第64話 村の食糧事情
主人公は、マドリーンとこの村を旅立つことに反対している村長に対し、旅立つ理由を説明しています。
その過程で、この先の村の食糧事情が危険だとも指摘する様です。
魔王の狂乱が始まった。
だから、村の防衛力は強化しなければならない。
と言う事で、農業に従事している人で若い者を自警団に入れると言う決断をした様だけど、村にはその人達を十分に強くするだけの環境が無い。
あれば、俺の両親は死んでいない筈。
だから、他の強化も必要だろうと、村の城壁の強化や、強い冒険者を雇うと言った村の戦力の強化は何時するのか、と村長に指摘した。
だけど「そ、それは。そんな予算が無いから、村の農家の一部に畑を止めて自警団に入れと言ったんだろうが」と、村長は言って来る。
「それで、この村の余裕のない人達は、飢えずに冬を乗り越えられるんですか」と指摘してみたのだけど……。
すると「な、何を」と絶句気味の村長は、俺の懸念について俺が指摘するまで気が付いていなかった様だ。
「農業をしている者を自警団に配置換え。
確かに、魔王の狂乱対策に見えますけど、やり過ぎの上に大した防衛力アップにならないでしょう。
それに俺の知っているこの村の状況だと、この春から冬までに生産する食料が減り過ぎて、食料が足りなくなりますけど、ちゃんと計算しているんでしょうね」
と、上がった知力で推測してみた結果を言う。
まあワザワザ計算しなくても、この村には空き地が多く食料生産力は多くないのは見れば分かる。
俺達もそうするつもりなんだけど、若くて能力のある者の多くが王都とかに行っちゃうから、年齢別の人口分布が歪なのもあるか。
だから、余剰食糧として都市等に売っている食料はそれ程量がある訳では無いと言う話を聞いたのは、花の種等を頼んだけど、なかなかこの村に来なかった行商人の事情説明の会話からだったか。
そんな状況だから、農業をする人を減らせば直ぐに食料が不足するかも、と村長の立場なら気が付くと思うんだけどな。
確か500人程度しか居ない村なのに、村の集会で自警団を100人増やすとか言っていたから、畑をしている人の数を2割以上減らす事になるはずだし。
まあ、最低限のレベル上げと訓練を終えさえすれば、亡くなった父の様に自警団と農業の兼業になる人が殆どだろうけど、それまでは生産量は落ちる。
魔物との戦いで死んだり、怪我で満足に農業が出来なくなる人が出たりすれば、農業と自警団の兼業が始まっても、生産量は下がったままと言う事だって想定できる。
戦ってレベルを上げた事によるステータスアップでの農作業の効率化で収穫量が増える、と言うのはあるだろうけど、この村近辺で出来る程度のレベル上げでは、劇的に収穫量を増やす程の効果はない。
と言うか、そこまでレベルが上げられていたら両親は死んでいない。
後は、強くなった者が、戦利品として肉を落とす魔物を狩り、レベル上げをしつつ食糧事情を改善させると言う方法もありそうだけど、この村の近辺は肉を落とす魔物が潤沢に居る訳では無い。
その上、それには怪我人や死人が出ると言うリスクがあるから思い通りに行くとは限らないし、簡単にそんな事が可能なら、自分達の生活をより良くする為に、既にそう言った事は行われているだろう。
でも、今の村の現状で100人新たに自警団に入れるのは、不可能か。
男女の区別なく子供まで動員しない限り。
村人を安心させる為に言っただけとかでなく、まさか未成年の子供まで……。
やはり、農業生産に多くの人を残すべきだと言うのは、言っておくべきか。
なら、村の守りをどうすべきかと言う話になるんだけど。
そんな計算・推測もしつつ村長にその認識を問う事を続ける。
「多分、魔王の狂乱によって起こる様々な事で食料が不足し値上がりしますが、不足する食料を買うあてはあるんですよね。
食料の生産量を落とさない様にする為に、農業を楽にする魔道具や、手伝ってくれる農業用ゴーレムとか確保してあるんでしょうね。
今更確保しに行っても、値上がりしていたり、頭のいい連中が買い占めたりしていると思いますけど」
自警団と農業を兼業でしていた為、そう言う魔道具とかゴーレムがあれば畑が広げられるのに、と愚痴っていた父を思い出しながら言うと愕然としたまま黙り込む村長。
種植え、苗植え、水やり、草刈り、刈り入れ、脱穀、耕す、畑を広げる等々を全て人の手でやっているのに、その人手を減らす事を何とも思っていないのか。
まあ、この世界での農業は、植物の病気や害虫と言ったモノは少なく、連作不良と言った話も聞かないから、前世の家庭菜園より楽だし、職業及びレベル制でステータスが上がり力仕事は前世よりは楽にできるけど、それでも手間と時間はかかるのに。
そう思いつつ、村長を見ていると自分の失策に気が付く程度の頭はあるようだ。
まあ、頭は悪い人では無かったか。
そう思いつつも「魔王の狂乱だからと王国からの税が上がる可能性もありますけど、村人を飢えさせずに対処できるんですよね」
そう更に思い付いた事を言うと、食料については一度思考停止になったようで、別の事を指摘してくる。
「だ。だが、マドリーンは駄目だ。嫁ぎ先が決まっている」
そう言う村長に対し「あれはお断りしたはずです」と、マドリーンは冷たく言い放ち俺の方を見て来る。
俺に言えって事だよな。
「マドリーンとアリーサの、無垢なる者の称号は、俺がもらいました。
強引に行かないと、俺について来てもらえそうになかったので」
そう言うと「娘を無理やり犯したとの言うのか」と当然村長は怒っている。
だけど、アリーサの両親は、落ち着いている。
ちゃんと、説明済みなのか。
「俺が犯罪者として紫色のオーラを纏っていない事から分かるでしょうけど、強引になのか、無理やりなのかは、本人に聞いてください」と俺が冷たく言い放つと。
「かなり強引でしたけど同意の上で、です」と、再びあの時を思い出して怒ったようなマドリーン。
「ヨシマサ君の思いを伝えられたので、私の意思で応じました」と小声でホホを染めながら、だけどハッキリと言ってくれるアリーサ。
そのアリーサの様子にホッコリしていると、横のマドリーンからの怒りの感情が増えたような。
その怒りの感情を浴びて冷静になったので、周りの様子を確認すると、がっくりと座り込む村長。
村長にとって、良い人との婚姻だったんだろうな。
マドリーンにとっては違ったようだけど。
村長の奥さんは、こちらを探っている感じ。
アリーサの御両親の方は複雑そうかな。
「と言う事で、これが結納の様なモノです」と小さな木の箱をそれぞれの親に差し出す事にした。
主人公は、マドリーンとアリーサと婚約した訳でもないのに、結納みたいなモノを渡すようです。




