第262話 説得の失敗
昨晩の宝玉の使い道。
今朝、これから行くダンジョンの説明。
それらの内容に、ラファエラが何故か納得していない感じです。
早めにラファエラの考えを確認したいところですが。
食事を終えて、王都から出て、また転移をしても感知され辛い場所に向かう。
今朝と言うか、昨日からのラファエラの言動が少し気になる。
と言うか、交流術スキルを起動して聞いてみた処、注意すべきだと教えてくる。
心配させているのだろう。
不安にさせているのだろう。
今日はクラリッサの日だから、明日はラファエラの日となりエッチ前にゆっくり話せるが。
それまでにも機会があれば話した方が良さそうだ。
そう思いつつ、ナラバラス王国の王都近くの隠されたダンジョンへ行く事にして、簡易転移で移動する。
簡易転移先から警戒しつつ皆で走って、隠されたダンジョン近くへ。
巨大な木の根元に触れると、触覚のある幻覚が解除されて中に入れる様に。
あ~。
ここは洞窟タイプ。
いや。
鉱山タイプのダンジョンか。
鉱石が取れると良いな。
そう思いつつ、地下一階相当に向かう。
感知スキルの探索を使用し、感知の為の魔力の網をダンジョンの奥へと伸ばす。
それで、ここの魔物の分布は分かった。
ゲームだと王都近くの隠されたダンジョンの魔物の分布もそんなに種類がある訳じゃない。
だから、既にクリアした事のあるパターンの可能性もあると思っていたら、案の定クリアした事のあるパターンだったけど。
これは、俺が生まれたルリード王国のパターンだな。
そう思いつつ皆に告げる。
「ここは、地下1階がEランクの中位ゴブリンとオーク。
地下2階がポイズンモスとビッグビー。
地下3階がファングアリゲーターとザハギン。
ボスがワーウルフだね」
そう言うと、頭の良いマドリーンが気付いたようだ。
「それって、ルリード王国の王都近くの隠されたダンジョンと同じパターンじゃないの」
「ああ。それと同じパターンだよ」
「なら、楽勝なのかな?」とマドリーンが言ってくるので説明する。
「俺がやったように、ポイズンモスの毒の鱗粉を浴びながらの戦闘とか、水を周りに満たしてからザハギンと戦うとかすれば、違うかもね」
「あったね。そんな事」と、思い出して少しムッとした感じになるマドリーン。
なので「あったよね」と、俺が軽く流す。
しかし、「何があったんですか」と、ラファエラが険しい表情で聞いて来る。
あの時は、仲間に居なかったからな。
そう思っていると「ヨシマサちゃんが、ポイズンモスと近接戦闘をして、毒まみれになりながら戦ったんだよね。それで怒ったら開き直られるし」と、マドリーンがラファエラの心情に配慮せずに文句を言ってしまった。
マドリーンは、未だあの時の事を怒っているのかよ。
そう思いつつ「ポイズンモスの弱めの毒で、毒の犯されると言う事がどういう事か、毒に犯されながら戦うのがどういう事かを、経験する為にね」とその時の事情を説明する。
すると、ラファエラが思いつめた感じになり「私もやります」と言って来たよ。
真面目と言うか、何かに追い詰められている感じと言うか。
「え~。ラファエラの可愛い顔とかスベスベの肌に、毒が付いてボロボロになるのは嫌だよ」
俺がそう言うと「でも……」と納得していない感じ。
「でも、ヨシマサちゃんはボロボロになりながら戦っていたし」と、マドリーンが余計な事を言うし。
「なら、私も経験します」と言うラファエラ。
クラリッサまで「私も経験します」とか言って来るし。
「今日の最低限の目的は、前衛の二人を新たに就けるようになった2級職と3級職から卒業させ、出来れば4級職を卒業させる事。
毒がどうこうというのは、俺がそうだったように状態異常耐性を取得して以降の話だからね」
そう俺が強めに言うと「私はランク1ですけど持っています」とラファエラが。
クラリッサも「私はランク3で持っていますから」と。
ああ。
迂闊な俺は、説得に失敗しちゃったよ。
昨日、皆が持っているスキルをチェックしたはずなのに。
交流術スキル、仕事しろよ。
まあ、俺が死んだあと、彼女達が生き残っていく為には、毒に犯されながら戦うのも必要な経験だとも思うけど、嫌なんだよな。
主人公は、自分の事は置いておいて、愛する人達が毒まみれになる事は嫌なようです。
どうするのでしょう。




