第210話 昨日の続きを
主人公達は、トラブルがあったモノの無事に王都に帰ってきたようです。
となると、昨日の続き、となるのでしょうか。
ちょっとヤバかったけど、なんとか無事に裁縫神の祠をクリアし、様々な職業を極めたり一人前になったりして今日の探索は終了。
転移で戻って来た王都近郊から、門をくぐり王都へ帰る。
宿を借りている食堂で食事をし、部屋に戻ると「ヨシマサちゃん、昨日の続き」とマドリーンに言われる。
これは、昨日の夜のお勤めの続きを、という事かもしれない。
という事で「マドリーンがこんなに積極的になってくれるなんて、嬉しいよ」と言って手を引いて寝室に行こうとしたら軽く頭を叩かれ「分ってて、やっているでしょ」と少し怒られる。
ま~ね。
お姫様抱っこで連れ込むと言った様に、もう少し強引に行けば行けたのだろうか。
『今日も大変だったし、良いでしょ?』とか言って甘えてみた方が良かったのだろうか。
そんな事も考えつつ、皆と居間の椅子に座り、昨日の話の続きをする事にする。
昨日の話とは、皆が神酒を神に奉納し3つ目の基本職の素質を得た場合どうなるかの話で、それに付随して『隠れ職業についても話して』となった件だ。
だけど、隠れ職業については時間不足で、ちょっとだけ話して寝たからね。
その隠れ職業だけど、販売後にネット配信で追加された職業があったり、攻略本の設定集にはあるけどゲームには追加されていない職業が有ったりと、どれをベースに話すのが間違いが無いか、断言できない部分もある。
だけど、まあ、ゲームに実際実装された隠れ職業について話せばいいのかな。
そう決断し、話を始める。
と、その前にと、メルを呼び出すと素早く捕まえたクラリッサに抱きかかえられてしまった。
しかも、クラリッサが自分の格納箱からメルの食事用の草とか出しているし。
いや。
まあ。
俺の従魔なんだけどね。
本来なら一個しか手に入らない従魔の卵は、自分で使わず仲間キャラに渡すと好感度が爆上がりしたから、そのうち皆に配る事も考えないと。
そう思いつつ話を始める。
「俺が知っているのは、聖者、極忍、英雄、韋駄天、修羅、言霊使いだね。このうち聖者と極忍については昨日軽く話したけど」
「でも、聖者について細かく聞いたのは、私とアリーサだけでしょ。もう一度ちゃんと説明して」とサブリーダーのマドリーンがキッチリ進行をしてくれる。
「そっか。そうだったね。
聖者は、信者系の最上級職になるのかな。転職条件は大神官でLV40になる事と、無償で7万人を魔法で治療する事。
昨日もマドリーンとアリーサには言ったけど、7万回ではなく7万人。同じ人は1人としかカウントされない」
「そうなんですか。それは難しそうですね」と、クラリッサが困り顔で言って来る。
「ああ。でも、大きな戦いとか戦争が有れば、そこで治療をする事で7万人の方をクリアできる人も居そうだと思うんだけど、聖者職も真偽不明って話だからな。
まあ、大神官職でLV40と言うのも、戦いに出ない人にとってはそれなりにハードルが高いだろうから、それが理由で就けない人も居るんだろうけど、一番の理由は無償でと言う条件だろうね」
「無償なの?」とマドリーンが『聞いてないよ!』って感じで確認してくる。
どうせ後でキッチリ話すからと、昨日は皆との話し合いの時もベッドでの語らいの時にも触れなかった事だからな。
でも、改めて聖者が何故真偽不明の隠れ職業になっているのか、早朝の移動中に考えたんだけど、その時に『あっ。これが原因で就ける人が居ないんだ』って思い出したと言うか気が付いたんだよね。
気が付いて改めて考えると、ゲームと異世界の現実の違いが大きい点なんだよな。
無償って。
と言うのも、ゲームだと有料でNPCを治療するなんて事は限られたイベントでしか無いから、イベント等で起こる大量の人と魔物の戦いとかで、魔法により治療しまくればそれで良かったんだけど。
異世界の現実だと、軍の軍医とか教会組織で魔法により治療を行っている人が聖者になれない理由は、多分これなんだよね。
だから、皆にはこれが一番の理由で聖者になれる人が殆どいないと説明する事にした訳だけど。
……。
そう言えば、ゲームだと隠れ職業について転職条件を得る事は未達成のクエスト扱いだった。
だから、ステータスウィンドウを表示した時に出るメニュー内にある『クエスト』を選択し、『未達成クエスト一覧』を選んで『聖者転職エスト』を選び当該クエストウィンドウを開けば『無償で治療した人数:2231人』と言ったカウント数が出てた。
だけど、異世界の現実だと、そもそもステータスウィンドウを表示すると出てくるメニュー内に『クエスト』と言う項目が無い。
つまり、未達成クエスト一覧なんて機能がステータスウィンドウに無い訳だから、隠れ職業を得る為の途中経過が分からないんだよね。
結構、やばいゲームと異世界の現実の違いかも。
だって、本当にこの異世界の現実に隠れ職業があるかどうか、現時点で分からないんだもんな。
その上、クエスト表示機能がないからと自分で7万人を魔法により治療したとカウントしたけど、世界の理によるカウントでは未だ6万人にしかなっていないとか、ありそうだし。
まあ、その辺は同じだと信じてやってみるしかないか。
少なくともマドリーンの話だと、ゲーム発売時にデフォルトで入っていた英雄職、修羅職、聖者職と言う隠れ職業は真偽不明とは言え、知られているんだから。
そんな風に考え込んでいると「どうしたの?」と聞いて来たマドリーンを含め全員が黙り込んでしまった俺を心配そうにしている。
「ああ。今更だけど、隠れ職業があるかどうか不安になったんだけど、まあ、やってみるしかないよね」
「う、うん」と返事をしてきたマドリーンを含め全員に俺の不安が伝播した感じだけど、話を先に進める事にする。
「それで、無償で治療と言うのが厄介と言う話に戻ると、教会組織に居て、寄付を貰い治療するだけでなく、その寄付から生活の糧を得ている人も無償とはならないみたいでね。それで、聖者になる人があんまり居ないんだと思うよ」
そうゲームの攻略本に書いてあった、『無償で治療』について伝える。
ゲームでの主人公キャラは、教会組織に所属してとか軍に所属してとかなく、冒険者以外になれなかったから『なんでこんな説明があるんだろう』と思った設定だったよな。
そう改めて思い出していると「ひょっとして、軍に所属していて給料をもらいながら治療をするのでも駄目なの?」と、マドリーンは直ぐに無償と言うのが多くの人にとって障害になる事を理解したようだ。
なので「俺のお告げではそうなっている」と肯定しておく。
「そっか。無償と言うのは難しい転職条件になるんですね。私達は、大神官でLV40になれるから」
クラリッサもメルに食事を与えつつ、今日レベル40になった事からそちらの方は大きな障害では無いと分かっている様で、聖者職に就ける様になる為に障害になる点を正確に理解したようだ。
「そうだね。信者系に才能が有れば就ける隠れ職業だから、無償で大量の人を治療できる状況や環境さえあれば、簡単に就ける様になる隠れ職業なのかな。
一度に多くの人を治療できる範囲傷治療魔法なんて魔法もあるしね」
「そうですよね。と言う事は、私達の目標になり易いのか」と、クラリッサは聖者職を自分が就く隠れ職業候補にした感じだ。
「うん。後、隠れ職業全般について、ここで説明しておくと、勇者や大賢者と同じ7級職に分類されているけど、大きく違う点がある。だから、6.5級職とも言われるんだけどね。
その前提となる話を先ずすると、勇者や大賢者は、レベル上限が無い又は70と言われている。その理由は知っている?」
「はい。レベル71以上になれる。でも、レベル70の半分超となるレベル36で他の職業に転職出来る、ですよね」と、ラファエラは元気よく返事をした後、自分が言っても良いのかなって感じで、周りを確認しながら発言してくる。
「そう。他にも1級から6級の職業だとレベル上限でスキルが手に入るんだけど、レベル70では手に入らず71でスキルを取得する。まあ、それは大きな違いではないけど。
で、その点については、隠れ職業も同じで、レベルに上限は無いしレベル36で転職可能になる点で勇者なんかと同じ」
そう言って皆を見ると、皆頷いているので話を続ける。
「でも、勇者や大賢者は、低レベルの時は一般的なスキルしか選択できないが、中レベルの時にはそれプラス特別な強いスキルまで選択できる様になり、高レベルになるとこの世に存在し人族が取得出来るあらゆるスキルから取得するスキルを選択できる様になる。
具体的に言えば、魅了とか支配とか魔眼とかでも取得する事が出来る様になる筈なんだよね」
そう言うと、俺が行ったスキル名が嫌悪の対象だったようで、みな顔をしかめている。
「これに対し、隠れ職業は、高レベルになっても全てのスキルを取得出来る事は無く、今までと同じようにレベル1の時にも提示されるスキルしか選択できない。
まあ、今までの職業と比べると、バカみたいな数のスキルや強力なスキルから、選択をする必要あるんだけどね。
例えば、聖者なら聖者と呼ばれる人に必要になりそうな、光魔法とか、看破とか、魔力譲渡とか、先読みとか、心眼と言ったスキルが選べる」
「……。聖者に、心眼とかが必要なの?」と、ピンと来なかった感じのマドリーンが聞いて来た。
主人公は昨日の続きという事で、隠れ職業について詳細に説明を始めたようです。
変更点:
投稿直前の推敲を終えても、システム障害で投稿できなかったので、改めて投稿しました。




