第65話 旅立ちの話し合い
主人公は、「結納の様なモノです」と言って、マドリーンとアリーサの親に何かを渡すようです。
俺がマドリーンとアリーサと関係を持ち、無垢なる者の称号が二人から消えている。
そう言うと落ち込む村長と、こちらを探っている感じの村長の奥さんと、複雑そうなアリーサの御両親。
なので、このタイミングかなと「と言う事で、これは結納の様なモノです」と言って、小さな木の箱をそれぞれの親に差し出した。
「どういう意味かね」と尋ねて来るのは落ち込んでいる村長ではなくアリーサの父親だ。
アリーサの父親は熊人族。
母親はアリーサと同じく兎人族だ。
この異世界だと、赤ちゃんは母親の種族で生まれて来るから。
ちなみに、獣人族は種族によって寿命は違うけど、主な獣人族の平均寿命が80~90歳。
人間が90~100歳。
ドワーフ族が200~250歳。
エルフ族が300~400歳。
エルダードワーフとか、ハイエルフとかだと、その数倍と言う設定だったか。
もっとも、この平均寿命ってゲーム設定からの情報だから、魔物に殺された人の寿命は入っていないんだよね。
だから、それを含めたこの異世界の実質の平均寿命だと、何歳になるのだろう。
そんな事も考えつつ話を続ける
「これは、俺が彼女達を食べさせて行けると言う証明ですね。
もっとも、魔石だけでは金額が少なすぎるので硬貨も入れてありますが」
そう言うと、二人の父親の方がふたを開けて確認している。
ゲームでは、そう言う描写はあっても具体的な説明は無かったけど、この世界では一夫多妻及び多夫一妻は当たり前に存在する。
それが可能な経済力があればだけど。
なので、マドリーンもアリーサも食べさせて行けるとの証明の為に結納の様なモノと称して、魔石なんかを提示する事にした。
まあ、それをどう受け取るかは、相手しだいなんだろうけど。
と言うか、ゲームでは2人連れだす裏技を使う場合、『10万GAZU以上とFランク以上の魔石を20以上渡す』『1万GAZU以上とGランク以上の魔石を10個渡す』『結納の様なモノを何も渡さない』の選択肢が取れた。
その中で『10万GAZU以上とFランク以上の魔石20個以上を渡す』と言う選択肢を取れば、スムーズにイベントが進み、旅立ちの了承がもらえる上に二人の好感度が上がると言う設定だったから、間違っていない筈。
「硬硬貨が1枚にミスリル貨が2枚。それに魔石が23個か。魔石は大きさが違うのが入っているからランクが違うものがまじっている様だけど。これは」
そう、アリーサのお父さんが言ってくる。
あっ。
硬貨を手に入れられた理由を考えていなかった。
アダマンタイト製の硬硬貨が10万GAZU,ミスリル貨が1万GAZUで、120万円相当になるから、弱く偽装している俺だと簡単に手に入る、と言うものではない。
しかも、始まりのダンジョンの宝箱から手に入れたとは言えないのに。
ゲームだと「そうか。分かった。なら娘の意思を尊重する」と言われるだけでそんな会話なかったのに、と思いつつ急ぎ硬貨を手に入れた方法をどう説明するか考えながら、魔石の方の説明をする。
「俺が最近倒した魔物の魔石です。
だからFランク20個にEランク3個が混じっています」
「ちょっとまて。今何職なんだ、お前は」と村長が落ち込み状態から復活して俺に聞いて来る。
さっき言ったはずだけど、と思いつつ「斥候ですけど」と言い放つと。
「せ、斥候にそんな戦闘力は無いだろう」と馬鹿な事を言って来る。
「それは村長が魔物狩りに行ったことが無いからそう思うんでしょうね」と反論する。
すると「な、なに」と怒った感じの村長に「斥候職の人に聞いてみればいいですよ。偽装と感知を使った奇襲で自分と同レベルの強さの魔物を確実に倒す方法とかね」
そう言うと「そうか、それをマサヨシ君は知っているのか」と、アリーサの父親の方は納得した感じ。
「そ、そうなのか」と、村長はアリーサの父親や村長の取り巻き反応が自分と違う事に混乱している。
「感知スキルで魔物を感知し、魔物の動きを予測して偽装スキルで隠れての奇襲とか、誘導しての奇襲とか。
まあ、時間はかかりますけどね。
斥候レベル1になり感知スキルを得た後の狩りの効率の違いとか、職業補正により俊敏・器用ステータスが上がる事の強さについて知っている人は知っているでしょう」
俺が父に教わっていた斥候職の戦い方や実感した斥候職の強さを言うと、村長の取り巻きとかは知っている感じだ。
周りの様子を見て自分の無知を悟ったようで、「マサヨシのレベルは幾らだ」と、鑑定スキル持ちの取り巻きに聞いている。
すると、取り巻きのバザルから探られたと感じた後、そのバザルが「斥候のレベル13です」と村長と言うか皆の前でハッキリと言う。
「そ。そんなレベルで」と、村長がまた驚いたので、言い訳を始める事にする。
「硬貨の方は、ゴブリンの集落の幾つかを全滅させた時に持っていた奴がいたからです」と、ゴブリンが行商人を襲い食料だけでなく、光っている通貨を持ち去る事を思い出したので、そう嘘を言っておく。
「凄いな。だけど」とアリーサの親父さんは俺を責める様な目で見て来る。
それが本来、相当危険な事だとも知っているのだろう。
ランク1の偽装や感知では、感知力の高いゴブリンアーチャーやゴブリンスカウトとかには能力で負けてしまう可能性があるし、ゴブリンアサシンとかに出会ったら確実に殺されるだろうし。
「ええ。何度も死ぬかと思いましたけど。でも、賭けに勝って斥候でレベル11を超えたあたりから、大分楽になりました。
なので、二人を連れて強くなる旅に出る事にしたんです。
ここでは、命を懸けても、短期間ではこの辺が限界そうですから」
そう言うと「娘を大切にしてもらえるのか」と、アリーサの父親は殺気を込めて聞いて来るので「はい」とハッキリと告げておく。
「そうか。分かった。なら娘の意思を尊重する」とアリーサの父親は納得してくれた感じなので「ありがとうございます」と頭を下げた。
しかし、村長の方は「駄目だ。だけど称号が。どうすれば」とまた混乱し始める。
偽装スキルで無垢なる者の称号について偽装すると、世界の理による犯罪者認定があるからな。
当然、相手に偽装がバレルと、大きな問題になるし。
この世界の創造者は、人に高い貞操観念を求めている。
そう思う部分もあるけど、でも一夫多妻とか多夫一妻は普通にあるからな。
嘘がダメって事なのか、関係を持つ異性に対し誠実さを求めているのか。
でも、普通に嘘をついたくらいで、世界の理による罪の認定なんて無いし。
そもそも偽装スキルの偽装の力は何故あるのかって話になる気もするが……。
世界の理を無視した暴挙。
と言うか、世界を造ったモノへ対する反抗になるとかだろうか。
そんな良く分からない世界の理について考えていると、混乱している村長を冷ややかに見ていたマドリーンの母が「マドリーン。良いの?」と言葉少なく聞いている。
それだけでは俺は何の意味か分からないが、流石母と娘なのだろう。
「うん。私達にも悪い部分はあったから」と意味深な事を言ってアリーサとアイコンタクトをしている。
設定にあった、先に声を掛けられた人が俺と、と言う話の事だろうか。
「なら良いわ」
マドリーンの母親はマドリーンに優しい表情でそう告げた後「ヨシマサ君。娘は守ってもらえるのよね」とゲームの流れに戻り真剣な感じで聞かれたので。
「それは、全力を尽くします」と、ハッキリと俺の意思を伝えておく。
「ならお願いね」とマドリーンの母親が言うと、村長が奥さんに「なんで認めるんだ」「お前だって、ニーチャ町の町長の息子との結婚なら、どれだけの恩恵があるか分かっているだろう」等と文句を言い始めた。
「もうどうしようもないわよ。マドリーンが決めてしまっている様だし」
マドリーンの母親は、わめいている村長にそうゲームの通り冷静に告げて、この集会を終わらせてくれた。
主人公は、何とか二人との関係を認めてもらった様です。




