第51話 勇者候補と王国
勇者候補は、異性とエッチし放題とまで言えるかどうか分かりませんが、それに近い部分はありそうです。
でも、単純に喜んで良いのでしょうか。
マドリーンが、勇者候補は異性と好きなだけ関係を持てるかも、って言って来る。
俺の事をからかっている感じで、だけどね。
でも、その話の中で気になる事があったので、それをまず確認しておく事にした。
「勇者候補の子供には、才能が有るんだ」
そう聞くと、マドリーンはからかっている感じから、少し真面目な感じになりその辺の事情を説明してくれる。
「うん。母や祖母から聞いた話だと、最低でもシングル。ダブルやトリプルも結構な確率で生まれて来るんだって。だから、国や市町村の存続の為に、勇者候補に異性をあてがうのが常識なんだって」
そんなのゲームには無かったよな。
ああ。
ご都合主義的な感じで異性の仲間が加入する事はあったから、裏設定と言う感じで影響が有った可能性ならあるのか。
しかし、才能ね。
そう言えば、ゲームだと人族の半分が才能無し、49%がシングル、1%がダブル、0.01%がトリプルって設定だったから、その辺が同じだとすると異次元の子供の優遇になるのか。
でも、国からの支援とか勇者候補の子供には才能があると言った事はゲームでは無かったけど。
まあ、エッチな事はキスまでしか表現していないゲームだったし。
まあ、それっぽい描写から暗転はあったけど。
……。
王女とか仲間に出来るんだけど、その時は、どちらかと言うと王国ともめる形や王国が混乱に陥る中で仲間にするパターンが多かったと思うけど。
なのに、そんなゲームに無かったルートに入ったら、どうなる事やら。
好きな人や好みの人と好きなだけエッチはしたいけど、子供をつくる為の種馬扱いなんて、俺は嫌かな。
でも、世界の為に、国の為に、市町村の為に、好きな様にしてくださいか……。
改めて考えると、心惹かれない訳では無いけど、迂闊にそんな事したらどうなってしまうのだろう。
俺が難しい顔をして悩んでいるのを不審に思ったのだろう。
マドリーンが「なんで、喜ばないの?」と何故かホッとした感じで聞いて来る。
「それって、異性を使って勇者候補を王国の思う様に動かそうとしているだけじゃないの?」
「さあ。その辺は分からないけど、そう言う立場になったけど、異性をモノのように扱わなかった勇者候補も居るらしいよ。
だから、他の支援の事もあるし、名乗り出て良いと思うけど」
俺の心情を探る感じで言って来るマドリーンにそう指摘されたが、よく考えてゲーム知識によらない反対意見を言う。
「でも、勇者候補同士が殺し合っているんでしょ。
迂闊に勇者候補である事を明かした為に、他の勇者候補がアリーサの御両親を人質にして『俺に殺されろ』って言って来たらどうする?」
「えっ」と、自分の親を例に出されて挙動不審になっているアリーサ。
その横で考え込んだマドリーンは「そうね。そう言う事態を考えると、出来るだけ秘密にしておいた方が良さそうなのか。他にもどんな問題が起こるかも分からないし」と同意してくれた。
俺が『よっしゃ~。一万人押し倒して、やったるで~』とか言ってたら、どんな態度になるのか見て見たかった気がするが、今は真面目にしておかないとね。
強引に関係を持ち村からの旅立ちを決断させたばかりだし。
しかし、別の本音を口にしてしまう。
「偽装スキル、ランク4.5にしておいてよかった」
そうしみじみ呟くと「どれだけ、周りを偽ろうって言うのよ」ってマドリーンは眉をひそめながら文句を言って来る。
偽装スキルは、ゲームと同じなら33人に1人は居る斥候系に才能を持つ人なら取得する一般的なスキル。
だけど、『殺人者』と言った称号を隠したりして、それがバレルとかなり不味い事になる・何かにつけて疑われる原因になるスキルだからな。
だけど、その有用性は間違いが無いので「ああ。その有難さを味わってもらうから、パーティに入ってね」と、悪びれずにお願いする。
偽装スキルのお陰で魔物を安全に大量に狩れる等、俺達には必要なスキルだと遠からずマドリーンにもアリーサにも理解してもらえるだろうから。
偽装スキルは、偽り、隠し、無い事にするスキル。
まあ、嘘つきなんて幾らでも居ますが、スキルによりそれが隠されるのは、見破れない人にとって怖い事ですよね。