第80話 すべきでは無かった確認
主人公は、強盗団との内通者を拘束してもらった様です。
後は、強盗団を壊滅させるだけなのでしょうか。
村の集会場で、強盗団と内通している奴や内通していそうな奴を拘束してもらった。
これで、強盗団に奇襲がかけられる。
その強盗団への奇襲に同行したいと言って来たクラリッサに準備する時間を与え、ゲームでのイベント内容を思い出していると、直ぐに革鎧に着替えたクラリッサがやって来た。
背中に大きな剣を背負っている。
父親の形見の一つだったな。
そう思い出しつつ4人で西側の門から出て、街道を進む。
村から延びている2つの街道の一つで、来る時に通っていない方だから、当然街道を封鎖している強盗団のお出迎え。
「なんだ。エルフ以外に貢ぎ物が増えているじゃないか」と喜んでいるが、勘違いだけどね。
まあ、その勘違いのお陰で正面に16名全員が出てきたので、倒すのは楽だ。
でも、面倒なのは殺人を管理する世界の理か。
赤黒いオーラで包まれていないのが4人ほどいる。
そいつらに、明確な殺意を持ってもらわないと、正当防衛にならないんだよな。
でも、俺が変にあおって連中が殺意を持ったとして、それは正当防衛になるのか。
まあ、普通に赤黒い奴を倒していけば、逃げ出すか殺しに来るかするか。
そう思っていると、連中が接近してきたので、剣を抜き先頭を歩いていた赤黒いオーラの強盗の心臓を剣で貫く。
そして、奴らの方に蹴り飛ばすと、残りの4人もオレンジのオーラを纏った。
3人は風の護りで身を守ってもらっているし、偽装スキルのテストをしておきますか。
そう思いつつ、偽装スキルの隠形を起動。
と言うのも、一度認知されてしまった上で目の前で隠形を使ってもそれは無効になるのか、ならないのかと言う疑問があるからだ。
偽装スキルに聞いた処、隠す力と感知する力に圧倒的差があれば、ステータスに圧倒的差があれば、目の前から消え去る事も可能だそうだ。
なので、それが本当かどうか。
4級職で2級職と戦う時に、確実に隠れられるのかを試してみる事にした訳だ。
すると、俺が見えなくなって驚いている連中と、殺意を持って俺を見ている連中に分かれた。
なるほど。
斥候系の職業に就いていると、やっぱり感知力は高く、目の前で隠形と使っても無効となる事が多いと言う事か。
でも、これ以上の検証は後だ。
そう決めて、俺が見えていそうな連中と逃げ出しそうにしている奴を中心に高速火矢を撃ち込む。
すると狙った9人全員に命中。
高温の燃焼により嫌なにおいをさせながら頭部を破壊され倒れ込んだ。
それで、俺を見失っていた4人は、また俺を認識できたようだが、もう一度隠形と念じて姿を消す。
すると慌てふためいている。
そして逃げ出そうとした2人で高速火矢を撃ち込み倒し、残りの二人の手足に火矢を撃ち込む。
二人は倒れ込み痛みに耐えながら「殺してやる」とかまだ凄んで来ているが。
風の護りの中に居たマドリーンとアリーサの方へ歩み寄り、ミスリルの槌と鋼鉄の槌を手にして「どうする?」と聞くと、二人とも覚悟を決めた様だ。
まだ、「お前らの家族も探し出して絶対に殺してやる」とか言っている奴らに、二人とも槌を打ち下ろした。
ああ。
手加減できる状況じゃないし、ステータスがそれなりに高いのに全力で撃ち下ろしたから、頭が吹き飛んでいる。
その様を見つめている二人の前に立ち抱きしめて「ごめんね」と謝る。
彼奴らが命乞いをしてきたら俺が殺すと決めてはいた。
だけど、最後まで悪党だったから彼女達に任せたんだけど。
それでも、本当にごめんなさいだ。
マドリーンは顔をしかめていた程度だったが、アリーサの方は震えながら涙を流していた。
もっと人型の魔物を倒した後にすれば、多少は慣れていたかも。
いや。
魔法で倒す方がショックは少なかったのでは。
前世より残酷な世界に生きる人達だからタフに違いないなんて、俺の勝手な思い込みだ。
他の勇者候補の事を考えると急がなければならない。
でも、それで彼女達の心を壊してしまうのでは意味がない。
ゲームだと、『とどめをマドリーンとアリーサに任せますか。はい/いいえ』の選択肢を選ぶだけだった。
それで好感度が変化するだけだった。
だけど、現実では、彼女達の心を傷付けてしまった……。
しばらくすると、アリーサが「もう、大丈夫」と言って来た。
なので、抱きしめていたのを止めると、二人とも遺体のあった方を見ている。
まあ、既に俺が火の壁を使い、全て燃やし灰にしたけどね。
「すまない。待たせたね」と黙って立っていたクラリッサに言うと、彼女も複雑そうか。
「じゃあ、盗賊の根城へ行こう」
そう言って、先に進む事にした。
人を殺す。
この世界で生きて来た幼馴染二人にとって、それは痛みを伴う事の様です。
逆の視点で見ると、主人公はサイコパスなのでしょうか。それとも、愛する人たちを優先する性格なのでしょうか。




