冬の童話祭「ピカピカなお月様とキラキラなお星様~僕はだあ~れ?~」
ここは『地球』。そしてその地球を主星とし公転しているやたらと大きい衛星には、地球上の人々から特別に『月』という名前が付いていた。
もっともこれは地球のとある地域で使われている呼称であり、別の地域では『ムーン』とか『ルナ』とも呼ばれている。
因みに惑星の周囲を回る『物体』の名称は分類上は『衛星』であって『月』ではない。そう、『月』とはあくまで地球の人々が地球の周りを周回している衛星に付けた唯一無二な『名前』なのだ。
なのでノベル作家が異星界に飛ばした主人公に現地の夜空に昇ってきた『衛星』を見させて『月が出てきた』言わせるのは正確には間違いである。
よって異星界では『月明かり』という表現も突っ込まれる要因となる。もっとも言うと暦の『月』も月の満ち欠けがベースになっているので、仮に異世界にも『月』に似た衛星があったとしても説明が面倒である。
もっともそれを言っちゃうと異世界モノは全ての固有名詞をいちいち考えて説明しなくてはならなくなるので結局は程度問題だろう。
勿論『太陽』という呼び名も地球上での専用名称だ。なので太陽は正式には『恒星』という分類名称で呼ぶのがSF界隈では常識だ。
つまり宇宙に数ある『恒星』の中でも、地球の人々から『太陽』と呼ばれるべき恒星は太陽だけなのである。
と、いきなり日常生活には全く必要のないウンチクから始まったが、この物語を読んでゆく上で必要最低限の知識なので初めに説明しました。ではここからが物語の本番です。
~○●○●○●○~
とある冬の夜、今日は晴天が続いた為に地上から宇宙空間へ熱が放射される現象、つまり『放射冷却現象』を遮る一片の雲もなかった為に、日没と共に気温はぐんぐん下がり気温計の赤いアルコール液は現在マイナス3度を示しています。更に絶対湿度も22%しかありません。
そんな深々と冷え込み乾燥した澄んだ大気越しに空を見上げると、地上と上空の温度差による大気の揺らぎが顕著となり星々が煌めいて見えます。
その煌めきはまるで星々が『モールス信号』でやり取りをしているようにも見えなくはありません。
そして実際に天空では煌々と輝くお月様と、きらきら輝くお星様がお話をしていました。
「ねぇ、ムーン。あなたは何故毎日姿を変えられるの?僕もたまには変身してみたいなぁ。」
「ははは、別に私は変身なんかしていないよ。ただ見え方が変わるだけだ。しかもそれは私自身のチカラではなくて太陽さんからの影響だね。」
「太陽さんからの影響?それってどうゆう事?」
「それはね、私は自らが光を発しているわけではなく、太陽さんから送られてくる光を反射しているだけだからだよ。」
「えーっ、ムーンって光を反射するの?でもムーンの表面って見たところ砂と岩だらけで鏡はどこにも見えないんだけど?」
「ははは、まぁ確かに鏡はないけど、そもそもモノが見えるってのは、その物体に当った光が反射して、その反射光の波長を観測者の視覚神経が探知するからだよ。」
「むーっ、難しくてよく判らない・・。」
「その昔、とある神様は世界をお創りになった時、最初にこう言ったらしいんだ。『光あれ』とね。それによってこの世界は形というモノが見えるようになったのさ。つまり大抵のモノは光を反射するとこで姿を現すんだ。」
「あーっ、確かにそうかも。真っ暗なところだとそこに何かがあっても判らないからねぇ。ぶつかって初めてそこに何かがあるって判るもの。」
「だろう?だから夜道では自転車を無灯火で乗っては駄目なんだよ。自分からは相手が見えていたとしても相手からは自分が見えていないかも知れないんだから。」
「あははははっ、ムーンって物知りだねぇ。まさか人間の行動で説明されるとは思わなかったよ。」
「何でもは知らないさ。あくまで知っている事だけだ。ただ私はここから長い時間ずっと地上を眺めていたからね。なので全てではないが地球上で起こった大抵の事は『見て』いるんだよ。」
「おーっ、すごいっ!ならばムーンは人間の言葉で例えると地球の『生き字引』だねっ!」
「何を持って生きているかと捉えるかで変わってくるが、人間たちの感覚では私や君は生きていると知覚出来ないだろうね。」
「あっ、そうかも!でもそんな僕らに対して人間は夜空を見上げて願い事をしたりするんだから笑っちゃうよね。」
「まっ、それはある意味私たちを神聖なものとして見てくれているのだろうから笑ってはいけないよ。でも流れ星が見えている間に願い事を3回唱えるというのはさすがに時間的に無理があるよなぁ。」
「あーっ、トンチ系の対処法だと『カネカネカネっ!』って唱えろとか言うらしいけど、『カネ』をどうしたいのかというところが抜けているから仮に言い切れたとしても、流れ星もどうしたらいいのか困るよね。」
「うん、まぁ、言わんとしている事はなんとなく判るけど、願い事として受理するかというと却下だよね。と言うか、そもそも流れ星って厳密には『星』じゃないしね。地球の大気圏内に突入してくる塵や岩のカケラが殆どだし。」
「あー、彗星から放出された水蒸気が氷となって振りそそく事もあるらしいね。」
「毎年、11月頃に現われるしし座流星群もその母体はテンペル・タットル彗星であり、流星はその彗星から放出されたチリや氷だからね。」
「つまり人間って塵や氷の粒に願い事をしているのか。」
「まっ、願い事なんて、願う人がそれを信じるかどうかでしかないから。そもそもそれを言っちゃうと『偶像崇拝』の話にまで発展しちやうし。」
「ははは、仏様や女神様の像はそこにいてくださるからいつまでも願っていられるけど、流れ星は一瞬だからなぁ。そうゆう意味では、あれって流れ星が『見えている間』なんていうシバリをするから駄目なんだと思うけどな。」
「まっ、それだけ願いというモノは簡単には叶わないものなのだという戒めの意味も含んでいるんだろうけどね。」
「つまり気持ちの問題なの?なんにしても僕らに願い事をされてもどうしようもないんだけどね。」
「まぁ、人間には口にする事で問題を理解するという能力があるからね。だから人間にとって『言葉』はとても大切なんだ。『言霊』なんて例えもあるくらいだし。」
「あーっ、僕それ知ってるよ。『ToDoリスト』って言うんだっ!」
「むーっ、『言霊』と『ToDoリスト』はちょっと意味が違うはずだけど、まぁ行動の規範という点では一緒にしてもいいかもね。」
はい、随分人間くさい話をされているお月様とお星様ですが、まぁ、彼らの身近にあるもので変化に富んだものと言えば『人の暮らし』くらいしかないので感化されてしまったのでしょう。
でもお月様は『ToDoリスト』まで知っているのか・・。本当になんでも知っているんだな。
「さて、ちょっと話が反れたので戻すけど光の反射と言ってもその度合いはモノによって色々なんだ。そしてその度合いは『反射率』と言うんだけど、鏡はその反射率がとても高いんだよ。なので普通の鏡でも可視光線ならば85%くらいを反射する。高性能なやつだと99.99%なんていう特殊な鏡もあるくらいだ。」
「おーっ、それでも100%ではないんだ。」
「理論上は完璧に光を反射させる事は無理らしいんだよね。どうしても『光子』が物体にぶつかった時にロスが発生するからさ。逆に光を反射させないモノとして人間は『超黒色』というモノを作ったけど、それは反射とは逆に光を吸収してしまう事で観測者の視神経に波長を伝えなくするものなんだ。そしてその吸収率足るや99.98%らしいよ。なのでそれを人間たちは『黒』という色として知覚するんだね。」
「99.98%っ!それってほぼ真っ黒ってことじゃんっ!やるな、人間っ!」
「ははは、そうだね。でも人間以外でもそれに匹敵する『黒さ』を身にまとっている動物はいるんだよ。」
「えっ、そんな生き物がいるの?もしかして闇夜のカラス?」
「いや、カラスではない。でも鳥だよ。それは極楽鳥の仲間で『オオカタカケフウチョウ』や『フォーゲルコップ』と言うんだけど、その鳥の羽根は可視光線の99.95%以上を吸収するのが確認されているんだ。」
「おーっ、真っ黒い鳥と言ったら『カラス』かと思ったら極楽鳥なんていうハイカラな名前の鳥の方が真っ黒なんだっ!」
「まぁ、確かにカラスは全身が真っ黒だけど、『オオカタカケフウチョウ』や『フォーゲルコップ』は体の一部が別の色なので逆にお洒落ではあるね。」
「むーっ、ブラックコーディネイトにおけるワンポイントアクセントみたいなものなのかな。と言うか、色って別に白と黒以外もあるよね?あれはどうゆう原理なの?」
「それを説明するには光は波長でもあるという事を理解しなくてはならない。つまり視覚神経は各波長ごとに反応する視神経を持っていて、その神経と合致した波長を固有の『色』の違いとして『脳』は認識しているのさ。」
「あーっ、『脳』ね。それは僕らにはない組織だよねぇ。」
「私たちは『魂』で意思疎通するからね。まぁ、人間にも魂は備わっているんだけど普段は意識しないから使い方を知らないんだ。でもたまに強度の強い意識を受けた時などは、人はそれを『第六感』とか『霊感』とかいう言葉で認識したりしているらしいよ。」
「それって『透視』とは別なんだよね?」
「うん、違う。透視は物体の陰にあり直接は見えないモノを視覚する能力と定義できるけど、大抵の厚みがある物体は透過率が0%だから物体の後にあるモノは視覚できない。でも可視光線以外の方法で知覚する方法はあるんだ。それらの装置は結構身近にもあって、病院で行なわれる『レントゲン撮影』や『CTスキャン』なんかがそうだね。」
「あー、あの体の中を映し出すやつだね。でもアニメでは電撃を受けると骨の状態が見えたりするよ。」
「アニメはあくまで『比喩的』表現だから全然違うよ。因みに透明人間になると視神経をも光が通過してしまうはずだから視神経が光を感受出来ないはず。仮に出来たとしたら光が吸収された分だけ目の部分が暗くなるはずだから厳密な意味での透明人間ではなくなってしまう。だからリアルな話をすると透明人間は盲目状態になるはずだよ。」
「むーっ、いきなり夢のない話になってしまった・・。」
「で、色の話に戻るけど、人間の視神経が知覚できる色の波長には範囲があって、この範囲の波長を『可視光線』と言っているんだ。因みに動物によってこの『可視範囲』は変わるんだよ。また、光の明暗しか知覚しない動物もいるんだ。」
「あっ、それ知っているっ!猫って赤系の色は『赤』と見ていないんだよねっ!更に可視光線の範囲外の波長には『赤外線波長』と『紫外線波長』があるんだっ!」
「正解。そして可視光線より波長が長い方が赤外線で短い方が紫外線だ。因みにエネルギー的には波長が短い方が高いエネルギーを持っている。だから紫外線よりも更に波長の短い『X線』は人体の細胞を突き抜けて感光版に陰を映し出すのさ。」
「X線かぁ、それって確か『マリー・キュリー』って人が発見したんだよね?」
「むーっ、ちょっと違うな。X線を最初に発見して学会に発表したのは『ヴィルヘルム・レントゲン博士』だね。マリー・キュリーは放射能研究の先駆者ではあるが、彼女が発見したのは『ポロニウム』と『ラジウム』という2つの放射性元素だよ。更に彼女は女性初のノーベル賞受賞者であり、且つノーベル物理学賞とノーベル化学賞の2つの異なる分野で受賞した唯一の人物でもあるんだ。でもマリー・キュリーも第一次世界大戦中にレントゲン装置を積んだ自動車で医療活動をしたからX線とも関係はあるね。」
「おーっ、さすがはムーンだ。本当になんでも知っているんだねぇ。」
「ははは、まぁ、種明かしをすると全てはネット上の情報で受け売りさ。実際私は地球上の出来事を『見る』事は出来ても『音』は聞けないからね。」
「あー、宇宙空間って真空だから音は伝わらないんだよね。でも、ネットは真空中でも伝わる電波でもやり取りされているから僕らでも受信できるのか。」
「そうゆう事。だから最近100年で私が得た情報量は、ここを周回するようになってから『見ていた』情報量よりも多いくらいだよ。」
「ふ~ん、因みにムーンと地球は同じくらいの歳なの?」
「厳密には私の方がちょっと若いかな。と言うか、私の体は地球の成分とほぼ一緒なんだよ。だって私は昔、ちょっとヤンチャして地球から飛び出してここに移って来たからね。」
「え、マジ?ムーンと地球って仲が悪かったの?」
「いや、と言うか、私という『意識』はここに来てから芽生えたものだから。地球から分離して飛び出したのだって小惑星が地球に衝突して地球の表面を地殻部分ごと宇宙空間に巻き散らかしたせいだからね。その飛び出した欠片が再度集合して私になったのさ。」
「単に興味本位で歳を聞いただけなのに何故かムーンの出生の秘密話になってしまった・・。」
「ははは、更に私と地球は太陽さんと同年代だったりするんだ。とは言え、まずは太陽さんが別の恒星の超新星爆発により宇宙空間に散った星間ガスが再度集まった事で生まれて、その際の残りで地球や他の惑星が形成されたんだ。更に地球に小惑星が衝突した事で私が出来たから、順番としては太陽さんが長男で地球が次男、そして私は少し歳の離れた三男ってとこかな。」
「えっ、地球って太陽さんの残りカスで出来たの?」
「その言い方はどうかと思うけど、同時進行ではあったはずだ。これは他の惑星である火星や土星も同じだよ。ただ、その時周りにあった物質の違いで水星、金星、地球、火星は岩石惑星となり、木星、土星、天王星、海王星は巨大なガス惑星になったんだ。」
「ふ~ん、そうなんだ。確かに木星さんはでかいよね。」
「とは言っても、質量的には太陽さんが群を抜いている。この恒星系にある質量の99.8%が太陽さんだからね。」
「えっ、マジ?圧倒的じゃんっ!」
「そうさ、だから太陽系内の惑星の中では一番大きい木星ですら質量比では太陽さんの0.1%しかないんだよ。とは言え、木星さんがでかい事に変わりはないんだ。なんせ木星さんは単体で木星さんを除いた太陽系内全ての惑星を足した質量の2.5倍もあるからね。因みに地球との比較だと木星さんは地球の318倍の質量らしいよ。」
「ひゃ~、質量の偏りが凄すぎるね。人間にしてみれば地球だって途方もなく大きいのに、更にその318倍だなんて想像すら出来ないやっ!」
「まぁ、確かに質量や大きさの比較だと地球は見劣りするけど、それでも今のところこの太陽系で『生命』を宿しているのは地球だけだからね。もっともこれは多分に運が良かっただけとも言える。本来生命の誕生には水が不可欠と考えられているんだけど、水って液体の状態でいられるのは1気圧上では0度以上から100度未満の範囲だからさ。この温度を常に保てる場所にいたのが地球なんだよ。」
「ふ~んっ、金星じゃ太陽に近過ぎて、火星じゃ遠過ぎたのか。」
「いや、金星と火星もぎりぎりではあるが水を液体に保てる位置にいるんだ。因みにこの水を液体に保てる範囲の事を『ハビタブルゾーン』と言うんだけど、金星は厚い大気が仇となって熱暴走を起こしてしまい今では表面温度が約460度にも達している。なので生半可な生物では対応できないだろう。火星は逆に微妙に太陽から遠かったのと、質量が小さかった為に十分な大気を保持し続けられず、水は蒸発して宇宙空間へ漏れでてしまったと考えられている。なので火星にある水は液体では存在できずに『氷』として地中に僅かだけ残っているらしいんだ。」
「へぇ、やっぱりムーンは物知りだねぇ。伊達に長生きしていないな。」
「いや、これらの情報は全て人間たちからの受け売りだよ。確かに私は長い年月をここにいるけど、ここから見る金星や火星なんてぽつんとした光点でしかないもの。つまり私にとっては地球以外の惑星は君と一緒なのさ。」
「そうなの?でも僕と同じならばお話くらいは出来るんじゃないの?」
「相手にその気があればね。でもそれが中々難しいんだ。会話ひとつをとっても、相手と話を合わせるのは時に苦痛となる場合もあるしね。」
「成る程、全ての生き物が陽気なパリピーって訳ではないからね。」
「まぁ、ひとり静かに思案するってのも大切な事だけど、インプットがないと知識は偏るからね。もっとも自分が望む情報だけを吸収しているとやっぱり偏りが生じて集団生活に馴染めなくなったりするらしい。」
「むーっ、つまり加減の問題かぁ。でも僕はムーンと知り合いになれて凄く嬉しいよっ!」
「ははは、それはどうも。私も君と友だちになれて嬉しいよ。」
「わーっ、友だちかぁ~。うん、僕、友だちって言われたの初めてかも知れないっ!でも・・。」
お月様からお友だちだと言われて喜んだのもつかの間、何故かお星様は言葉を濁してしまいました。
その事が気になったのかお月様が声を掛けます。
「どうしたんだい?何か失礼な事を私は言ってしまったか?」
「ううん、ただ、友だちならば僕も名前で呼んで欲しいなぁと思っただけ・・。でもよくよく考えたら僕って自分の名前を知らなかったよ・・。」
「あはははは、なんだ、そんな事かっ!いや、私の『ムーン』という名前だって初めから付いていたものではないからね。人間が私を呼ぶ際の名称が『ムーン』だったってだけの事さ。因みに人間たちは地域毎に使う言語が違うので、実は私って色々な名前を持っていたりするんだよ。」
「あーっ、そう言われればそうだね。僕らは普通自分に名前なんか付けないものな。」
「そう、名前ってやつは全て人間が付けたんだ。だから太陽さんの名前も人間が付けたんだよ。」
「むーっ、太陽さんやムーンは目立つからなぁ。そうゆう意味では星って数が多いから人間もひとつひとつに名前を付けるのは大変かぁ。」
「いや、そうでもないよ。人間は結構な数の星に固有の名前を付けて呼んでいるんだ。そして当然その中には君の名前もあるのさ。」
「えっ、本当?うわーっ、人間って僕の事をなんて言ってるの?」
「おっ、食いついてきたね。でも折角だからまずは自分で考えてみたらいい。」
「えー、自分で考えるのぉ?むーっ、ならば『ぽっち』?」
「それは不吉な名前だから止めておいた方がいいんじゃないかな。」
「なら、『ダークオブマスター』とかはどうだろう?」
「何故に中ニ病全開の名前にする?」
「なら、『オオタニショウヘイ』は?」
「片仮名で書いても多分バレバレだから却下。」
「なら、『M-1GP』」
「確かに人間たちの間では『メシエカタログ』というフランスの天文学者シャルル・メシエが作った星雲・星団・銀河のカタログに頭文字を『M』から表記する分類があるけど、M1は既にかに星雲に付けられているから駄目だね。というか『M-1グランプリ』って漫才の大会名称だよっ!」
「おーっ、さすがはムーンっ!本当に何でも知ってるねぇ。」
「いや、そのネタはもういいから。さすがにもう『化物語』の名台詞を知っている子は少なくなっているからっ!」
「あー、ならもう『うっせぇわっ!』も時代遅れなのかな?」
「まだ、その話題続けるの?」
「ははは、単なる時間稼ぎです。でも自分で自分の名前を決めるのってなんか恥ずかしくもあるから決められないなぁ。」
「まぁ、そうかもね。では実例を出すけど、大体人間が星や星座に付ける名前って神話とかの登場人物から持ってくる事が多いんだ。特にギリシャ神話から取ったケースが多いね。ただ、今はそれらの神々のローマ読みの方が浸透しているらしい。」
「ギリシャ神話かぁ、となるとゼウスとかアポロンとかアテネとか?」
「うん、それら有名どころは惑星の名前として使われているね。因みに日本語では『五行思想』というものに基づいて水星から土星までは命名されているんだ。」
「土星までなの?」
「昔は望遠鏡がなかったからね。視認できる範囲では土星までしか見分けられなかったんだと思うよ。」
「ふ~ん、だとすると僕はどうなんだろう?結構目立つ方?」
「君は見かけの等級で言うと2等星だから目立つ方だね。因みに全天で一番目立つ星は『シリウス』で、見かけの等級はなんと-1.46なんだ。もっとも金星はもっとも明るい時は-4.3等級なんだけど、金星は惑星だから今話題としている太陽系外の『星』という定義としてはちょっと反則になる。更に太陽の見かけの等級は-27.64らしいよ。」
「いや、太陽さんは比べちゃ駄目でしょ。因みにムーンはどれくらいなの?」
「私は満月だと-12.7くらいかな。まっ、これはあくまで地球から距離が近いが故で、先にも言ったけど私自身は光を発していないけどね。」
「ふ~ん、で、さっきからよく出てくる『見かけの等級』ってなんなの?」
「それは地球上から観測した際の天体の明るさを表す尺度の事だよ。等級の差が1増減すると明るさは大体2.5倍明るくなったり暗くなるんだ。」
「何故に2.5倍?」
「それは最初に星の明るさを分類したギリシャの人々が星の明るさを6つに分けたからさ。そして後から実測値を計ってみると1等星は6等星の約100倍の明るさであることが判ったので、それを元に各等級の差比率を計算すると大体2.5倍になるんだ。まっ、完全に100になるわけではないけどね。」
「むーっ、つまり僕は第2グループって事なのか。でもそれならなんでシリウスはマイナス等級なの?」
「それは単に昔は明るさを目で見た感覚だけで決めていたからさ。それに太陽と惑星を除いた星の中ではマイナス等級を持つ星はシリウスとカノープス、それとアークトゥルスだけだからね。因みにケンタウルス座アルファ星も見かけ上はマイナスだけど、この星って連星だから合成された明るさなのでちょっと微妙。」
「ふ~ん、因みに僕は見かけの明るさランキングだとどれくらいなの?」
「えーと、君は52番目くらいかな。そして実際は君も連星なんだよ。」
「えっ、僕って双子の兄弟がいるの?」
「いや、三つ子だね。」
「へ?」
「つまり君は三重連星なんだ。」
「マジですか?そんな感覚全然ないんだけど?」
「だろうね、だって君はあくまで人間が目視で知覚した見かけの星の意識体だから、君本体の意識ではないんだよ。因みに君の本体は地球から432.36光年の彼方にあるんだ。」
「それって遠いの?」
「人間の感覚だと遥か彼方だけど、星の感覚で言えば3軒隣くらいかな。因みに太陽さんに一番近い恒星はケンタウルス座にあるプロキシマ・ケンタウリで距離は4.246光年だ。」
「おーっ、僕の1/100だよっ!お隣さんどころかべったりだよっ!」
「まっ、星の感覚ではね。」
そう、感覚とは相対的なものなので、ある人にとっては至極簡単な事でも別の人にとっては難解だったりするのです。
ただ、それを理解していても、何故か人は他人と自分を比べてしまうところがあります。でもまぁ、それもまた『人間らしさ』なのかも知れません。
「さて、それではそろそろ人間が君に付けた名前を発表しようかな。」
「あっ、嬉しいっ!人間は僕にも名前を付けてくれていたんだねっ!」
「そりゃそうさ、だって君は人間にとって、とても役に立つ星なんだもの。」
「役に立つ?僕が?」
「そうさ、君の正体は北の夜空にあるこぐま座の中で最も明るい恒星で、尚且つセファイド変光星でもあり、常に人々に真北を指し示す存在なんだ。そんな君に人間が付けた名前はっ!」
「名前はっ!」
「セイント・セイ、ヤァーっ!」
「・・、ダウト。多分セファイド変光星と、某聖闘士漫画の主人公名に引っ掛けたんだと思うんだけど全然面白くないよ・・。」
「うん、自分で言っておきながらなんだけど、キレがなかったね。では仕切り直しだ。常に人々に真北を指し示す存在。そんな君に人間が付けた名前はっ!」
「名前はっ!」
「我はノーチラス。現在位置北緯90度っ!」
「それは世界初である米軍の原子力潜水艦が北極点を通過した時に発信したメッセージだよっ!」
「あれ?まさか君が元ネタを知っているとは思わなかったよ。では次こそは本当だっ!常に人々に真北を指し示す存在。そんな君に人間が付けた名前はっ!」
「はいはい、名前は?」
「なんか聞く気がないみたいなんだけど?」
「さすがにつまんないボケを2回続けられるとね。オヤジギャクよりも寒かったし・・。」
「えー、そんな事ないだろう?でも寒いといえば北。そして北にある星で一番有名なのはっ!」
「北斗七星?」
「いや、今は君の名前のヒントを出しているんだからグループ名である北斗七星は有り得ないだろう?」
「あっ、じゃあ、もしかしてケンシロウ?おーっ、なんか『あたたたたっ!』とか言いたくなるねっ!」
「だよなっ!そして決め台詞として『お前はもう死んでいる』って言うんだっ!」
「げっ、まさか僕の名前って『ひでぶっ!』とかではないよね?」
「むーっ、『デネブ』という名前の星はあるけど『ひでぶっ!』ってのは聞いた事がないな。」
「いや、冗談だから。真に取らないでよ。で、結局僕の名前ってなんなの?」
「はははっ、ちょっ引っ張り過ぎたか?でもまぁ、北斗七星は近かったんだよ。だって君って北斗七星の近くで光っているからね。そう、君の名前は常に人々に真北を指し示す存在。それは『ポラリス』だっ!」
「??」
「あれ?もしかして聞いた事がないのか?ならば『北極星』は?」
「北極星は知っている。北の天中にあってずっと動かない星でしょ?」
「うん、厳密には地球の自転の軸とは視野角で1度ほどずれているから、ずっと見続けていると満月3個分くらいの円を描くんだけど、まぁ目視ではまず判らないから動かないと言っても嘘ではないかな。」
「あれ?そう言えばなんかさらりと言われたから実感がなかったけど、僕の名前って『ポラリス』なの?」
「そうさ、『君はポラリス』なんだ。まっ、これはあくまで人間が君に付けた名前だけどね。因みに君の本体はここから448光年の距離にあり、人間たちは観測データから君の質量は凡そ太陽さんの6.5倍、半径に至っては50倍と推測している。」
「えっ、僕ってそんなに大きいの?というかシリウスよりでかいじゃんっ!」
「まっ、本体はね。でも距離があるから地球からは高性能な望遠鏡を使ってもちょっと大きめの点にしか見えないよ。でも絶対等級という物差しで比べると『ポラリス』は1.97で『シリウス』1.42になるから、やっぱり君は大きくて明るい星だと言えるね。」
「絶対等級ってなに?」
「恒星が放つ光は距離によって減衰するんだ。だから遠くのでかい星よりも近くの小さい星の方が輝いて見える場合がある。そこで仮に天体の距離を地球から約32.6光年 (10パーセク)の距離に置いたと仮定し、その時の明るさを計算で出したものが絶対等級なのさ。つまり距離という条件を同じにしたガチンコ勝負用の等級だね。」
「あー、だから実際よりも距離が遠くなっちゃうシリウスは等級が下がっちゃうのか。」
「そうだね、そして恒星の中には絶対等級が-8.18なんてゆうバケモノみたいな恒星もあるんだよ。」
「-8.18・・、それでもムーンの見かけの等級である-12.7よりは暗いんだね。」
「まっ、私は地球から37万kmしか離れていないからね。それだけ明るさってのは距離で変わるって事なのさ。因みに太陽さんの絶対等級は4.83だよ。」
「おーっ、なんと僕って太陽さんに勝っちゃうのか。」
「ははは、理論上ならね。でもここは太陽さんの縄張りだから、ここでは太陽さんが絶対王者なのには変わりはないよ。」
「だよねぇ、そもそも太陽さんが空に出ている時は僕やシリウスだって太陽さんの輝きに圧倒されて地上からは見えないもんな。ムーンだってなんか白っぽくなるし。」
「そうだね、でも確かに昼間は見えないけど、君はそこで輝いているんだ。うん、見えなくてもあるんだよ。」
「あははは、それって詩人の金子みすゞさんの『星とたんぽぽ』の一節じゃんっ!」
「あれ?バレたか。あははははっ!でも夜になれば君は常に北の天中にあり人々を導いているんだ。つまり君は人々にとって道を指し示す道標なんだよ。まぁ、その事をどう受け取るかは人それぞれだけど、それでも多くの人たちは君がいつもそこで『きらきら』と輝いていてくれる事に安心しているはずだ。」
「そっかぁ、明るさや大きさだけでなく、何処にいるかも大切なんだね。」
「そうさ、どんなに凄い能力を持っていたとしても、それを使う場がなければ宝の持ち腐れだもの。でも、だからと言ってそこに居るだけでは駄目なんだ。君だって見かけの等級が2という結構明るい星だから人々の目にとまるけど、もしも君がもっと遠くにいて見かけの等級が7等級以下だったらどんなに視力がいい人間でもそこに君がいる事を見つけられないはずだからね。」
「そっかぁ、単にそこに居るだけじ駄目なんだね。声を出してここに居るよってアピールしなくちゃ伝わらないんだね。」
「そうゆう事さ。どれ、お喋りはこれくらいにしておこう。地球上ではそろそろ私は地平線の向こうに沈まなくちゃならない時間だ。」
「あれ?もうそんな時間?でも地球上では今まで昼だったところが夜になって、そこでは新たに東の空からムーンが昇ってくるように見えるんだよね。」
「そうさ、物事ってのは見る場所や方向から色んな風に変わるんだ。そして君は後1万年くらいはそこにいて人間たちの北の目印役を務める事になる。」
「え、1万年後には僕って消えちゃうの?」
「いや、そうじゃない。地球の自転軸は歳差運動によって長い時間のあいだに少しぶれるんだ。なので1万2千年後の地球ではこと座のベガが一番北の天中に近くなるんだよ。でも約2万6千年後には一周してまた君がその位置に戻ってくるように見えるんだ。」
「2万6千年って・・、いやはや星である僕でもちょっと気が遠くなりそうな時間だね。むーっ、その時まで人類は生き残っているかぁ。」
「どうだろう?まっ、一寸先は闇なんて言葉もあるから、2万年といわず来年辺りに君が爆発しないとも限らないしね。」
「いきなり不穏な事を言われてしまった・・。」
「もっともその爆発の光が地球に届くのは448年後だ。そうゆう意味では地球の人々は448年前の君を見ているとも言える。」
「ははは、なんかタイムマシーンみたいだっ!」
「そうだね、もしくは情報のタイムカプセルとも言えるかも知れない。実際、私だって地上からみる私の姿は1秒前の私だからね。」
「あっ、そうか。光の速さは秒速30万kmくらいだから地球から37万km離れているムーンの姿情報も地上に届くまでに1秒ちょっとかかるんだね。」
「そうゆう事。さて、少しお喋りに夢中になり過ぎたな。それでは私はゆくよ。とは言っても君の位置からは私は地球の周りをくるくると回っているようにしか見えないだろうからさよならは言わないけどね。」
「そうだね、でもやっぱり暗い夜空を背景にお喋りする方が僕は好きだからまた明日ねっ!」
「うん、また明日だ。そして明日は何故夜空の星たちは『きらきら』と瞬くのかについて話をしよう。」
「それって、本当ならば今回した方が良かったんじゃない?」
「ははは、まっ、『きらきら』にも色々あるのさ。それじゃまた明日。」
「うん、明日ねっ!」
こうしてお月様は地上にいる人間たちから見ると西の水平線、または山の稜線、もしくは地平線へ沈んでいったのでした。
そして北の天中に輝くポラリスも太陽の光が東の空を明るく染め上げ始めると共に徐々に空に溶け込み姿を隠したのでした。
でも、見えなくなったからと言ってお月様もお星様もいなくなった訳ではありません。そう、お月様は地球の陰に入っただけ見えなくなっただけですし、ポラリスであるお星様は例え見えなくても北の天中にいるのです。
そう、この世は見えるものだけが真実ではないのです。見えなくてもそこにいてくれる存在がいるのです。
そしてそれらは信じる人の目には見えるのです。なので人々は天空に輝く星々に三度祈りを捧げ眠りにつくのでしょう。
そんな人々を今日もお星様は空の上から見守ってくれているのでした。
Good night Sweet dreams!to『きらきら』
『おやすみなさい、今宵も『きらきら』な、よい夢がみれますように。』
-お後がよろしいようで。-




