第132話 2つの選択肢
主人公は、隣の国に勇者候補が生まれていなかったと言った事実と幾つかの推測から、この大陸には、あまり勇者候補は生まれてないのでは、と言う結論になったようです。
でも、その考えが間違っていた場合についても考察を進める様です。
隣の国には転生者である勇者候補が生まれていなかった。
その理由は推測するしかないんだけど、勇者候補が居る国の始まりの村とダンジョンは無視して通り過ぎ、勇者候補が生まれなかった村近くの始まりのダンジョンを攻略し、アイテムを得る。
そうすれば、かなり俺や仲間を強化でき、他の勇者候補に対して有利になる筈。
勇者候補同士で殺し合い、その力を殺害により奪わなくても。
と言う事で、この大陸のスタート地点を全部回ってみたい。
と言うか、廻らなければならないって結論になったんだけど。
だけど、このルリード王国や隣のリエル王国の王都で仲間を手に入れる為には、時間制限内に強くなる必要があるから、出来ればイベントが起こる世界平和祭までに5級職になっておきたい。
多分、今の成長の加護の力でもダンジョンに籠ってDランクを狩り続けば、4級職の忍びとレンジャーでレベル上限になり5級職の上忍になれるし、それ以外の5級職にすらなれ、様々な力を得たり力を強化したりできるだろう。
それを実行せず、他の国々を回ってみたけど結局成長の宝玉が手に入らなかった、なんて事になった場合、下手をすると力不足で仲間になる人を死なせてしまう可能性が出て来る。
それは嫌だ。
新たな希望に飛びついて、この大陸の始まりのダンジョン巡りをするべきなのだろうか。
それとも、不確実な始まりのダンジョン巡りでは無く、確実に強くなれる様にダンジョンに籠り4級職を極め複数の5級職の力を手に入れる事を優先すべきか。
……。
「どうするの、ヨシマサちゃん」と、考え込んでしまった俺にマドリーンが心配そうに聞いて来る。
2つの選択肢があるが、今直ぐ決めるのではなく、殺し合いにならない様に注意しながら幾つか始まりのダンジョンを廻ってみてから決めるのでも良いか。
そう決断し「とりあえず、今日は行けるだけ勇者候補が生まれる可能性のある村に行ってみようと思う。皆は買い物とスキルから教わりながら体捌きとかを身に付けてもらえるかな」とお願いする。
「ああ。前に言っていた、低ランクの杖技スキルに教わりながらの近接戦闘では反応が遅れるから、事前に杖技スキルに訓練の指導をしてもらい、自分で反応できる様になれってやつね」と、マドリーンは俺の言いたい事を理解してくれたようだ。
アリーサもクラリッサも、同様に理解しているようだけど。
「そう。今日幾つかの国をまわってみて、それからもう一度どうするか考えてみようと思う。と言う事でこれ」
そう言って3人の前に宝玉を出しつつ「これ使って?」と宝玉を3人に差し出す。
「何の宝玉なんですか?」と、クラリッサが驚いている表情のマドリーンとアリーサの様子も見ながら俺に聞いて来る。
「アリーサとクラリッサが格納箱スキルの宝玉。マドリーンが鑑定スキルの宝玉」
「な、なんで」と驚きの声をあげたのはマドリーンか。
「格納箱スキルの宝玉が2個しかない上に、マドリーンが魔法の袋を持っているからだけど」
「そっか。鑑定も大事なスキルだしね」と、マドリーンが納得してくれたから、これで大丈夫か。
「まあ、ランク1だと大した力ではないけど、騙されて物を買う事は減るかな。人に使うと鑑定したってバレちゃうから、使ったらだめだけどね」
そう言いつつ、更にアイテムを出す。
「後、これを各自で持っていて」
そう言って、3人の前に出したのは、神酒を各1本ずつ。
更に、アリーサとクラリッサにはエリクサーⅢを2本ずつ。
「あっ。そうか。格納箱スキルがあれば貴重品も持っておけるのか」と、納得の声をあげたのはクラリッサ。
「まあ、そう言う意味だと盗まれる可能性のある魔法の袋だよりのマドリーンが少し心配だけどね」
「そっか。なら私の分の神酒はアリーサに頼むから大丈夫だよ」と、マドリーンは絶対に取られたくないモノをアリーサにとりあえず預けてくれるようだ。
「で、そのスキルを使いこなすと言うのも、今日の宿題かな。
まあ、そんな使い勝手の悪いスキルではないけどね」
「分かった。今日は買い物とスキルの検証やスキルを使った訓練ね」と、マドリーンは言って来る。
「そう。それでこれも」と硬硬貨2枚、ミスリル貨を2枚ずつ皆に渡しておく。
「そっか。収入もあったんだね」と、アリーサが状況を確認してくる。
「そう。本当は、馬車とか馬車用のゴーレムとか買うお金にしようと思っていたんだけど、とりあえず、買い物は後回しにして自分の強化を優先する。
なんせ、今の皆のステータスだと馬車で移動するより走った方が早いからね」
「そっか。でも、その辺も見ておくよ」と、マドリーンは仕事を請け負ってくれたが。
「後は、図書館に行って、マドリーンが見たと言う勇者候補が殺し合うと言った記載がある本の確保かな。といっても、貸し出しはしてくれないか」
「うん。写本は時間が掛かるけど、それを頼んでおこうか」と、マドリーンは追加の仕事も提案してくれる。
なので「そうだね。お願い」と頼み、他の国の始まりの村に向かう事にした。
主人公は、始まりのダンジョン巡りをとりあえず選択しました。
勇者候補同士で殺し合わなくても強くなれる、と言う事の魅力は、主人公には大きいのでしょう。




