第91話 再びの強盗団
主人公達は、王都へと向かっています。
ですが、今は魔王の狂乱と言う時代。
治安は悪化しているので。
クラリッサの最低限のレベル上げをして、王都へと向かい始める。
そのクラリッサは、今現在俺にお姫様抱っこされていて「すみません」と謝ってくる。
「まだ2級職だからね。しょうがないよ。出来れば今日中に王都に着きたいと言うのは、俺達の事情だし」
そう言いつつ、クラリッサを抱き上げた状態で走り続けている。
街道ですれ違ったり追い抜いたりする人達の視線は、偽装スキルの隠形で回避した。
「急ぐ理由はあるんですか?」と、お姫様抱っこが恥ずかしいのか、クラリッサが少し照れた感じで聞いて来る。
「ああ。もし他の勇者候補に襲われたら撃退する力は欲しいでしょ。それに、仲間になる人に関するお告げの中には時間制限があるモノも多いから」
「そうなんですね」と言いつつも、クラリッサは自分にも関係があるのに良く分かっていない様だから、彼女についてのゲームでの設定を説明する。
「ああ。例えば、クラリッサなら、後4日遅れていれば、君を仲間にする事は出来なかったとかね」
「そうか。私が村の人の圧力に抗えなくなって強盗達の元に行った後では手遅れなんですね」
「そう。お告げだと、貢物として行った日に強盗達に切りつけて返り討ちになるって話だったから」
「……」
「違ったかな?」
「そうですね。やっぱり、私はマサヨシさん達に助けられているんですね」
「その辺は、お告げが全て教えてくれるわけじゃないから、何とも言えないけどね」
そんな会話もしつつ、王都へ急ぐ。
すると、また強盗イベントが始まってしまった。
勿論ゲームでもあったイベントだけど。
つまり、ニーチャ町からクラリッサを助ける為に西に向かっても、そうせず王都に向かう為に南に向かっても一度は強盗達と戦闘になり、その前に会話イベントがあると言う事なんだけど。
感知スキルによるマップ表示によると、赤黒、オレンジ、紫、黄色を纏った点が街道の近くに居る。
多分、護衛が居る商隊とかは、襲っていないのだろう。
だけど、俺達は4人でしかない冒険者か旅人のグループ。
しかも、力を偽装スキルで隠している上に、偽装スキルの隠形で姿・存在を隠したりしないで街道を移動しているから、多分襲って来るのだろうと思っていたら、やっぱり来やがった。
ここでは、マドリーンとアリーサとの強盗に関する会話イベントは終わっている場合、クラリッサとの会話イベントだった。
選択肢は、『クラリッサが強盗を倒すのを支援する』、『俺が問答無用で倒す』、『「強盗は俺が倒すから」と発言する』、の3つだったか。
ゲームでは、クラリッサの強盗に対する憎しみの気持ちに配慮して、クラリッサが強盗を倒すのを支援すると好感度が上がった。
でも、現実でそれを選ぶのが正しいのか。
クラリッサにあんな表情をして欲しくない。
俺の独善なのかもしれないけど。
好感度が上がらない選択肢である『俺が問答無用で倒す』事を選択し、視界の3Dマップに表示されている強盗達の表示が赤黒かオレンジになったタイミングで、俺が魔法で全て倒す。
正当防衛が成立するまで待ったために、強盗達の一部が街道の近くまで出て来ていたので、クラリッサにも見つかってしまう。
「あ。あの赤黒いオーラは強盗でしたよね」
そう言いつつ、お姫様抱っこ状態から、体をずらし地面に降りようとするクラリッサ。
「ああ」と言いつつ、走るのを止めてクラリッサの意思に従い彼女を地面に下ろす。
「どうして。私も戦えます」と、クラリッサは怒った感じで言ってくる。
「まだ、そんなに強くない。それに、もうクラリッサのあんな顔はみたくない」
そう言うと、悲しそうな表情で俺を見つけて来るクラリッサ。
俺は、それを抱きしめる。
ゲームで最善だった選択通りにするのが全てにおいて正しいのか。
俺には分からない。
だけど、俺なりにゲームでは無い異世界の現実で正しいと思う事を、愛する人達の為になると思う事を選択していくしかない。
俺は、優しくて真面目な彼女達が好きだったんだから。
それを失うかもしれない選択肢が正しいとは思えない。
ゲームだと、選んだ選択肢でクラリッサの性格が変わる訳じゃなかったけど、現実でも本当にそうなのだろうか。
それに確信が持てないのだから、これで良い筈。
『「強盗は俺が倒すから」と発言する』では好感度は下がったけど、『俺が問答無用で倒す』では好感度に影響は無かったし、と当てにならないかもしれないゲームの情報に縋るのも馬鹿みたいだけどさ。
そう迷いつつも、クラリッサを抱きしめたまま、強盗達の遺体をクラリッサに隠しながら処理をした。
主人公の選択は正しいのでしょうか。
微妙ですね。




