第1章
初投稿です。お手柔らかに。
秋口、銀杏の葉が徐々に変色して来たころ、僕、神無柊はやりたい事を見つけると意気込んで入ったはずの大学で、自堕落に過ぎていく日々を憂いていた。いつも通りの道を歩き、いつも通りの大学で授業を受ける。半年という時間は、新鮮さが失われるには充分な時間だった。やりたいことないな、やりたい事を探さないとな、と思いつつ何も始めないまま時間は過ぎていく。そしてその考えに反するように、まあ大学生なんてこんなものだろうとも思っていた。大学生は本当に多種多様な人たちがいる。高校の時に潜めていた自分の個性をさあ存分に出してやろうと、服を変え、髪型を変え、性格さえ変えてしまう。僕はそういったものとは疎遠な生活を送っているので、もちろんそういった人たちと関わる事はほとんどない。そうして交友関係の狭い僕にとって、友達は貴重といえる。友人といえる友人は大学に1,2人しかいない。だからといってその友達と特別懇意な訳でもない。だから、突然友人の一人である望月に呼び出された時は一体何の用だろうと思った。
僕に連絡をしてくる人は少ない。スマホを開けば来ているのは、家族か、企業からの「お得情報」だとかの通知だけのことが多い。友達が少ないというのを気にしてないといえば嘘になるかも知れないけれど、特にこれといって困った事もないので変えようとも思わない。二限終わりのチャイムが鳴り、一気に教室は賑やかになる。すぐに混むから早めに学食に行こうと思った時にスマホが鳴る。通知を開くとメッセージが来ていた。
望月:お昼時間ある?
望月からだ。望月隼人。大学での数少ない友人の一人だ。彼は交友関係が広く誰とでも仲良くできるタイプで、同じ日本文学科だということもあって友達になった。前に会ったのは夏休み前だったかなとか、授業何取ったか聞いてないなとか思いながら返信する。
神無:あるよ
望月:ちょっと学食に来てくれないか?
神無:俺も行こうと思ってたからいいよ
望月:ありがとう
学食の前で待っていると名前を呼ばれる。
「神無!久しぶり」
顔を上げると望月がいた。同じ授業を受けていたらしい二人に小声でなにか言っている。その二人は僕を一瞥したあと去って行った。
「久しぶり。夏休み以来かな」
「そうだと思う」
いっしょに食券を買い、カウンターで受け取って席に着く。僕は一番安いカレー、望月は一番高いビーフシチュー定食にした。そんな高級品をよくそんな頻繁に食べれるものだ。僕はバイトはしているがいつも財布は寒い苦学生なので、いつも安いカレーを食べるが、望月は気にも留めないというようにいつも高めのメニューを頼む。「今日はお腹減ってるから」とカレーとラーメンとチャーハンをすべて頼んだ時はさすがに引いた。まあそんなの人の自由といわれれば最もだけれど。最初はただ単に昼飯を一緒に食べようということだと思っていたけれど、会ってみるとどうも違うらしい。ビーフシチューをほおばりながら望月は喋る。
「おふぇさーくらはいふんだけどさ」
なんて?全くわからない。予想より熱かったらしく口をはふはふさせながらも喋るのをあきらめようとしない。
「いっしょにはいらない?さーくるとかはいってないよな」
いいからまず飲み込んでから言えと言いたくなったが、とりあえずサークルの勧誘だということはわかったので、
「入らない。サークルとか大勢で活動するのは苦手なんだ」
そう言って、カレーを口に運ぶ。望月はなんとか飲み込んで
「えー」
と言う。その顔はさしてショックも受けていない。僕の答えを予想していたようだ。
「まあそう言うだろうと思ったよ」
そしてわざわざ言った。
「でもそれを分かったうえで頼みたいんだ。うちの大学は公認サークルとして認められるには10人は必要なんだけど、そのサークルの卒業生が引退してから6人になった。来年の3月の時点で10人以下だと非公認に格下げされるんだけど、先輩はそれをよく思っていないらしい。実際に来なくてもいいから、籍だけ置いてくれないか」
「籍を置くだけなら俺じゃなくてもいいだろ」
「それはそうなんだけど…」
何だか煮え切らない答えだ。望月なら少し頼めば数人くらいは集まるだろう。なにせ学科内ではなかなか人気者の地位を確立している。この望月というのはそこまでハンサムだとか顔が整っているというわけではないと思うが、清潔感という点ではずば抜けている。髪はしっかりとセットされ、白いシャツにジーパンという出で立ちで、悪い印象は見当たらない。話していて雄弁すぎる事も寡黙すぎる事もなく、いっしょにいて苦にならない。人望があるのもうなずける。望月が口を開く。
ふと小説を書いてみたいと思って、誰にも見られないのも寂しいので投稿してみました。結末はある程度作ったけど、うまく事が運ぶかはわかりません。




