第50話 勇者候補と異性
主人公は、色々と問題が起きそうではあるけど、二人を仲間にし旅立つ決断をしたようです。
勇者候補及びその仲間は、他の勇者候補及びその仲間と殺し合っている。
その事実を知って、マドリーンとアリーサを仲間とする事に躊躇してしまったが、後の祭りと言う感じだろうか。
そう思っていると「それで、どうするの?」と、マドリーンが急に現実に戻った感じで言って来る。
「ああ。二人には強くなってもらう」
「でも、私達は初心者だよ」と、マドリーンがアリーサの方も確認しながら言ってくる。
この村では、と言うか田舎の市町村では、才能があると分かると村を捨てて王都に行ってしまう若者が多いので、親や村の偉い人は子供達が魔物を倒しレベル10になる事を嫌っているから、若い人には初心者職が多い。
勿論、単純に危険だからと言う理由もあるんだけど。
だから、ゲームの通り二人とも初心者職なんだけど。
「俺とパーティを組めば、3級職には直ぐなれるから」
俺がそう言うと「そうなんだ。流石勇者候補ね」と、マドリーンが何故か嬉しそうに言ってくる。
「それだけど、隠した方が良いよね」と幾つかの点で不安を感じている俺が確認すると「どうして? 勇者候補だと国に名乗り出たら、資金とか武器とか支援してもらえるよ」とマドリーンが不思議そうに言って来る。
ゲームだと、そんな事は無かったんだけどな。
そう思いつつ「でも、それで王国に支配されたりとか、利用されたりとかあるでしょ」と、この世界で生きて来た知識や前世の異世界モノの知識からそれを心配して聞いたのだけど、他にも気になる点が出て来た。
この世界には、魅了や支配と言ったスキルや、精神魔法と言ったスキルがあり、それらを使われると魅了されたり支配されたりしてしまう筈だ。
ゲームでは、プレイヤーキャラにそんな事をするNPCは居なかったんだけど。
と言うか、魅了スキルなら異性の仲間の好感度が上がり易くなるが、しばらくパーティから外して放置すると好感度が爆下がりするスキル。
支配スキルは、持っているとエンディングで選択肢が増えて、その増えた選択肢である『王になる』を選ぶと、エンディングCGが王になったモノに変わるスキル。
精神魔法は、極一部のイベントの選択時に、より主人公に有利な選択肢が出るスキル。
それに対し、この異世界だと此の辺のスキルは持っていると討伐対象にされる事もあるスキルだから、例えその機会があっても取得したらダメと両親に教わっている。
リアルなのはヘッドセットから見える映像だけで『普段の生活とか戦闘とか全然リアルでは無かったゲーム』と『異世界の現実』の違いについて、色々と注意すべきとは気が付かされてきたけど。
でも、勇者候補同士が殺し合うと言う致命的な違い以外にも致命的に違う処があるんじゃないのか。
そんな事に改めて気が付いて深めの思考に陥っていたのだけど、マドリーンが勇者候補に支配や精神魔法を使った為に何が起ったのかを教えてくれる。
「過去に王族がスキルを使った支配なんかを勇者候補にした事があったそうよ。でも、魔王や魔皇帝を倒すほどの勇者の強さは別格でしょ。だから、強くなった時に支配から逃れられるんだって。
結果、無理やり支配し思い通りに使っていた勇者が支配から逃れ、その国の王族・貴族を皆殺しにしたそうよ。
だから、今は支援だけらしいよ」
「それはそうなるのか」
「でも、今でも勇者候補を歓待する為に、夜を共にできる異性も好きなだけ用意してくれるらしいよ。それも男娼・娼婦とかだけでなく、国によっては王族とか貴族とかも。
一般市民なら、好みの女性を好きなだけヨシマサちゃんの女に出来るかもよ。それこそ目に入った好みの女性をことごとく押し倒した勇者や勇者候補も、目についた男性を数千人侍らせた勇者や勇者候補も居たらしいし」
何故か、嬉しそうにそう言って来るマドリーン。
なので「何それ」と俺の方が引いてしまう。
「強者色を好むだったかな。勇者候補は仲間に異性を選ぶことが多いらしいし。
過去には、数万人の無垢なる者の称号を奪った勇者も居たけど、その人が人族の希望だからと許されたらしいから、今でも許されるかもよ。
それに相手側も、勇者候補だからしょうがないって思う人だけでなく、皆の希望である勇者候補と一度だけでも思いを遂げたいって人もいるし、子供に才能が欲しいって勇者候補を誘う人も多いそうだよ。
どうする?」
そう、俺をからかっている感じの悪い笑顔で言ってくるマドリーン。
その横で、アリーサは不安そうな顔をしている。
でも、まずは気になった事を聞く事にした。
勇者候補は、異性と多く関係を持てる可能性がありそうです。
でも、無理矢理は、やはり暴行・傷害という犯罪になるのですが、そうならない様に国民が教育されていると言う事なのでしょうか。
それとも世界の理が、そう誘導しているのでしょうか。