第169話 欲を言えば
鍛冶神の祠から出る道筋で、嫌な連中にあってしまいました。
まじめな仲間たちは、色々と思うところがあるようです。
でも、現状だと手は出せないと、罠だけ壊して、王都に戻るようです。
無事に鍛冶神の祠を脱出し、今日は王都に借りている宿に戻ろうと、全員で街道を走り夕方までに何とか王都ロンバルトに着く事が出来た。
まだ俺達と同じ4級職でないのに付いて来られると言う事は、ラファエラのステータスは高いようだ。
と言うか、ゲームだと、だから多くの場合で仲間になってもらったんだけどね。
王都の門の使用料は、ラファエラの分だけ10日分の9500GAZUを払い、北門から都市に入る。
食堂でラファエラを新しい仲間と紹介して食事。
それを終えて、借りている建屋の部屋に戻り、風呂の準備をして入り、格納箱と亜空間収納内のモノのチェックをしていると良い時間になったかな。
居間に戻ると、所在なさげにしているラファエラ。
俺が傍に行くと「今日の夜の相手は、私になるだろうからって……」と言ってきたので。
「まだ無理だって言うなら、かわってもらえると思うけど」
「でも、勢いで行かないと、先延ばししても、余計に気持ちが難しくなるかもしれないって。
それに、あっという間に押し倒すような人だから、あまり焦らのも良くないかもって」
「……、一部問題発言もある気がするけど、ちゃんとフォローしてくれているんだ」
「フォローですか」
「俺と関係を持てば、同じ恋人兼内縁の妻。それで、身内になったって感じになるのかもね。だから、皆も『早くラファエラも』とか思っているのかも」
「……」
「さあ、行こう」と、座っているラファエラの手を引き、俺の寝室へ連れて行く。
ベッドに座らせ、その横に座り、腰に手を廻して体が触れ合う程の距離に移動し、ラファエラの目を見つめると、恥ずかしそうに眼をそらされてしまった。
やばい。
興奮して来た。
鼻息や呼吸が荒くならない様に気を付けながら、ラファエラを見つめていると「あ。ありがとうございました」とお礼を言って来る。
「ん。何が?」
「祖母を助けてもらったのに、ちゃんとお礼を言っていなかったかもしれないって」
「そう? その代わりに、ラファエラに来てもらったんだから、俺の方がお礼を言わないとね。ありがとう。ラファエラ」
「そ。そんな価値があるんでしょうか。私に」と自信無げに行ってくる。
「ん。ダブルって確認したでしょ」
「でも、今日の走って移動も、皆さんに付いて行くのがやっとで」
「いや。3級職なのに4級職の俺達について来ていたから、流石ステータスが高いって思っていたんだよ。俺は」
「本当に、そうなんでしょうか。
貴方の感知能力、マドリーンさんやアリーサさんの魔法、クラリッサさんの戦闘力とか見ていると、とてもそうは思えないんですけど」
「そう? 正直、何で自信が無いのか不思議だけどね。まあ、多分色々と誤解も理解不足も有るだろうし」
「誤解と理解不足?」
「まあ、その辺は身内になったら話す事にしているから、また後で、かな。正直、俺から見れば、そんな風に気にする必要はないから安心して」
「……」
「え~と、俺とのエッチが嫌なら先延ばしにするよ。どうしても無理なら、自分の道を進んでもらってもいい」
「えっ」と驚いているラファエラの表情は、捨てられた子犬の様に見える。
ああ。
多少は、仲間だと思ってくれているのか。
それとも、俺の彼女に好かれたいと言う希望が、そう見せているだけなのか。
それは分からないけど、ゲームの通りならば、彼女は俺に忠誠を誓った上で愛してくれるかけがえのない人だ。
まあ、こんな会話、ゲームでは無かったけどね。
情報を与えてくれないゲームに心の中で文句を言いながら「そりゃ~、『絶対に俺のモノだ~、誰にも渡さん』って言いたいけど、それも重いでしょ」と、本心の一部も言うと。
「……、おばあちゃんを救ってくれた、ご主人様に絶対の忠誠を」と、ラファエラは、急に真面目な表情になり俺に宣誓をしてくるが「愛情は?」と意地が悪いと思いつつ聞いてしまう。
「……。まだ、そこまでは」と、また恥ずかしそうにホホを染めた感じになり、目を伏せた。
「じゃあ。エッチは先延ばしにするか」
「いえ。でも、早く身内にはなりたいんです。それに、個人的にお礼もしたいですし、覚悟はしています。だから」
そう言って、ラファエラの方から不器用なキスをしてきた。
いいんだよね。
いっちゃって、いいんだよね。
心の声を外にはもらさず、彼女を優しくベッドに横たえ、キスから始める。
欲を言えば『愛しています』をもらってから、って思いもあるけど、今更か。
急いで関係を作らなければならない状況に、少し複雑な心境になりながら。
でも、ぜいたくな悩みだと結論づけて、今、彼女と深い関係になる事を選んだ。
主人公は、ラファエラとの関係を持ち、主人公の価値観での身内になったようです。




