第144話 王都近くの隠されたダンジョン地下一階
深夜から朝にかけては、1人でこの大陸にある始まりのダンジョン巡りをする。
しかし、昼間は皆とダンジョン巡りをするようです。
自分だけを鍛えるのなら、この大陸の全ての始まりのダンジョンへと行ってみるのが良いのだろう。
しかし、今朝行った処では勇者候補が死んでいた。
それを心配そうに待っていた幼馴染2人の事が頭に残る。
俺だけ強くなるのではなく、皆と一緒に強くなる方も頑張らないと。
そう思ったので、ルリード王国の西隣のリエル王国の王都近くの隠されたダンジョンへとやって来た。
その理由は、皆を鍛えると言うだけでなく、ここには飛翔スキルの宝玉が固定で宝箱から手に入ると言うのもある。
そちらの方の理由を皆に告げて、ダンジョンの中へ。
地下一階に到着した。
「ここでも、俺が主体で色々と戦いの検証をしながら宝箱を回収し、ボスまで行こう」
「了解」との返事をしてくれたマドリーン以外の皆も頷いているのを確認し、向かったのはビッグバットの群れ。
蝙蝠の魔物達は、迷宮タイプの天井に18匹ほどぶら下がっている。
隠れていない状態なので、空から襲い掛かってくるのを火矢で狙うが、半分程度のビッグバットに避けられる。
器用に飛ぶもんだ、と思いつつ高速火矢を撃ち込むと、全弾命中。
戦利品の魔石に代わった。
う~ん。
微妙なラインだなと思っていると、アリーサも似たような疑問を持ったようで「最初の火矢と2回目の火矢で何が違うの?」と聞いて来る。
「え~と、魔力操作スキルを得ると、魔法の強化について細かく設定できるんだ。例えば高速化とか命中率向上とか」
「うん。以前聞いた事がある」と、アリーサは魔法関係の事だからか、何故か嬉しそうに言ってくる。
「避けれた火矢が何の強化もしていないノーマルの火矢で、当たった方が高速火矢。スピードの上がった火矢に対処しきれず攻撃を受けたって感じなんだろうね」
「確かに速かったけど。そう言えば、消費MPは幾つなの?」と相変わらずアリーサは嬉しそうに聞いて来る。
「ああ。上位の魔法の火槍より消費MPが多くなるのでは意味がないと言うか効率が悪そうだから、消費MP4で設定してあるよ」
「凄~い」と羨ましそうにしているアリーサの声を聞きながら次へと向かう。
次は、高速石矢を撃ち込んでみるが、これは避けられたので、次は高速火矢で全て戦利品に。
次は、高速氷矢を撃ち込んでみると、これも避けられ、高速火矢で殲滅。
次は、高速風矢を撃ち込むと、綺麗に全滅。
次は、風矢を撃ち込むと、これも奇麗に全滅。
相性があるんだな。
そう思いつつ、次は火槍で攻撃すると命中したりしなかったりで、命中しなかった奴を高速火矢で倒す。
次は、1匹だけ残して高速火矢で倒し、剣で飛び掛かって来たビッグバッドを倒す。
その次は2匹だけ残して、その次は3匹だけ残して、その次は4匹だけ残して、と接近戦を試してから、女性陣にも戦闘を試してもらう事に。
「私達で大丈夫かな」とアリーサは不安そう。
「ああ。そう言えば、俺の高速火矢が命中したのは、火魔法のランクが5だからというのもあるかもしれない。
だけど、アリーサは職業補正で知力が高いから、魔法の威力は高い筈。
まあ、微妙だけど火矢が外れる事も想定しておいた方が良いかも」
「と言うか、ヨシマサ君の火矢でも外れていたでしょ」と、アリーサは不安そうに言ってくる。
「その辺は半分は倒せたし微妙だった感じだよ。後は、魔力操作スキルが無くても出来る魔力を多めに込める魔法の強化で当たるかどうかだね」
「大丈夫……かな」とアリーサは不安そうなままだ。
「ああ。一発目が外れたら、俺が倒す事にするか。クラリッサ用に一匹残すから大剣で倒せるか試してみて」
「うん」
「はい」
「過保護よね」と苦笑いしているマドリーン。
「蘇生の手段が手に入るまではね」
「もう」と言いつつ、マドリーンも納得している感じかな。
試してみた結果は、マドリーンの風矢や風槍は、強化しなくても命中し、防御力の弱いビッグバットを一撃で倒した。
しかし、水矢と水槍は、水矢はギリギリまで強化して、水槍はそれなりに強化して確実に命中する様になったそうだ。
アリーサの方は、石矢と石槍は、ギリギリまで強化しても命中しなかったそうだ。
機敏に空を飛ぶ敵と土魔法の相性は悪いのだろう。
ホーンチキン(角で武装した鶏の魔物)の時は石矢で何とかなったんだけど、あれは動きが直線的だったからか。
それに対し、アリーサの火矢のノーマルは殆ど命中しなかったけど、ギリギリまで強化すると、全弾命中する様に。
また、マドリーンとアリーサが撃ちもらしたビッグバットの内、1匹を残してクラリッサに対応させると、ステータスの違いもありアッサリとクラリッサは切り落としている。
まあ、空を機敏に飛び回る魔物に対してクラリッサの持つスキルでは有効な攻撃手段がないから心配ではあるんだけどね。
うん。
火魔法をランク1で持っているけど、ランク3くらいにしないとな。
そう思いつつ、ビッグバットでの検証はこの程度で良いかな、と皆に言ってそれ以降は俺の強化風矢で撃ち落とす。
次は、蜂の魔物であるビッグビーで同じように試してみたのだけど、ほぼ同じ結果だった。
前世の知識からすると、飛び方が違うし、超音波で状況を把握するビッグバットと、複眼で状況を把握するビッグビーに違いがあるのでは、と思っていたんだけどね。
検証と訓練を終えて、宝箱を回収して地下二階へと向かった。
主人公達は、魔物との戦いを経験しながら、順調に隠されたダンジョンを攻略している様です。




