第159話 薬神の神像への寄進
仲間になってもらう予定のラファエラ。
まだ、初心者職ですが戦士と斥候の才能持ちと主人公は知っています。
そんな才能を持っていると知ったら、仲間になってもらえないかもしれない。
そう思ったようですが、ゲームの情報とラファエラを信じる事にしたのか、駄目なら諦めるだけだと開き直ったのか、他に理由があるのか。ラファエラにも初心者職でレベル上限になってもらう様です。
薬神の祠に連れて来ていた4人の内、初心者職でレベル上限になっていないのはラファエラだけ。
才能があるとバレルと仲間になってもらえないかも、と心配になったが、彼女を初心者職でレベル上限にしないのも不誠実だろう。
と言うか、イベントをクリアする為にゲームと同じ様に進めるのなら、どのみち彼女には薬師に転職しLV11以上になって貰わないと駄目なんだから、するだけ無駄な心配だな。
彼女は誠実で優しい人だったし、大丈夫だろう。
そう今頃気が付いて、ラファエラを俺のパーティに入れ、俺が魔物を倒しラファエラも初心者職でレベル上限になってもらう事にしよう。
そう決断し、パーティに参加してもらい、薬神の祠地下二階に入る。
地下二階は、やはり通路が10メートル以上ある、植物で作られた迷宮だ。
まずは、全力で感知スキルを使い、ここに強盗が居ないかを確認。
感知スキルによれば、十数組冒険者が居るようだけど、ボス部屋の付近にも、そこに向かう途中にも人は居ないし、殺人者と言った気配はないから、大丈夫そうかな。
そう感知した後、周りをしっかり確認する。
すると、地下一階だと通路の彼方此方に草とバラが生えていたのが、草とバラと木が生えている。
これはゲームの情景と同じなのか。
そう思いつつ、その中から魔物を見つけて、俺の槍で倒していくと、あっさりラファエラは初心者でレベル上限に。
「あっ。本当に才能が有りました。
戦士と斥候に転職出来るって。
ど。どうしましょう」
そうラファエラが、可愛いしぐさでオロオロしながら俺に聞いて来る。
「あ~。とりあえずは、薬師になった方が良いんじゃない。
おばあちゃんの状態を自分で確認できるし。
まあ、2級職の戦士と斥候なら、レベル11で一人前と言う事で転職出来る様になるから、転職してみても良いけどね。ボスを俺が倒せば、多分レベル11以上にはなれると思うし」
「そっか。そうなんですね……。じゃあ、お手間をお掛けしない様に転職しないでついていきます」
その返事を受けて、通り道の魔物を倒しながらボスが居る場所へ向かう。
木の魔物、キラープラントを倒すとキラーグラスやキラーローズとは違い、戦利品が魔石だけでなく、材木が残る。
家の柱にすると4本~8本分くらいになりそうな、巨大な材木を格納箱に入れていると「あんた凄いね~」と村長の奥さんのフレデリカさんが言って来る。
あ~。
材木の長さが、格納箱スキルをランク2である程度鍛えてあるか、ランク3くらいないと入らない長さだもんな。
前世と違い材木の長さが規格化されているかどうかは分からないけど、6メートル程度はあるから。
そう気が付きつつ「冒険者だった親の遺産なんで、俺が凄い訳じゃないんですよ」と嘘の言い訳をすると、事情を知らない4人は納得してくれたようだけど。
正直、そんな事が普通にあるのかと疑問に思ったけど、交流術スキルの効果かもしれないし、今は拘る様な事でもないと先を急いだ。
そして、辿り着いたボス部屋に居るボスは、ハイキラーローズ。
上位のバラの魔物だ。
Dランクで強そうなので、リスクはおかさず、力も明かさず、向こうの攻撃の届かない位置からマドリーンの風槍で倒してもらった。
「いや~。攻撃魔法って便利だね。私も欲しかったよ」
「ホントですね」
なんてフレデリカさんや雑貨屋の若奥さんのリーナさんの会話を聞きながらボスの間の奥にある薬神の神像へ。
皆、貨幣を神像の前に置いているんだけど、俺だけ貨幣を袋に入れて、神像の前においている。
それでも分かる様で「あんたら、お金持ちなんだね」と村長の奥さんのフレデリカさんが言ってくる。
俺は袋で隠したけど、1枚1万GAZUのミスリル貨を3人で6枚も神像の前に置いているし。
ちなみに、俺は575060GAZUを寄進する事になった。
575万円相当だ。
きついと思いつつ、本当の事情を話す。
「いえ。本当は、馬車とか馬車用ゴーレムとか買う為のお金を貯めていたんで、それを買ってから来たかったんですけどね。でも、急ぎの仕事になったから」
「あたしらも、そこまで急いでなかったんだけど。まあ、王都まで馬車を買いに行く事を考えると一日以上遅れるのか。申し訳なかったね」とフレデリカさんが言ってくる。
「所持金の10分の1以上ですから。まあ、何とかって感じですよ。
さあ。俺は皆が祈っている間は警戒しているので、先ずは皆さんで祈ってください」
「ああ」と言って祈りを捧げても天から降りてくる感じの神の光に包まれず転職条件を得られなかったのは、フレデリカさんだ。
その後、俺と一緒に祈りをささげたが、またも駄目。
計5回祈りをささげたと言うか、寄進のやり直しをして、全員が薬師の転職条件を得られた。
「これで転職していいんですよね」とラファエラが確認してくるので頷くと、4人とも薬師へと転職したようだ。
「あっ。スキルを取得しますか、だってさ。薬学と鑑定と状態異常耐性スキルから選択しろ、だけど、どうするべきなんだい」とフレデリカさんが聞いて来る。
「とりあえず、薬学スキルをランク2にすべきだろうから、薬学スキルで良いんじゃないですか?」
「なんで、ランク2にする必要があるんだい」と皆を代表してフレデリカさんが聞いて来る。
「薬学スキルでランク1になりたてだと、薬草の採取と保存の為の力と、傷治療薬の作成しか出来ないんですよ。
勿論、頑張ってランク内のグレードを上げて行けば、各種異常の治療薬やMPの回復を補助する魔回薬や、全ての傷や異常を治療しようとする万能薬も造れる様になります。
でも、ランク1だと限界まで鍛えないと病気・薬・薬草の限定鑑定すらできないんですよ」
「そうなのか」と、義理の妹が薬師だったと言うのに、フレデリカさんはあまり知らない感じだ。
「ええ。薬学スキルの限定鑑定はランク2又はランク1を限界まで鍛えたランク2相当から可能になるので」
「最低限、必要な力が手に入るのが、ランク2だと思った方が良いんだ」とフレデリカさんは念のためという感じで聞いてくる。
「ええ。なので、もう少し鍛えたい処ですよね。このまま地下3階へ行けば、レベル21以上に皆さんを出来るかもしれませんが、どうしましょうかね?」
「流石に、それは怖いけど。でも、レベル21になれば、薬学スキルをランク3にしたり、鑑定又は状態異常耐性スキルを取得出来るって事だよね」とフレデリカさんは難しい顔をしながら言ってくる。
「ええ。その辺は、村に帰り、村の人達とでも良いですけどね」
「ああ。でも頼めるかい。そんな余裕がないかもしれないし」とフレデリカさんはアッサリ決断した。
「良いですよ。
後は、薬学スキルが近くにある薬草類を教えてくれますけど、駆け寄ったりすると危険だから、安全を確認しながら各自確保しましょう」
「薬草の採取か。本当に薬師になれたんだ」とのフレデリカさんの感慨深げな返事を受け、神像の部屋から地下三階への階段へ向かった。
神像の祠で薬師への転職条件を得て、皆を薬師にする事に成功したようです。




