第168話 不穏な連中
主人公たちは、鍛冶神の祠で、鍛冶神の神像に寄進と祈りを捧げ、採掘士への転職条件を得たようです。
無事に、強盗や異常に強い魔物とかに会わずに、神像の間で寄進と祈りを捧げ、採掘士への転職条件を得た。
それに『ほっ』と一安心。
その後は、まだ俺の力を隠しているラファエラが居るから、普通に歩いて祠の出口に向かう。
出口へ向かっていると、通らなければならない場所に6人のパーティが居る。
避けて通りたいところだけど、向こうが動かない。
大きく迂回すれば何とかなるけど、結局別のグループに会ったりしそうだし、この後の事を考えるとさっさと祠から出たいし。
でも、これは強盗の可能性が有るのかな。
そう思って4人にも警告し、生活魔法のライトを皆の後ろに発生させて闇魔法の存在を隠しながら両手を使える様にする。
そして、待ち構えている所を剣と盾を持ったまま通過しようとすると「本当に男1人に女4人のパーティなんだ」と言ったつぶやきが聞こえる。
あらためて確認すると、中年の男6人のグループだ。
感知した内容だと、重戦士2人に戦士3人に隠密1人か。
そう言えば、感知スキルでの感知が何回かあったなと思い出すが、感知スキルなんて33人に1人が付ける斥候職系なら持っている力だし、余程嫌な気配を纏った感知でない限り『気にし過ぎるのもな』と無視していたんだけど。
警戒しつつ通り過ぎ、目の前にあるゴブリンが造った落とし穴の罠に剣を打ち込んで破壊する。
「あっ。てめえ」って声と「おい」と言う声も聞こえてくるが、6人を睨んでも何もしかけて来なかった。
彼らから離れ入り口が近づいてきた時にマドリーンから「何だったのあれ?」との質問が来る。
「風の護りによる防音は、大丈夫?」
「うん、話しかけた時にしたよ」
流石、優秀なマドリーンだ。
そう思いつつ「そう。多分、冒険者兼採掘者兼強盗じゃないかな」と俺の推測を答える。
「やっぱり、そうなんだ」と嫌そうなマドリーン。
「ああ。感知で感じた気配は普通の冒険者ではなかったしね。俺達が同レベルか、上だと思ったから仕掛けて来なかったんだと思うよ。
まあ、罠に落ちたら襲うつもりもあったんだろうけど、それも俺が潰したし」
「あっちが下なんだ」と一応と言う感じでマドリーンは確認してくる。
「重戦士2人と戦士3人に隠密1人だったから、微妙なラインだよね。まあ、魔法を使いこなせば、ほぼ無傷で俺達が勝つと思うけど」
「そっか」との返事で納得した感じのマドリーンに代わり「その、捕まえたり倒したりしなくて良いのでしょうか?」と、ラファエラが控えめにだけど聞いて来る。
ゲームでも優しくて真面目な娘だったからな。
と言うか、強盗と言う発言にクラリッサの気配が剣呑なモノになっているのにも注意しないと。
そう思いつつ、事情を説明する。
「今は、殺人者の称号も無いし、俺達に殺意を抱き正当防衛の対象になる訳でも無かったからね。
ゴブリンの罠を壊した時でさえ。
なのに、『強盗するつもりだっただろう』ってあいつらを殺したら俺達が殺人者になるよ」
「それは。そうなんでしょうけど。でも、罠まで使うなんて。冒険者ギルドに報告をあげて、対処してもらうとか」とラファエラは真面目だな。
「濡れ衣だって言われたらどうする?
それにあの罠自体は、ゴブリンが造ったモノだろうしね。
でなければ、あいつらが俺達を含め通る人達に殺意を持ったという事でオレンジのオーラか、犯罪者予備軍の黄色のオーラに包まれていただろうし」
そう言うと、黙り込んでしまうラファエラ。
クラリッサも、『う~ん』って感じか。
マドリーンやアリーサすら、怒りの感情が漏れているけどさ。
「やるなら、弱く偽装して通り、襲い掛かって来たところを正当防衛で返り討ちにする方法だろうけど、それも騙し打ちだしね」
「……、はい」と返事をしてくれたラファエラ以外の3人も、しょうがないのかなって雰囲気になってくれた感じかな。
でも、クラリッサの両親の件もあるし、もう少しフォローするかと、良い訳を続ける。
「それに、そう言う手法を取るにしても、誰も傷つかなくて済むだけの強さを手に入れないと」と、もっと強くなってから、と先送りを提案する。
「はい」
ラファエラはそう返事はしているが、俺の力を知っている2人とは違うのか、それとも真面目なラファエラの価値観では、それでも許せないのか、あまり納得していないかも。
勿論、強盗達に両親を殺されたクラリッサも納得していない感じだけど、それはしょうがないか。
まあ、ラファエラともクラリッサとも少しずつ価値観を共有しつつ信頼関係を深めて行こう。
と言うか、彼女達に嫌われるくらいなら、強盗を罠にはめて殺すのなんて、何でもない気もするけどね。
例え殺意や殺人行為を世界の理が読み取り、それを色つきのオーラで人に知らせる理があったとしても、抜け道はあるようです。
ラファエラは真面目で正義感が強いようで、クラリッサは更にその上ご両親の事があるので、ゴブリンの罠を使った卑劣な行為を認めたくないようですが、今はしょうがないのでしょう。




