第134話 3つ目の始まりのダンジョン
主人公は、異世界の現実ではゲームとは異なり生まれた国以外の始まりのダンジョンにも入れ、その中の宝箱の中身も回収できる。
そう気が付いたので、他の国の始まりのダンジョンに行く事にしました。
そこには転生者である勇者候補がいるかもしれない。
しかし、勇者候補同士で殺し合わなくても強くなれる方法が見つかったかもしれない。
なので、それが可能かどうか、幾つかの始まりの村とダンジョンへと確認に行くようです。
この大陸にある全ての始まりの村(ゲームだとスタート地点として選ぶ村)及び始まりのダンジョンへ行って確認した方が良いかもしれない。
殺し合わなければならないかもしれない、他の勇者候補に注意しながら。
だけど、この大陸はそれなりに広い。
なので、とりあえず出来るだけ高速で移動できる走り方を検証して、移動を続けることにする。
そんな事をしていると、俺にとって始まりの村であるイーリス村の隣町であるヨルム町が見えて来た。
あの町から南に降りると裁縫神の祠があるので、とりあえず、ここにも良さそうな場所で転移の為の『座標刻印』魔法を使用し転移先に指定できる様にしておく。
そして、今回は北に向かい、ダレル市へと到着。
都市には入らず、国境へと向かう。
今いるルリード王国と隣のヨルド王国の国境は、強い魔物が横行する森と、双方の国が築いている城壁により区切られている。
市町村を守る程の城壁でないのは、護る距離が数十キロとか数百キロだからか、魔物から住民を守る為の城壁でないからか。
と、向こうの端が見えない城壁を見ながらルリード王国側の城壁に設けられた門に向かう。
そこでステータスウィンドウを可視モードで見せ、出国税1万GAZUをはらい、ルリード王国側の城壁からヨルド王国側の城壁へと向かう。
そこで、またステータスウィンドウを見せ、入国理由を聞かれ「転職条件を得る為に神像の祠に行くつもりです」と説明し、入国税5000GAZUを払い、入国を終える。
出国と入国で15万円相当だ。
そう言う世界・社会と言ってしまえばそれまでなんだけど、なんて言うか理不尽と言うか不自由さを感じてしまった。
魔飛行船に乗って大河を超えての国境越えでは無いのに。
国境の城壁の維持費なんだろうか。
それとも、高い税金で人が国外に出ていく事を減らしたい又は貧乏な人の入国を減らしたいからなのだろうか。
まあ、良いけどさ。
国境近くにあったツベル市から北西へ向かい2つの都市を超えて北に向かう。
そこから、更に町を2つ超え到着した都市から東に向かう。
村を1つ超え、町を2つ超え、到着したのがこのヨルド王国のスタート地点であるレニル村だ。
ここもスタート地点とした事はある。
と認識すると、やはり不自然なくらいにゲーム内容に関する記憶がハッキリとしてくる。
なので、カスタムキャラの家を感知スキルで詳細に探ると、家には中年の夫婦と2人の子供がいる。
そう言えば、そう言うスタート地点だったか。
だけど、何かが違う気がする。
転生者である勇者候補が今居ないのは、感知スキルを信じる限り間違いないだろう。
偽装スキルの隠形で隠れたまま、家で生活するなんて事は、普通しないだろうし。
いや。
家族以外には又はこの村の住人以外には、偽装スキルの隠形で隠せと言う指示は出来るのか。
……。
勇者候補が未だこの村に居るとしたら、成長の加護の倍率が低かったために、未だ始まりのダンジョンへ行っている場合か。
その場合は俺の方が強い可能性が高いだろう。
そして、もし俺と同程度以上の強さなら、もう仲間を手に入れる為に王都へと向かっているだろうし。
そう言えば、この村で仲間になる連中が今現在もここに居るかどうかもある、とその詳細を思い出してみる。
同い年の幼馴染である男性二人は、自警団に入っていて、この時間は門番をしていたか。
うん。
感知スキルによると、それらしいのが二人いる。
同い年の幼馴染である女性二人は、宿屋兼食事処の看板娘として、食事処で働いている筈。
うん。
二人ともいる。
まあ、顔を確認するまで断言はできないけど。
と、隠れたまま村に入り、遠くから4人の顔を確認した上で『ここで勇者候補と会う可能性は低い又は俺より弱いだろう』と自分を納得させてスタート地点となる家に近づいていく。
そして、家の中を窓から覗いてみたのだけど。
あ~。
俺が生活していた部屋は倉庫になっている。
食事をするテーブルの椅子が5つではなく4つだ。
これは、この村に転生者は生まれていないと言う事だろうと、周りを警戒しながら始まりのダンジョンへと向かう。
この村の始まりのダンジョンは、山の途中にある斜面だったか。
そこに向かい、一応、中が見えない始まりのダンジョンへの通路からの襲撃に注意しながら入り口に接近する。
ここでは転生者が生まれていない様だけど、俺と同じ様に他の国からこの始まりのダンジョンに来ている奴が居るかもしれないし。
そうビクビクしながら触れると世界の理による幻影が解かれ中に入れた。
ダンジョンへと繋がる通路に簡易転移の為の場所指定と転移の為の座標刻印をしておく。
そして、始まりのダンジョンの初級へと向かい階段を降りる。
そこで、感知スキルの探索を使い、ダンジョンの様子も確認すると、まだ宝箱があるから、ここに来た人は俺が初めての様だ。
念の為にと、地下一階だけでなく、地下二階まで感知の為の魔力の網を伸ばして確認してみたけど、やはり宝箱はあるし。
その過程で改めて確認したんだけど。
ゲームでは、始まりのダンジョンのモンスターの分布は2種類しかなかった。
だから、この国と一つ国を鋏んだリエル王国と同じだろうと思ったら、やはり居る魔物は同じ。
ゲームではよくあるゲームデータの圧縮の為の仕組みだけど、現実でもあるんだな。
この世界を作った存在の手抜きだったりして。
そんな事も考えつつ、宝箱の回収の途中に居た魔物は倒し戦利品を回収。
地下1階2階を巡って、火魔法、格納箱、鋼鉄の大剣Ⅱ、鋼鉄の盾Ⅱ、魔力操作、鑑定、生活魔法、鋼鉄の槍Ⅱ、鋼鉄の斧Ⅱ、魔樹の杖Ⅱを回収。
ボスを倒して、成長の宝玉、簡易転移の宝玉、神酒、魔晶石C3個、エリクサーⅠ15個、従魔の卵を手に入れる。
残念ながら成長の宝玉の効果は2倍だったが、これで成長は16倍。
簡易転移先を最大50か所に。
そして、魔力操作スキルの宝玉を使い、魔力操作スキルをランク3に。
これで、周りに満ちる魔素を利用し、MPの消費量を減らせる。
勿論、ランク2で付与されたスキルが使用するMPを効率化して、消費量を減らせると言う魔力節減の効果も上がったが。
このゲームと言うか、この異世界の強力な力は、消費MPが多すぎて多用出来る様になるまでに時間がかかるんだけど、現時点でも、これでMPを気にせずとは言わないが、ある程度連発できるようになった。
更に、魔素が濃くなると魔物が強くなるのと同様に、空間に満ちる魔素が濃くなると利用できる魔素の量が増え、消費するMPを減らせるのも安心材料かな。
ならばと、火魔法スキルの宝玉を2つ使い、ランク4から5にあげる。
これで、ランク5の業火と言う魔法が使える様に。
広範囲攻撃魔法と言う事は、ランク4の火嵐と同じだが、その攻撃力がかなり上がっている筈。
なんの強化もしていないノーマルで消費MPが240も必要だからね。
ちょっと強化すると、直ぐに500を超えそうだ。
俺の今の最大MPは1400程度しかないのに。
まあ、ランク3の魔力操作スキルの魔力節減の効果で魔素利用の効果が無くても8割にまで必要なMPは減るのだけど。
と言う事で、火魔法メニューを開き、業火の設定をしてみるのだけど。
やっぱり、大量にMPが必要だ。
それでも、広範囲化と高温化を1段階ずつ強化する。
火魔法がランク5で、魔力操作スキルが3ランクなので、最大8段階まで強化できるのに、無念だ。
なのに、強化した業火は、これで消費MPが240+80+80=400だ。
魔力節減スキルにより消費MPが8割になったとしても、320か。
はあ。
消費MPが240、魔力節減の効果で消費MPが192の何の強化も無いノーマルの『業火』でも殆どの魔物を倒せると思いたいね。
そう思いつつ、高温業火と名前を付けて設定を保存しておく。
さて、時間はない。
中級をさっくりクリアしよう。
主人公は、3つ目の始まりのダンジョンの攻略を始めました。
順調にいけば、かなり強くなれそうですが。




