第77話 強盗と世界の理
主人公は、強盗団との戦いになると二人に告げました。
そこで、『人を殺せるか、試す』とも。
マドリーンとアリーサに強盗団との戦いになるとのお告げ(ゲームでのイベント)を教え『強盗を殺せるか』と聞いたのだけど。
二人の表情は明らかに暗くなったので、やはり俺だけで対処すべきなのだろう。
でも、俺と一緒に居る以上、どこかで覚悟が必要になるかもしれない。
そう思いつつも、結論は先送りにして先に進む事にする。
昨晩泊まったニーチャ町から西へ40キロ程進んだ処にあるホルスト村。
そのホルスト村へ後数キロの所まで来た時に、感知スキルの探索で感知していた軍団が動き出す。
感知結果を表示している3Dマップには、赤黒、オレンジの点が混在して表示されているし、奴らがイベントの強盗団だろう。
となると、二人との会話をゲーム通りのタイミングにしようとするなら、ここで二人と話をするのが正解だったのか。
いや。
事情説明は早めにした方が良かっただろうし、あれが正解だっただろう。
ゲームでは、会話の一部を切り取っただけって感じだったから、会話のタイミングについてそこまで拘る必要があるのか、と言うのもあるしね。
そんな事を考えていると、俺達の前に8人、後方に6人が立ちはだかった。
「こりゃ~ラッキーだな。上物二人にヒョロヒョロが一人だ」
そうリーダーらしき奴が俺達を馬鹿にしてくる。
俺は、前と後ろの人を目視で全て確認しておく。
ああ。
集中して見ると感知スキルが表示する通り、9人が赤黒いオーラを纏っているし、それ以外の5人はオレンジ色のオーラを纏っている。
この世界では、人を殺すと殺人者と言う称号が付く。
赤黒いオーラは、殺人者と言う称号が付いている証拠だ。
殺人者の称号持ちを殺しても、俺達に殺人者と言う称号は付かない。
まあ、残念ながらと言うか幸いにと言うか、人を殺しても3日でその称号は消えてしまう。
2人殺すと6日と累計はするけどね。
この、その人を注視するだけで殺人者と分かる理なのは、ありがたいのかな。
時間経過で称号が消えるとは言え、人殺しだと世界の理が認定し教えてくれるのは治安の維持に役立っている筈だし。
両親から聞いた話だと、厄介なのは軍人とかだったか。
正当防衛となる場合でもない限り、戦争で敵である人を殺しても称号が付くから。
まあ、その場合には、殺人者の称号が消える日数を国や軍にキッチリ把握・管理されるらしいし、人によっては護衛兼監視者が付くらしいけど。
また、戦争において正当防衛で殺人者の称号が付かない様にと意識している間に攻撃を受けて殺されたとかあったらしく、世界の理による罪の認定にも面倒な側面があるらしい。
まあ、魔物や魔族と言う共通の敵が居るから、あまり人同士の戦争は無いらしいけどね。
ちなみに、オレンジ色のオーラは、こちらを本気で殺そうとしていると言う印だ。
なので、そのオーラを纏っている者を殺しても正当防衛と言う事で、殺人者と言う称号は付かない。
なお、オレンジ色のオーラは、ゲームだと明確な殺意を持ってからゲーム内時間3時間で消える設定で、この世界でも同じと聞いている。
と言う事で、赤黒いオーラを纏っている奴やオレンジ色のオーラを纏っているこいつらは殺しても俺には殺人者の称号は付かない。
更に言うと、赤黒いオーラが目立つが、それとは別にこちらを殺そうとしているとオレンジ色のオーラも少し表示される。
その上、犯罪者ならば紫色のオーラが少し、強盗と言った罪を犯す意思を明確に持っている場合は少し黄色のオーラも纏っている。
ちなみに、犯罪者や犯罪者予備軍は殺しても正当防衛になる訳では無い。
だから、今回は無視しても良いんだけどね。
そんな風に今の状況を確認し、マドリーンに「風の護りでアリーサと自分を守って」と言いつつ、二人から距離を取る。
「なんだ、魔法使いが居るのか」と強盗達のリーダーらしき奴が少し脅える。
しかし「違う、ハッタリだ。奴が斥候で他の二人は初心者だ」と多分斥候職の強盗が言って来る。
その斥候が、俺が苦笑いをしているのを見て気が付いた様だ。
「ま、まさか偽装か」
その言葉を合図に、腰から鋼鉄の剣を抜き、まずは後方の6人を。
盗賊連中は2級職の戦士が主力の様だが、4級職でそれなりにレベルを上げている俺の敵ではない。
まだ反対方向にも敵が居るので、急所の首をはねる等でさっさと終わらせ、風の護りで身を守っているマドリーン達と狼狽えてまだ行動を起こしていない強盗達の間に入る。
「ま。待て。俺達は村の自警団なんだ。強盗が出るって言うから、それを誰何していただけなんだ」と今更ウソで誤魔化そうとしてくる。
「なら、その赤黒いオーラとオレンジのオーラは何だ。その上、紫と黄色のオーラまで纏いやがって。
しかも、全員だ。自警団の訳が無いだろう」
俺がそう言うと、斥候だと思った奴が逃げ出す。
それに粘着火矢を3発ほど撃ち込む。
すると、一瞬では死ねず、火を纏い踊り狂っている。
残酷すぎるかな、と風の護りの向こうで観ている二人の事が気になるが、今は隙を見せずに全滅させよう。
そう決断し、逃げ出そうとする奴の前に『火の壁』を出して足止めしたり、回り込んで一刀両断にしたりして、全滅させた。
主人公は、人を殺す事にあまり罪悪感が無いようです。
守ろうと思っている人達に害を加えようとする相手だからでしょうか。