第101話 女性達への勧誘
主人公は、冒険者ギルドの講習を受けている途中、ゲームのバッドエンドメッセージを思い出し、不安になった様です。
ゲームでのメッセージが曖昧なので、真面目に考えてしょうがなさそうではあるのですが、その内容は『人族が滅びる』ですから、気になってしまったのでしょう。
冒険者ギルドの初心者講習を終えて、さて帰ろうかと椅子から立ち上がろうとしたところで「ヨシマサちゃん途中ボーっとしていたでしょ」とマドリーンが指摘してくる。
いや。
どんだけ鋭いんだよ。
……、それだけ俺から目が離せない感じなのか。
そう期待を込めつつマドリーンを見ると少し怒っている感じなので事情の一部を耳元でコッソリ説明する。
「お告げは、この講習について一部しか教えてくれていないんだよね。それが気になってさ」
「そ、そうなんだ」と説明すると事情があったんだと言う感じにはなってくれた。
「俺が間違えそうになったら教えて」と頼み、部屋から出ようとすると3人の人間のパーティが俺達の前に立ちはだかった。
「ねえ。君達。ああ、君は別なんだけど、俺達と一緒にやらないか。
俺達人数は3人だけど、全員ダブルなんだ。
将来の事を考えると、こんな男より絶対いいと思うよ」
そう俺を除外して、3人を口説く様だ。
う~ん。
異世界モノならテンプレなのかもしれないけど、これもゲームじゃなかったなと思いつつどう対処しようかと思っていると、マドリーンが俺に目配せしてくる。
恋人・婚約者としての仕事をしないと、と思いつつ「え~と、ダブルって事は大変でしょうから、こんなところで女性を口説いている場合じゃないと思いますが」と言っても「なんだと」と意味が分からない様だ。
ダブルって言うのは嘘かもな、と思いつつ話を続ける。
「どのダブルかは知りませんが、2つの職業とその職業の複合職について鍛えないと駄目なんですよね。
つまり、俺の3倍は頑張らないと。
結果、俺の3倍以上強くなれるんでしょうけど、手を抜けば中途半端にしかならないでしょうし」
そう言うと、『何だこいつ』と言う感じで見て来るが。
「それに、彼女達とはもう関係を持ってしまっていますから」
そう言うと「なんだよ。使用済みかよ」と吐き捨てて不快そうに去って行った。
その姿に呆気に取られているアリーサと、眉をひそめているクラリッサと、怒っている感じのマドリーン。
後でフォローするのは俺なのに、余計な事をしてくれるよ。
中央冒険者ギルドから、北の冒険者ギルドへ向かいつつ、マドリーンをなだめる。
「男って、はじめてに拘るよね。馬鹿なんじゃない」
「まあ、単純に既に俺とそう言う関係にあるから諦めたのかもよ」
「そんな感じじゃなかったでしょ」と、マドリーンは誤魔化されてくれない。
「無垢なる者なんて称号があるからな」と、シミジミ面倒な理だなと思いつつ呟くと「ヨシマサちゃんはどうなのよ」と、俺に矛先が向いた様だ。
「まあ、嬉しかったのは嬉しかったかな。初めての人になれて。後は最後の人になるのを目指せば完璧だし」
「ふ~ん。途中が違う人になるかもよ」と、マドリーンは言って来るので、真面目に答える事にする。
「う~ん。どうなんだろうな。裏切られたって感じなら許せないだろうけど、どうなんだろう」
「冗談よ。真面目に答えないで。私が馬鹿みたいだから」と、マドリーンは直ぐに変な事を言ったと反省しているようだ。
「それに、マドリーンとアリーサとクラリッサなら、未亡人でも欲しいって思うと思うよ。まあ、あまり良くない具体例だけどさ」
そう言うと3人は明らかに引いたが、ホホは少し赤いかも。
「それよりは、マシだと思うけどね」
「それは、そうなのかな。と言うか、ヨシマサちゃんにそう言う性癖があるなんて」とマドリーンは俺をからかってくる。
でも「いや。子供が居たらとか、色々難しい状況もあるだろうけど、チャンスがあれば行っちゃうと思うけどな」と怒りを抑えてもらう為に真面目に答える。
「そっか」と、マドリーンはまんざらでもない感じ。
アリーサもホホを染めているし、クラリッサは苦笑している感じなのかな。
何とか乗り切ったのかと思いつつ「と言うか、男性が無垢なる者を望むなんて、何処で知ったの?」と気になった事を一応聞いておく。
「えっ。母や祖母からそう言うモノだから注意しなさいって、散々聞かされているし。男性は、再婚でもこだわる人多いらしいから」と、マドリーンは当たり前って感じで言ってくる。
「ふ~ん」と言いつつ、そんなモノなのか、とも思う。
まあ、不倫とか避ける為には貞操観念は高い方が良いんだろうけど、それとは違う気がするな。
そう言えば、鑑定スキルで人の名前を詳細鑑定すると父親と母親の名前が出て来るから、不貞行為とかし辛い世界の理とかもあるのか。
でも、避妊魔法とかあるから、そうでもないのか。
そんな事を考えていると「ヨシマサちゃんが、そんなに私に執着しているなんてね」と、自信ありげに言って来るので「マドリーンは違うの?」と聞いてみる。
すると「もう、3人も恋人作っておいて、何言っているの」と怒られてしまう。
なので「しかし、ダブルの3人組か。居る所には居るんだな」と話題を変える事にする。
「私達もそうじゃない」と、マドリーンは周りを気にして小声で言って来るが。
「うん。でも、それはちょっと違う事情があって、だからね」と、『勇者候補とその仲間だからね』と言うのを避けて言ってみたのだけど。
「それは、そうなのか。でも、彼奴らは母に忠告されたダブル詐欺かも」
マドリーンは、眉をひそめながらそう言って来た。
どこの世界にも、嘘つきの悪い奴は居るのでしょう。




