第133話 この大陸の状況と速く走る為に
主人公は、またゲームと異世界の現実との違いに気が付きました。
『勇者候補同士が殺し合う』と言う違いと同様に、致命的な違いです。
なので、今後の方針を変えるかも等と、皆に説明しました。
他の国の始まりのダンジョンに入れる。
そう皆に説明し、その結果、今後の行動の方針が変わってくるかもしれない事を簡単に説明し、スキルの宝玉を使ってもらい、今日手に入れた神酒も渡しておく。
これで、彼女達はトリプルになれる。
まあ、横取りされずに神像に神酒を捧げられるか、と言う問題はあるんだけどさ。
そう言った問題はとりあえず置いておいて、新たに気が付いたゲームと異世界の現実との違いによって、俺は出来るだけ早く、この大陸の始まりのダンジョンを一通り巡っておくのも生き残る為の切り札になるかもしれない、と気が付かされた。
まあ、始まりのダンジョン巡りに対する心配事もあるし、本当に切り札になりえるかどうかも分からないんだけど、行ってみないと分からないからな。
その為には、と今日は皆と狩りに行かない事にし、可能な限り始まりの村と始まりのダンジョン巡りをする事にした。
皆との話し合いを終えて、3人が食堂からもらって来ていた食事をしてから出立だ。
問題は、西に行くか東に行くか、か。
簡単にこの大陸の状況を確認すると、歪な四角形の形をした大陸の真ん中を魔族に抑えられている。
その周りを人族の14の王国が丸く取り囲んでいる状態なんだけど、魔族領との間は竜などの凶悪な魔物が居る東西に延びる山脈2つによって北部、中部、南部の3つに区切られている。
山脈で隔離されている中部の魔族領と直接接している国は、山脈が途切れている大陸の西の端の2つと東の端の1つの併せて3つしかない。
その3つの国と、東の端の国に隣接する1国の4か国だけ、ゲームのスタート地点に出来なかった。
ゲームのイベント進行によっては魔族に直ぐ滅ぼされる国を本拠地には出来ないって事なんだろうか。
いや。
マドリーンの話だと、魔帝が勝てば魔族側の領地が増え、勇者が勝てば人族側の領地が増えると言う話。
だから、ゲームでスタート地点に選べなかった国は、人の領域になったり魔族の領域になったりする緩衝地帯だから、勇者候補が生まれる国と出来ないのか。
まあ、その辺は断言できない事だし、気にしてもしょうがないか。
そのスタート地点に出来ない4か国により区切られ、大陸の北側と南側にある5か国ずつにスタート地点があるんだけど、俺が居るルリード王国は南側の5か国の真ん中にある。
なので、南の国々には行き易いと思う。
そして、西隣りのリエル王国には既に行っているから、東と言うか北東のヨルド王国とワニス王国へ行ってみるべきか。
ゲームでの人気は無かったと覚えているので、勇者候補がいる可能性は低いと思うが、まあ、行って確認してみるしかないし。
確かこの大陸の大きさが横が約2500キロで縦が約2000キロって言う設定だったかな。
ルリード王国の始まりの村から2つ隣のワニス王国の始まりの村まで直線距離だと1000キロは無いと思う。
でも、実際の移動距離だと大きく迂回しなければならない地域もあるし、軽く1000キロ以上あると思うけど、時速100キロで走れば10~12時間程度かな。
その上、東隣のヨルド王国とその向こうにあるワニス王国の国境には大河もあったりするから、まあそう計算通りにはいかないだろうけど。
そう思いつつ、他国の始まりのダンジョンへの移動を始める事にした。
まずは、俺のとっての始まりの村であるイーリス村の近郊にある始まりのダンジョンへと続く通路へと簡易転移。
そこから街道へと出て北東に向かうとヨルム町がある筈だ。
さて、どう速く走るか。
異常なスピードで走っている事を見られるとトラブルになるかもしれないから、偽装スキルの隠形を使用する必要があるだろうと、先ずはそれを使用し、北東へと向かう街道へと向かう。
そして、上がっているステータスで走り続けられるスピードで走るが、それ程早い気がしない。
前世でのバイクや車に乗っている時の感覚と比較すると、時速60~80キロ程度は出ている気はするが。
俺自身のスタミナを無視するならば兎も角、数時間から数十時間移動を続ける前提だと、地面を蹴る時の靴の滑りや空気抵抗で、これ以上スピードを出すのは難しそう。
ならばと、風魔法のランク1で覚える風操作で追い風を造る。
台風並みの風速40メートルなら時速144キロか。
そんな雑な計算をして風操作で俺の周りだけ強風の追い風にすると、かなりスピードは上がった気がする。
後は、走るのが速いチーターを思い出すと、4本足だけでなく地面に食い込む爪も影響しそうか。
筋力とか瞬発力とかなら、前世のチーターを上回っているのは間違いないだろうし、もっと早く走れるはず。
ならばと、裁縫スキルの宝玉を亜空間収納から取り出して使い、裁縫スキルを取得。
裁縫スキルのメニューを表示して、その中から革製品製造を選び、革製造を更に選ぶ。
先ずは、何を材料にするかを考えるべき言う指示があったので、今まで手に入れた皮の中から失敗しても問題の無い数を持っているホーンブルの皮を亜空間収納内で鞣し革にして、靴を造る事に。
革製品製造メニューから革防具作成を選び、更に靴の製造を選び、良さそうな防具ともなるスパイク付きの革靴を選択。
糸や接着剤や油などの必要なモノは、持ち合わせが無いと言うか手間と時間節約の為、スキルに作成してもらい革靴を作ってもらう事にした。
物質を魔力により生成してもらう訳だから、消費MPが増えたけどね。
更に、多分耐久ステータスのお陰で靴擦れは出来ないだろうけど、と思いつつも可動部を柔らかくしたり強く肌に触れる部分をスベスベにしたりしろと裁縫スキルにイメージで指示しておく。
すると、製造指定ウィンドウが表示されて、そこに『靴擦れ対策』、『馴染ませる』とも表示され、それが選択されている状態だから大丈夫かな。
出来た革靴に履き替えて、走ってみると、前より地面と靴の接地面の滑りが少なく踏ん張れる感じ。
おかげで、早く走れる感じだ。
それに風操作の追い風を利用すると、確実に前よりは早い。
だけど、数時間走り続ける訳だから、極所的とは言え風操作で台風並みの風を作り続けるとMPが持ちそうにないか。
まあ、感知とか偽装スキルも結構な強さで常時使用しているし。
となると、風の護りで風防を作ったらどうだろうと、風の護りで高速で走る事による空気抵抗が防げないか試してみる。
風の護りを俺の体から一定の距離を維持するのは、スキルが魔力を使い行ってくれる。
なので、高速で走っていても、風の護りが風防代わりになり、且つ風防に掛かる空気抵抗は走っている俺には掛からない様だ。
ならば、と更にスピードを上げて走って見ると快適に高速で走れる感じ。
だけど、風を100%遮断すると熱が籠る、とそよ風程度は風を通すように風の護りをイメージにより変更。
このスピードなら、今日中に後2つの国をまわれるかもしれない。
そう期待しながら走り続ける事にした。
この大陸の全ての始まりの村と始まりのダンジョンを確認したい。
その為には一度その場所に行く必要があり、その為に高速で移動できる方法を検証した様です。




