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笑いの授業  作者: ひろみ透夏
高城の章

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【高城の章】ヒントってなんの? 01

 

 上靴を脱ぎ捨てる。


 神楽坂(かぐらざか)先生に気付かれないよう足音を忍ばせながら、高城(たかぎ)は第一校舎三階の廊下を走ったが、すでに塚田(つかだ)の姿はどこにもなかった。


「第二校舎へ逃げたのか……? それとも、どこかの教室に……」


 ひとつずつ、教室のなかをのぞき込みながら塚田(つかだ)を捜す。

 暗い教室の床に黒い塊が転がっているのを見つけるたびに、高城(たかぎ)の心臓は早鐘を打った。

 それらが文化祭の出し物の一部だったり、準備で出たゴミをまとめたもだとわかると、高城(たかぎ)はほっと一安心したが、緊張を解かずに、また次の教室へ向かう。

 階段を下り、二階へ足を踏み入れたとたん、暗い廊下から、ぴしゃりと教室の引き戸が閉まる音が聞こえた。


(あきらかに、俺から逃げている) 高城(たかぎ)はそう思った。

(俺の気配を神楽坂(かぐらざか)先生だと勘違いしているんだ。あれは(とおる)だ!)


 高城(たかぎ)は嬉しくなって足音も気にせず、思いきり廊下を走った。そして直前に閉まった教室の引き戸を、いきおいよく開ける。


(とおる)!」


 そのとたん、高城(たかぎ)は胸ぐらをつかまれて、暗い教室のなかに引きずり込まれた。抵抗もできないまま窓際まで引きずられる。

 高城(たかぎ)はパニックにおちいりながらも、胸ぐらをつかむその腕を力いっぱい引っかいた。


「痛いよ、ばか! セオリーは叩くだろ。引っかくって、ネコか!」


 その怒鳴り声は、塚田(つかだ)だった。

 塚田(つかだ)高城(たかぎ)の頭を上から押して、無理矢理しゃがみ込ませると、しいっと指で黙るように指示を出し、その指で窓の外を指し示した。


神楽坂(かぐらざか)先生だ!」


 高城(たかぎ)が押し殺した声で言った。

 塚田(つかだ)が黙ってうなずく。


「ようやく第二校舎に戻っていったんだ。悪かったな、捜しているのは気付いたんだが、タイミング的に出て行けなくて」


「そんなことより、よく逃げ切ったな(とおる)。おまえ、音楽室で先生に見つかっただろ? あのとき、俺も奥の音楽準備室にいたんだよ」


「知ってる。監視してたんだ、間違いが起きないように」


「間違い?」

「ああ、つまり……」


 塚田(つかだ)は窓から視線を外すことなく、坊主頭を引っかきながらこたえた。


「音楽室の窓から、第二校舎の廊下が監視できるんだ。タイミングを間違えて、神楽坂(かぐらざか)先生に見つからないように」


「やることは同じだな」 高城(たかぎ)がにやりと笑った。


「音楽準備室にも小窓があって、第二校舎が丸見えなんだよ。こうして神楽坂(かぐらざか)先生の姿が見えるうちは、第一校舎は安全だからな。音楽準備室に戻ろう。そこに佐倉(さくら)もいるんだ」




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