第143話 心に棘
主人公は、死んだ勇者候補の事を、待っている人達に知らせた方が良いかどうかを3人に聞きました。
俺が行った4つ目の始まりのダンジョンでは、その近くの村で生まれていた勇者候補が死んでいた。
多分、それは間違いないと思う。
気になったのは、その勇者候補を心配しながら、畑に水をあげていた女性二人の存在だ。
なので「皆に聞きたいんだけど、勇者候補を待っている人に死んだって伝えた方が良いかな?」と、聞くことにした。
すると「えっ。どうやって?」とマドリーンは困惑した感じ。
「死んだ勇者候補は王都に武器防具を手に入れに行ったんだけど、俺も一緒に乗っていた馬車が盗賊に襲われて、勇者候補は重傷を負って死んでしまった。
その勇者候補に、この村の名前と遺品を渡して欲しい人の名前を託されたので来た、と言ってミスリルの剣と盾と魔獣の皮鎧を渡してもいいかなって。
どう思う?」
「そ、それは何とも言えないですね」とクラリッサは俯きながら暗い表情で言って来る。
「うん。その人の性格や状況によって違って来るだろうし」と、マドリーンは困り顔で。
「私は知りたいけど、でも」とアリーサは悲しそうな表情で俯きながら言って来る。
三人が黙り込んだので俺が困っていると「ヨシマサちゃんは、知らせてあげたいんだ」と、マドリーンが俺の意思を確認してくる。
なので「うん。でも勇者候補の容姿どころか名前も性別も知らないし、不自然になるだろうから、やっぱり無理かなとは思っている。でも、3人が『絶対に知りたい筈』と言うのなら、方法を考えようかなって」と、聞いてみたのだけど。
「人によって違うだろうから、難しいよ」と、マドリーンに悲しそうに言われてしまった。
自分の身に置き換えているのだろうか。
だから、彼女達にどうすれば良いか聞きたかったんだけど、俺の死を想像させてしまうだろうから聞くべきではないとも思ったんだが。
もう後の祭りなので「そうだね。不自然なのを何とか出来るスキルが手に入ったら考えるか」と先送りにした。
勇者候補の畑で不安そうに水やりをしていた幼馴染たちは、ゲーム内で一緒に魔皇帝を倒した事もある人達だから、待っているのなら知らせてあげたいけど、どうしても不自然だしな。
この世界では、魔物に殺される等で、人が居なくなるのはよくある事だ。
彼女達も、何時までも待ってはいないだろうし。
そう彼女達に知らせるのを諦める事にした。
本当に、それで良いのかと、心に棘が残った感じだけど。
「それで今日は、どうするの?」と、マドリーンが気持ちを切り替えた感じで言って来る。
「それで、次に得る素質は決めた?」
そう言って3人を見ると、3人とも首を横に振っている。
「そっか。まあ、その準備も兼ねて西隣のリエル王国の王都のオーガストで神殿巡りをして、それが終わったら、王都近くの未発見の隠されたダンジョンへ行くか」
「この前いったこの王都の神殿に神酒を捧げるのでは拙いんだ」とマドリーンが確認してくる。
「夜中に何度も、人の気配が発生したり消えたりしたら、多分不味いでしょ」
「そっか。そうだね」とのマドリーンの返事を聞きながら、みな準備を始めた。
皆で、王都の門から外に出て、しばらく走って誰も居ない場所から範囲転移で移動する事にする。
目的地は、ルリード王国の西隣のリエル王国。
その王都に一番近い座標刻印は、リエル王国の始まりの村に行く途中に通ったオルト町にした座標刻印だ。
簡易転移の『場所指定』は、数に上限がありオルト町の近くにはしていなかったので、転移魔法での範囲転移。
やっぱり、転移魔法のランクも上げておいて正解だ。
そう思いつつ、オルト町の近郊から西に向かい、町を一つ越えると、次がエイリム市。
近くに魔物使い神の祠があるので、ここの近くには簡易転移の『場所指定』と転移魔法の『座標刻印』をしておく。
更にそこから西へ進むと、リエル王国の王都オーガストへと到着。
門の使用料1日を4人分4000GAZU支払い、都市へと入り、なるべく寂れていそうな戦いの神、魔法の神、治療の神、全知の神の教会を感知スキルの探索で探し出し、『子供に才能』をとお布施をしてお祈りをしながら、神像の間に『場所指定』と『座標刻印』をして、王都から出る。
寂れているのを選んだのは、神から基本職の素質をもらった時に隠形が解かれるので、それで騒ぎにならない方が良いから、警護の人達に斥候系が居なさそうな教会が良いだろうと思ったから。
そして、王都から出て走り、十数キロ離れた未発見のダンジョンへ。
途中で偽装の隠形を使ったし、感知スキルで慎重に気配を探ったが、誰にも追尾されていない感じ。
なので、未発見のダンジョンに皆で入る。
ここは、Cランクで迷宮タイプのダンジョン。
地下3階までか。
地下一階への階段を下りていると「このダンジョンを攻略する事にした意味は有るの?」とマドリーンが聞いて来る。
「ああ。ここには絶対に欲しい飛翔スキルの宝玉が眠っている筈なんだ」
「えっ。そうなんだ」と、少し驚くマドリーン。
「飛翔って凄いですね」
「ああ。クラリッサも空を飛んでみたい派なの?」
「そうですね。可能なら」
「そっか。まあ、錬金術でスキル追加の宝玉が造れる様になったら、かな。
でも、ランク1程度では、自由に空を飛ぶって感じでもないらしいけどね」
「そうなんですか?」
「ああ。走る方がスピード速いし、思ったように動き回れないし、MPは馬鹿食いするし」
そうゲームを思い出しながら言うと「そうですか。そうですよね。空を飛ぶんですから」と、クラリッサは少し難しそうな表情になった。
夢を壊しちゃったかな。
そう思ったので「まあ、MP不足にならない様に他の力を鍛え、飛翔スキルがランク3くらいになれば、結構自由に飛べるようだけど」とゲームを思い出しながらファローをする。
するとクラリッサは「先は長そうですね」と苦笑しながら返事をしてくれた。
よし。
クラリッサは空を飛びたがっている事は覚えておこう。
主人公は、飛翔スキルの宝玉を手に入れる為に、王都近くの隠されたダンジョンを攻略する様です。
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