第191話 とりあえず、目指すのは
主人公達は、ヨルド王国の王都近くの隠されたダンジョンをクリアしました。
節足動物系の魔物に対する一部の仲間の忌避感を減らすために倒し続けた為に、レベル上げの効率は悪かったようです。
それでも、成長の加護の31倍の効果により、順調に強くなってくれている様です。
「は~、今日も大変だったね」と、夕食を終えて借りている部屋に戻って来た処で、マドリーンが愚痴を言う。
蜘蛛とかが相当嫌だったようだ。
まあ、俺達と同じ大きさか、更に大きい節足動物は俺も気持ち悪かったけどね。
「それで、話し合いだっけ?」
そう言いつつメルを呼び出し食事の草の束を目の前に置くと、ストレス解消のためかマドリーンが抱きかかえ、メルの食事を手にして椅子に座り直して、アリーサと一緒に食事を手ずから与えている。
メルは嫌がっていないし良いんだけど、と思っていると「4人とも、3つ目の才能・基本職を何にするのか悩んでいるんだから、もっと指導してよ」と、マドリーンからメルに食事を与えつつの催促が来る。
「まあ、本人が納得するのが一番だし、この大陸の始まりのダンジョン上級をすべてクリアすれば、4人なら基本4職全てに才能がある大賢者候補に出来るから、そこまで拘るのもなって思っていたんだけど」
「でも、それって絵に描いた餅でしょ」とマドリーンは冷静に指摘してくる。
まあ、その視線はメルに注がれているし、ホホは緩んでいるけどね。
「まあ、そうだね。4つ目の才能を得るには1人当たり4本も神酒が必要だから、絶対になれるとは言えないからね」と俺もマドリーンの意見に賛同する。
貴重な昇華の神酒が1人に4本も必要となると、始まりのダンジョン上級をクリアできるようにならないと駄目だし、その頃には他の勇者候補との殺し合いが始まり、思い通りに行かない可能性もあるし。
そう思っていると「それで、ヨシマサちゃんならどうするのよ」とのマドリーンの言葉に、思考を元に戻される。
「え~と、仲間になった順番にするか。まあ、マドリーンとアリーサは、現状魔法使い系と神官系の才能を持っていると言う点で同じだから、同じ説明になるんだけどさ」
「うん」と言って、マドリーンは食事に満足し始めたメルから俺に意識を向けてくる。
仲間のキャラに、どう基本4職の才能を得させるかは、ゲームの攻略難易度が変わる程の事。
だから、この辺は限られた神酒をどう使ってどう仲間キャラを強化するか、と色々と調べ考え試したゲームと同じ部分だから、それをキッチリ説明する事にする。
まあ、ゲームと同じ強化がベストかと言われると、自信は無いけどね。
それに、ゲームとは違ってロードして又は最初からやり直すなんて出来ないし、ゲームだと俺が選んだけど自分達で選んでもらわなければならないし、とキッチリ説明しておこう。
そう意識を改めつつ、皆に説明を始める事にする。
「まず、大前提として、7級職と言われる勇者と大賢者は4つの基礎職全てに才能がないと就く事は出来ない。それは知っているんだよね」
そう言うと、マドリーンは頷いている。
マドリーン以外の3人は、困惑しているから、その辺は知らないのか。
「勿論、それ以外にも神像の祠を巡り、転職条件を得て、それを極める必要も有ったりするんだけど、今回はその説明は省略するね」
そう言うと、4人とも省略する理由が分からない為か困惑している
なので「今回の話の本筋から離れるかもしれないし、俺が7級職に就く為に順次神像の祠を巡る時に説明するから」
そう言うと、皆納得した感じになったので話を進める。
「その前提で行くと、先ず7級職とか6.5級職と呼ばれる隠れ職業が、皆の目指す頂になる」
「……隠れ職業か。それって、うわさでは聞いた事があるけど、ヨシマサちゃんはお告げで知っているんだ」と、そろそろ満足気味のメルに食事を与えながらも話をキッチリ聞いているマドリーンが確認してくる。
「ああ。そのお告げが本当かどうかは、まあ置いておくと、聖者、英雄、極忍、韋駄天、修羅、言霊使いと言う職業を知っている?」
「ど、どれも真偽不明の職業と言うか、英雄と修羅と聖者しか知らないけど」と、マドリーンは隠れ職業について半信半疑と言う感じか。
「ああ。だけど、お告げには転職条件の情報があったから、俺達もなれるかもしれない」
そう言うと、全員が真剣な表情で黙って俺を見ている。
お告げは、情報が足りないと言ってあるけど、強くなる道筋は教わっているとも言ってあるから、情報が正しい可能性が高いと思ってくれているのかもしれない。
「それを含めての俺の意見だから、間違っている可能性もあると認識して、自分がどうしていくか考えてね」
そう言って気合を入れて、説明を始める事にした。
主人公の仲間達は、とりあえず隠れ職業に就く事を想定しつつ3つ目の基本職を決める、と言う方向に進むようです。




