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第48話 勇者候補同士は

 主人公は、マドリーンに勇者候補なのかを聞かれ、嘘をつく事も出来ないと『多分勇者候補だ』と告げました。

 すると。

 「ヨシマサちゃん……。勇者候補は、勇者候補同士で殺し合う事になるのに……」


 そう絶望顔で絶句気味に呟くマドリーン。


 「えっ。どういう事?」と俺は驚くしかない。


 「あ。そうか、吟遊詩人の歌とか絵本とかでは、触れられない事だったね」


 そう言って俺とアリーサを見た後、意を決した感じで言って来る。


 「私が父と王都に行った時に、父へのツケで買い物をし過ぎたバツを受けたんだけど。それが王立図書館に籠って本を読む事だったの。

  その時に、過去の魔王の狂乱について書いてあった本を読んだのだけど」


 そう言った後、俺の方をチラッと見て、また話しにくそうに話を進める。


 「魔王の狂乱では、魔王同士が殺し合ったり協力したりして魔皇帝を作り出すんだけど、それだけじゃないの。

  人側も、勇者候補が殺し合ったり助け合ったりして、勇者を作り出すモノなんだって」


 ちょっと待て。


 そんな話、ゲームにも攻略情報にも、何にも出ていなかったけど。


 吟遊詩人が勇者について歌う歌だって……。


 『魔王の狂乱が始まり、世界は乱れる。

  人は滅びに瀕するが、そこに現れる希望の光。

  例えその身が亡ぶとしても、世界の為に戦う勇者。

  勇者の歩みを止めてはならない。

  勇者の望みは、世界の為に。

  希望の光が、世界を照らさんことを』

  

 と言った内容だった筈。


 どこにも、勇者候補で殺し合う事を示唆する文は無い。


 ゲームの攻略本にあった設定集にだって、そんな設定は載っていなかったのに。


 そう思いつつ「それ本当なの?」と思わず声を荒げながらマドリーンに確認すると。


 「父にも確認したけど、知っている人は知っている事らしいから」


 え~。


 なんで、そんな致命的な処がゲームと異世界の現実で違うんだよ。


 ああ。


 人同士で殺し合うとか、ゲーム倫理委員会とかでNGになるかもと採用されなかったのか。


 いや。


 プレイヤーキャラで殺し合うゲームだって幾らでも有ったから違うか。


 そもそも一人でやるゲームだったから、そう言う仕組みを採用しなかったのか。


 でも、殺し合うライバルがいる感じのゲームならあった。


 ……。


 俺が覚えていないだけで、『ゲームに似た異世界へ行きますか?』との選択があり、その時にOKをもらう為に伏せられていた情報とかなのか。


 ……。


 分からん。


 しかし、どうすれば。


 そんな風に混乱していると、目の前にいるマドリーンは不安そうに。


 アリーサは心配そうに俺を見つめている。


 いや。


 ちょっと待て。


 「ひょっとして、勇者候補だけじゃなく、勇者候補の仲間も殺し合ったりするの?」


 そう、マドリーンとアリーサの未来の事に気が付き聞くと。


 「うん……。

  勇者候補とその仲間が他のグループと助け合っても結局上手く行かなくて殺し合いになる事が多いんだって。最悪なのは仲間になっておいて、後ろから刺すとか普通にあるらしいし。

  それに、勇者候補同士の殺し合いだと相手を殺しても殺人者の称号は付かないんだけど、勇者候補が勇者候補の仲間を殺すと殺人者の称号が付くし、敵対した勇者候補の仲間達が殺し合って相手を殺すと、それも殺人者と言う称号が付くんだけど……。

  それでも過去の魔王の狂乱では勇者候補の仲間も殺し合っているって」


 この世界では、人を殺すと正当防衛と言った理由でもない限り「殺人者」と言う称号が付き、その人を注視すると赤黒いオーラが見えるようになる。


 その状態は1人殺すごとに3日続くんだけど、その間はその殺人者を殺しても殺人者の称号は付かないので、逆に敵や強奪目当ての連中から命を狙われたりする。


 当然、そう言う殺人者の状態だと、城門のチェックで弾かれ都市とか村にも入れないから普通の人は避けるんだけど。


 その殺人者の称号が付くと言うデメリットがあるけど、それでもマドリーンとアリーサが殺される事もあるって事か。


 「やっちまったか」と言いつつ二人を見ると。


 「私達の事を気にしているの?」と言うマドリーンと、意味が分かっていない感じのアリーサ。


 「いや。守るつもりだったのに、これじゃあ逆に危険な目にあわせるって事じゃん」


 そう言うと「そっか。そうだね」と何故か優しい表情で言って来るマドリーンと、何故かホホを少し赤くしているアリーサ。


 俺が愕然と立ち竦んでいるとマドリーンが「今更置いていくなんて言わないよね。無理やり傷物にしたのに」と怖い笑顔で聞いて来る。


 「いや。でも」


 「……、もう今更よ」と、マドリーンが『しょうがないな』と言った感じの微笑みをしながら言って来る。


 「……、一つ言っておくと、無理やりではなく強引だったけど合意の上という言い方をしないと、御両親から一緒に村を出るOKは出ないと思うから注意した方がいいと思うよ」と、お前が言うのかって言われそうな忠告をしておく。


 「そっか。そうだね。でも今日の事は一生忘れないから」とマドリーンは『許さないからね』と言った感じで言ってくる。


 だけど「俺も一生忘れる気はないけど」と顔をほころばせながら言うと、不満そうな顔をしている。


 何故か嬉しそうなアリーサが「ヨシマサ君に、言い負かされているね。今日は」とマドリーンに言うと、不満そうな顔が更に不満そうになった。

 主人公は、強引に行った事は罪にならなくて済みそうです。

 でも、守るつもりだった人達を、逆に危険な目にあわせてしまう。

 そんな選択をしてしまったようです。

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