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第四十七話 いよいよ地下三階へ

 のんびりと休日を過ごし、英気を養ったパーティ四人。レベルも四に上がり、地下二階も完全に地図を作成し、準備も万端。いよいよ地下三階へと向かいます。

「みなさん、昨日はありがとうございました。今日はダンジョン探索、頑張って下さいね」

 朝食時、ギルド長の娘アイナが、そう言って四人を激励してくれた。その弟のポルタも、ずるいとばかりに口を挟む。

「兄ちゃん、姉ちゃん達、頑張ってね。ぼく応援してる」

 相変わらず温かな家庭である。本当の妹、弟ができたような気分になる。

「おう。頑張ってくるな」

 ジョルダンの言葉に他の三人もうなずき、アイナとポルタに礼を言う。

 そして、今日も元気に出発するのだった。


 ギルドを出て、村を抜け、草原を通り、森へと入る。獣道のように細かった道も、四人が繰り返しダンジョンに通うことで、しっかりした道になっている。ボルクス村に来てほぼ一月半、ここを通うのも何度目だろう。

 そして切り立った崖に出る。ここにダンジョンの入り口がある。

「さあ、行こう」

 四人は気分を切り替え、ダンジョン探索を開始した。


 地下一階。いつもの場所でラージウルフを倒し、他は戦闘もなく、問題なく階段へ到着。

 地下一階。回転床や一方通行の罠をいつも通りに突破し、戦闘も特になく階段へ到着。

 地下二階。複雑な構造と扉の多い階層である。カーラが作成した地図に従って、最短距離を踏破する。途中、戦闘が二回。後の探索のことを考え、必要最小限の魔法で切り抜け、階段へと到着。

「いよいよだね」

 セインが珍しく緊張した声で言った。ここのダンジョンでは、下りるほどに敵が強くなる傾向がある。ここでも強敵との戦いがあるだろう。そして壁役として、仲間がケガしないよう、シールドで攻撃を受け続けることになるだろう。自分の働きで仲間の安全が決まる、そう思うとやはり緊張するのであった。

「大丈夫。俺達、強くなってるんだから」

「魔法の回数が残っているうちは大丈夫よ。私が何とかするから」

「最悪、あたしの潜伏魔法で撤退すればいいから。心配いらないよ」

 三人がセインをそれぞれ励ました。相変わらずいい仲間だと思う。セインは大きく息を一つ吐くと、自分に気合を入れるようにうなずいた。

「ありがとう。じゃあ、みんなよろしく頼むね」

 そして地下三階への階段を下りていく。

 前回下りた時と同様、階段を降りてすぐの場所には何もない。通路が一本伸びているだけだ。

 その通路をいつも通りの順で歩いて行く。分岐もない一本道で、しばらく進むと突き当りに扉があった。探知魔法を使うまでもなく、中から魔物の気配がしていた。それだけでも強敵だと分かる。

 息を一つ飲んで、扉を開き、四人は中へと突入した。

「何だ、あの大きさは……」

 そして、そのまま四人は絶句した。部屋がいくら広いとは言え、まさかこれほど大きな魔物がいるとは思ってもいなかったのだ。

「アースジャイアント……」

 こんな初級のダンジョンに出現するとは想像もできない、大型の魔物である。人型をしていて、全高は四メートル。黄土色の体をした巨人だ。

「どうする、戦うか?」

 さすがのジョルダンも二の足を踏んでいる。その巨体を見て、勝てるかどうか危ぶんでいた。

「軽く戦ってみよう。勝てないようなら、撤退すればいいから」

 カーラは前にロックゴーレム相手に撤退した経験から、まずは戦ってみて様子を見るべきだと考えていた。そうしなければ、いつまでも先に進めないからだ。

「そうね。弱点を探りながら、とりあえず戦うべきだと、私も思う」

 マリサもカーラと同意見のようだ。

「しかし、とりあえず戦ったとして、無事に済む相手なのか?」

 リーダーだからこそ、ジョルダンは慎重だった。この前、自分が負傷して仲間に負担を掛けたことを、まだ気に掛けていた。

 それと察して、セインが口を開いた。

「大丈夫。僕の回復魔法で、みんなを無事に地上に帰らせて見せる。二人が言う通り、まずは戦ってみよう。戦いながら勝つ方法を考えるんだ」

 仲間達にそう言われて、ジョルダンも腹を括った。

「分かった。なら戦おう。無茶だけはするなよ」

 そして戦闘が始まった。

「ホーリーシールド!」

 セインが魔法を発動させる。いつもの楯の魔法だ。さらに強化魔法を追加する。

「ストレングス!」

 何せこの巨体だ。強化しなければ攻撃を受けるのは難しいと、初めから考えていた。

 最初の一撃はアースジャイアントから飛んできた。実際に飛ぶわけではないが、高い位置からの拳の打ち下ろしは、受けるセインからすると飛んできたと言える感じだった。

 激しい衝撃がセインを襲う。これまでの魔物にはなかった強烈な攻撃だ。強化魔法を使ってなお、受け止めるのも厳しいくらいに威力がある。

「俺達も攻撃だ。俺は右から」

「分かった。あたしは左から行く」

 ジョルダンとカーラが、アースジャイアントの足元に攻撃していく。それほど硬くはなく、斬りつけた分だけ傷がつく感じだった。

 それを嫌がったジャイアントが手を振り回す。ジョルダンやカーラからすれば、手で追い払われる虫の気分だった。一撃でも当たれば大ケガ間違いなしである。止む無く攻撃を避けて距離を取る。

「ファイアボール!」

 そこへマリサの魔法が飛んだ。ジョルダンとカーラに気を取られ、正面ががら空きだったのである。拳大の火球がアースジャイアントの胸元に直撃する。高熱がその体表を焼いていくが、あまり効果のある感じはなかった。他の魔物なら、十分なダメージの出る高温の火球だが、この魔物は大きすぎて効果が薄いようだった。

 アースジャイアントの狙いがマリサに移った。拳を振り上げ、殴り掛かってくる。セインがそれをシールドで防ぎ、マリサの身を守る。やはり一撃は強烈で、受け止めるのもなかなかに大変だ。

「でも、これでいいと思う。ジョルダンとカーラが左右から足を攻撃、傷を増やす。隙を突いてマリサが魔法を撃つ。攻撃してきたら僕が防ぐ。その繰り返しで、とにかくアースジャイアントの足を斬り落とそう」

 珍しくセインが意見を発した。他の三人が一瞬目を丸くして、そしてうなずいた。即座に大きなダメージを与える方法がない以上、確かにその手で行くしかなさそうだ。だが、かなりの持久戦になる。

「大丈夫。僕は耐えられる。それより、ジョルダン、カーラ、攻撃が当たらないように気を付けて。攻撃より回避優先で」

「分かった。じゃあ続けよう」

 こうして長い戦いが始まった。

 セインが攻撃を受けた直後、その隙にジョルダンとカーラが斬り込む。ある程度ダメージを与えると、アースジャイアントが手を振り回して攻撃を振り払いに来る。当たるわけにはいかないので、ジョルダンとカーラが身をかわす。その隙を狙ってマリサが魔法を放ってダメージを与える。マリサも胴体を狙うより、まずは足を一本潰そうと、ジョルダンが攻撃している部位に魔法攻撃を集中していた。そして魔法を嫌ったアースジャイアントが、マリサに攻撃を加えようとしてくる。それをセインが防ぐ。ひたすらにその繰り返しである。

「何てタフな奴だ。まだ足が折れない」

「諦めないで。あたしの方も見込みは薄いけど、攻撃続けるから」

「私が魔法で傷を広げるから、ジョルダンはそこを狙って」

「ジョルダン、カーラ、結構効いてきてる。あと少しだ」

 互いに声を掛け合いながら、少しずつアースジャイアントの足の傷を広げていく。

 二十分ほどはそうやって戦っただろうか。途中、ジョルダンが振り払ってきたアースジャイアントの手をかわし切れず、軽いダメージを負ってしまった。即座にセインがヒールで回復し、戦闘は継続された。

 しかし、ダメージは累積していた。さすがに四人にも疲れが見え始めた頃、アースジャイアントの足があと少しで折れるところまで追い詰めたのである。ここを逃すわけにはいかない。

 何十発目かの攻撃をセインが受けた直後、ジョルダンが必殺剣を放った。

「闘気剣!」

 ジョルダンの剣が淡い光に包まれる。伝わった闘気が剣の威力を底上げする。渾身の力でその剣を振るい、アースジャイアントの足に斬りつける。二撃、三撃と攻撃が入り、ついにアースジャイアントの片足を斬り飛ばした。

 アースジャイアントがバランスを崩し、地に倒れる。

 後は頭や胴体にダメージを与えていくだけである。

「最初は私から。フレイムピラー!」

 まずはマリサが魔法を発動させた。炎の柱で敵を焼き尽くす、現時点では最大火力の魔法だ。それがアースジャイアントの全身を巻き込み、一気に焼いていく。

「ついでにアイシクルランス!」

 今度は氷の槍がアースジャイアントに襲い掛かる。急激な温度差で魔法の命中した首筋の辺りが脆くなっていた。

「よし、今だ!」

 ジョルダンとカーラが斬撃をその場所に集める。脆くなった首筋が一気に削られた。頭部が切り離されたが、それでもまだ両腕は動こうとしていた。二人は攻撃を胴体に切り替え、繰り返し斬撃を与えていく。

 そしてしばらくたつと、ようやくアースジャイアントの動きが止まった。

「やったか?」

「そうみたい。アースジャイアントが消えるわ」

 アースジャイアントが霧状になって消えていく。これだけの巨体でも魔物の最後は同じであった。やがて、大きな魔石一つを残し、消滅していった。

「やった、終わった。みんなは無事か。俺は一発喰らったけど、セインに回復してもらって、無事だ」

 いつものようにジョルダンが仲間の無事を確認する。

「私は無事だけど、魔法の残りがあと四回しかない。あんな頑丈な相手に魔法を節約なんて無理だったから、大盤振る舞いだったわね」

「あたしも平気。だけどすっごく疲れた」

「僕も。傷とかはないけど、体がガタガタ言ってる感じがするよ」

「分かった。激戦の後だし、まずは小休止だな」

 四人はどっかりと座り込むと、ふうと大きく息を吐いた。

「こんなに長い時間戦ったのって、初めてよね。私もこれほど魔法を連発したのは初めてだし、地下三階は侮れないわね」

 マリサが嘆息すると、カーラが首を傾げた。

「探知魔法使ってみたんだけど、どうやらこの先の部屋で行き止まりみたいなの。魔物の反応もなかったし、地下三階ってこれだけなのかな。それとも隠し扉かなんかがあるのかな」

「何だろう。気になるな。まあ、しっかり休んだら先に進もう。それより、セインは大丈夫か。あんなに攻撃受けて、どこか痛くしてないか」

 ジョルダンの言葉に、セインが苦笑を交えて返した。

「うーん、そう言われると、あまり無事じゃないかも。一応、自分に回復魔法かけとく。ヒール!」

 回復魔法が、体に受けた数々の衝撃によるダメージを消し去っていく。確かにあまり無事ではなかったようだった。

 全員が水筒を取り出し、水分を取った。疲れた体に水分が染みわたる。

 こうして無事にアースジャイアントを倒した四人は、時間を取って疲れを癒すのだった。

 またもや激闘編です。これまでも何度か強敵と戦ってきましたが、これほどの相手は初めてです。そして初の持久戦。連携の良さを発揮し、何とか突破することができました。

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