第55話 地下4階の魔物
マドリーンとアリーサに、今後も相性の良い女性達を仲間にすると伝えました。
二人は、苦しい言い訳で誤魔化されてくれたようですが。
マドリーンに『俺達は相性が良い』と伝えると、『今後、他の女性にもそう言うんでしょ』と指摘されてしまった。
なので、今後の事を考えて『その通りなるよ』とも伝えると、説明を求められる。
『ゲームだと、異性の場合、一緒に寝る相手に選ぶとその人の好感度が上がったから』なんて言えないし、『ゲームでは女性ばかり仲間にしていたから仲間に出来る男性についての情報を殆ど持っていないので』とも言えない。
なので、『お告げだと異性の方が相性の問題が起き辛かった』『お告げには女性を仲間にするパターンしかない』って誤魔化しながら苦し言い訳をしたのだけど、何とか誤魔化せた感じだろうか。
そして、そんな会話をしていると始まりのダンジョン中級の地下4階に到着。
「この階層の敵は、俺の力との相性で楽勝の相手だけど、油断はしないで」
「そうなの? 何がいるのかな?」とマドリーンは少し脅え、でも興味があると言う感じで聞いて来る。
「ハイオークと、リザードマンだね」
そう言うと、眉間にしわを寄せるマドリーンと、驚いているアリーサ。
そして「ハイオークって、Dランクの魔物じゃないの」とマドリーンは俺に怒ってくる。
1級職の初心者がDランクの魔物と戦ったら、と言うか戦いにならずに瞬殺だろうからな。
更に言えば、女性がオークやゴブリンに捕まると大変な目にあうと言うのは、この世界でもある事だ。
だからか、この世界の女性達は、前世とは比べ物にならない程、自死する覚悟を持っていると感じた事があるんだよな。
実際に自死した人達についての話を聞いただけでなく、村の自警団に参加する事になった母が、自死用の小刀を見つめていたのを見てしまったとかあったから。
なので、『楽勝の相手』とは言ったけど、もっと勝てる相手だと細かく説明すべきだったかな。
そう反省しつつ説明を始める。
「ああ。だけど、このダンジョンだと見晴らしがよい場所に1~2匹しか居ないんだ。まあ、倒しても直ぐに湧くから、それは注意だけどね」
そう言うと、俺がハイオーク程度なら勝てると自信を持っているのが伝わったのか「……、そんなに強くなっていたんだ」と、脅えた感じから感慨深げな感じに変わるマドリーン。
もう関係を持ったと言うのに、俺を弟か何かと思っている感じだけど
「ああ。最短で1年で魔王や魔皇帝と戦わなければならないかもしれない、って思っていたからね。
実際は、勇者候補同士で殺し合うとか、もっと酷い状況らしいけど。
で、そこを曲がるとハイオークが居るから」
そう怖い事実を突きつけると。
「ちょ、ちょっと、こんな風に話していた大丈夫なの?」と、マドリーンの態度がまた心配そうに変わり、アリーサは脅えた感じなる。
「ああ。奴はまだ気が付いていないから」と、冷静な口調で『俺は落ち着いているよ』とアピールしながら今の状況を伝える。
すると「そ、それも分かるんだ」と呟くマドリーンと何も言わないアリーサも驚いた表情をしている。
その二人をより安心させる為にも、更に説明しておく。
「ああ。斥候系の力は、便利で怖いよ。ちなみに、ランク4.5の偽装スキルの隠形の力で二人もその存在をダンジョンの空気とかに紛れ込ませているから、今程度の声の大きさで喋っても声は向こうに認識されない様だね」
そう細かく説明しても「そ。そうなんだ」と言いつつ、納得できていない感じのマドリーン。
後で、俺かアリーサを偽装の隠形で隠すとかして見せた方が良いのかもな。
そんな事も考えながら「ただ、3階にいたゴブリンアサシンとかは、感知能力が高いから、普通の音量で話したりしたら見つかる可能性もあるかも。そう言う意味で、この地下4階は狩り易いから」と俺の実体験を伝える。
すると「う。うん分かった。信じる」と、何故か急に俺の発言を全肯定してくる。
まあ、現状だと俺の言う事を信じるしかないか。
でも、まだ脅え気味の二人をその場所にとどまらせ、二人を安心させる為に、角を曲がった先に居るハイオークを確実に倒す事にした。
主人公は、アッサリとハイオークを倒す事で、二人を安心させようと思っている様です。
先ずは、もっと弱い魔物が居る処でレベリングをすれば良かっただけなのですが、勇者候補が殺し合うと言う話を聞いて焦っているのでしょうか。




