことは……)
すると、月明かりが差し込む小窓の下で、金管楽器のマウスピースがきらりと光った。
見るとその下に五線譜ノートの切れ端が置かれ、書き置きがされていた。
高城がしゃがみ込んで、書き置きを読み上げる。
「先生が教室から離れたので、携帯電話を取りに行ってきます……って、佐倉のばか! あんなことさせたぐらい怖がっていたくせに、ひとりで行くなんて!」
「あんなこと?」
塚田もしゃがみ込んで、聞き返す。
「ああ、いや……。それより徹、ケータイ持ってない?」
「ケータイ……。そうか、その手があったか」
塚田が制服のポケットをまさぐり、ちっと舌打ちをする。
「やっぱり、教室か?」 高城が聞いた。
「ああ、あのときだ」
神楽坂先生は九時まで帰宅時間を延長したとき、みんなの携帯電話を集めて教卓の上にまとめて置いていた。保護者から連絡が入ったときにすぐ出られるようにとか、よくわからない理由をつけていたが、文化祭の準備に夢中になっている生徒は、誰ひとり疑問を持たずに提出したのだ。
「はじめから計画のうちだったんだな。ケータイで外と連絡をとられないように」
そう言って、塚田は腕を組んだ。
「うちのクラスだけ文化祭の準備を長引かせたのもそうだろ? ブレーカーを落としたり、防火シャッターで閉じ込めたり、とにかく用意周到だよ」
高城も肩をすくめて、ため息をつく。
「だが、やはり携帯電話だな。この状況を打破できる鍵は……」
塚田の言葉に、高城がはっとしてこたえた。
「それでか! 土屋と葛西も、先生の隙をついて教室にあるケータイを取りに行ったんだ。土屋は、返り討ちにされちゃったけど……」
「じゃあ、佐倉も危ないな」
その言葉を聞いたとたん、高城は血相を変えて立ち上がった。
「行ってくる!」




