第154話 薬神の祠への移動
主人公は、ラファエラを仲間にする為のイベントを進めています。
現在は、ゲームでは居なかった村長達を含めての事情説明を終えた処です。
毒の鱗粉をまき散らす魔物が村の近くに大量に居る状況。
しかも、討伐しても世界の理でまた毒系の魔物が湧く事になるんだから、薬師は必須の村と言う事なのだろう。
なのに、それを守れなかったとはね。
しかも、新しく招く予算も無いとか。
そう言う状況じゃないと、ラファエラが仲間になってくれないのだとしたら、まあ、良いんだけどさ。
そう思いつつ「なら彼女からの依頼は、この村の人に薬学スキルを取得させるって事になるのかな」と言うと「えっ。そんな事をしてもらえるんですか」と、村長やその奥さんは驚いている。
「俺達も、薬学スキルを得る為に、北のヤーラム市へと向かっている途中なので、それに同行させる形ですね。
ただ、急いでいるので背負っていける3人まででしょうけど」
俺がそう言うと「3人なんですか?」と、さっきは4人と言っていたのに、という感じでラファエラが聞いて来る。
なので「ラファエラは、自分も薬師になりたいだろうし、俺達も仲間になってもらう為に仕事ぶりを見せておきたいから、4人目だよ」と俺の意図を説明すると嬉しそうに納得してくれた。
おばあちゃんの病気について、自分で簡易鑑定とか治療とかしたいだろうからな。
だって、プレイヤーキャラがこのイベントを起こしラファエラを薬神の祠に連れて行く等しないまま第2章をクリアしてしまうと、祖母の症状が悪くなり意を決したラファエラが一人で薬神の祠に向かうくらいだからな。
その後、祠で行方不明になると言う設定なんだけど、そうはさせない。
実は、ゲームだとラファエラともう一人だけ連れて行くのがクリア条件だったんだけど、ラファエラが安心して旅立てるように人数を増やしておこう。
そんな事を考えていると、改めて「よろしくお願いします」とラファエラが丁寧にお辞儀をしてくる。
その様子を横に、悩んでいる感じの村長と村長の奥さんに対し催促とお願いをする。
「残り三人を急いで決めてもらえますかね。出来れば、薬師になっても、この村から出て行かない人を」
そう言うと「急に、そんな事を言われても」と、村長は困惑している。
「店を持っているから、家族が居るから、この村を離れ辛い。基本4職に才能が無かったので、冒険者になろうとか騎士団とかに入ろうとしない人とかかな」
「そうか。そうですね」と村長は納得してくれたようなので。
「俺達は急いでいるので、可能なら早く3人決めてもらえませんか。
ああ。男性は俺一人だから彼女達に男性を背負ってもらうのも困るので女性3人以上で。
後は、ちゃんと冒険者ギルドへ魔物討伐の依頼を出し、毒持ちの魔物の数を減らしてもらった方が良いのかな。
魔王の狂乱で、どうなるか分からない部分もあるし」
「分かりました。とりあえず3人を」と言って村長は奥さんと慌てて出て行った。
二人の娘さんも一緒に出て行き「私が行く」とか言っているのが聞こえてきたが、多分若すぎて村から出て行きそうだと却下されるんだろうな。
ラファエラが母が亡くなった後、叔母や従弟と言った女性3人と共同生活をしていると言う小さな家で、お茶を飲みながら薬神の祠に行く人の選抜を待つ。
ゲームだとラファエラは一人暮らしだった筈なんだけど、現実だと若い女性の1人暮らしとか不用心だもんね。
そんな風に思っていると3人が連れて来られた。
1人は村長の奥さんのフレデリカさん、1人は雑貨屋の若奥さんのニーナさん、1人は宿屋のおばさんのシーリスさんだそうだ。
若い人に力を与えると直ぐに村を出て行くと言う事で、やっぱり村長の娘さんは居ないみたいだね。
出発前に、道中で倒した魔物に関する戦利品は全て俺達の物と言う確認をし、更に転職条件を得るには個人で持っているお金の10分の1以上をお布施する必要があるから、それ以上のお金を持っているかを確認。
冒険者ギルドの出張所はあるので、そこで正式な依頼にするかどうかも確認したが、話し合いの結果『必要ないだろう』となった。
信頼して貰えたと言う事なのかな。
まあ、冒険者ギルドを通した正式な依頼にすると、それなりの金額になりそうではあるか。
なのに、ラファエラが俺達の仲間にならなかったら1万GAZU。
なってくれれば、タダって契約だからな。
と言う事で、ラファエラを俺が背負い、皆も1人ずつ背負って村から出て北西へ走り出す。
「マドリーン。探索は俺がやるから、MPに余裕がある時は風操作で追い風を造って走るスピードを上げよう。
後、皆さんは、気持ち悪くなったら早めに言ってください。休憩しますから。
後は、走り方を工夫して、出来るだけ振動を減らしてあげれば、酔い難くなるとは思うから、余裕があるならそれも意識して走って」
そう言って走り始め、二つ目の村が分岐点だったので、それを北東へ。
更に街道を北又は北東へと進む。
途中何度も休憩を入れながら。
「いや~。この歳でこんな経験をする事になるとはね」
そう何度か目の休憩で愚痴っているのは言っているのは、宿屋のおばさんのシーリスさんだ。
「と言うか、本当に今日中に薬神の祠の都市に着くんだね」と、驚きを口にするのは村長の奥さんのフレデリカさん。
「冒険者が、凄いスピードで走っているのは見たことがあったけど、自分が経験するとはね」と言っているのは雑貨屋の若奥さんのニーナさん。
「皆さんも、依頼が上手く行って、薬師になったら3級職ですからね。
最低でもレベル11。可能ならレベル21にまでしますから、そうなると今の倍くらいのステータスになりますよ」
「そっか。それは楽しみだけど」と村長の奥さんは複雑そう。
「まあ、ステータスが上がると、魔物からの防衛戦に呼び出されるかもしれませんからね。
石を投げれば、Fランク位の魔物位なら倒せるようになりますから」
「それはありがたいんだけどね」と宿屋のおばさんも複雑そう。
「魔王の狂乱が始まりましたからね。
旦那さんや子供を背負って走って隣町へ、とかもあるかもしれませんから、悪い事だけでは無いと思いますけど」
「旦那は自分で走らすけど、確かに子供は守れるようになるか」と、雑貨屋の若奥さんは嬉しそうだ。
「まあ、戦闘系のスキルを持っていないとなると、ステータス頼りで逃げる位しか出来ませんが」
「それでも、子供を抱えて凄いスピードで走れるようになるんだから、ありがたいけど……」と、宿屋のおばさんは、薬師になる事かステータスが高くなる事による面倒について、まだ不安があるようだけど。
「まあ、何とも言えませんけどね。
時間をかけて魔法薬師にまでなれば、またステータスも稼ぎも全然違ってくるとは思うんですけど」
そう明るい可能性の方についても言ってみたんだけど「魔法薬師か。夢としてはあったけど」と、複雑そうな雑貨屋の若奥さん。
「薬師でレベル30になる必要がありますからね。
村で計画的に予算をつけて鍛えないと難しいでしょうけど」
そう俺が言うと「そうだね。うちの旦那がもっと甲斐性があれば」と村長の奥さんは夫の村長に怒りをにじませているが。
「まあ、非難するのは簡単なんですが、実際に村長になると色々あるんでしょうけど」
「あんた。若いのに苦労人の様だね。こりゃ~、支える人も大変だ」
そう言って、村長の奥さんが俺の背中を叩きながら3人を見ているので、俺も表情を確認すると3人とお苦笑いしているし。
そっか。大変なんだ。
まあ、勇者候補の仲間兼恋人だしな。
主人公の、仲間兼恋人たちは大変な様です。




