59 幕間 ギルマスの追想 その1
ギルマス視点で、今までの事を書かせて頂きました。
一話程度で簡単に書くつもりでしたが、ついダラダラと書いてしまい、長くなってしまいました。
折角なので、分割して、そのまま投稿したいと思います。
しばらく、お付き合いください。
俺の名はヘルマン。冒険者ギルドの代表だ。
俺は元銀等級冒険者で、あと少しの所で白銀等級に昇級する所までいったんだぜ。
結局、怪我をしてしまって引退。
俺、左手が無いんだ。名誉の負傷というやつだ。突然変異した巨大なアシッド・スライムに左腕ツッコんだら、そのままドロドロと溶けちまった。わっはっはっ、良くある話だぜ。
今まで溜め込んだ金で魔術具の義手を購入し、剣を握れるようには回復したが、これから先何年も冒険者をするには無理があった。
冒険者の等級を落として身分相応の依頼をこなしていく道もあったが、俺はきっぱりと冒険者を辞める事にした。
その理由は、俺に子供が出来たからだ。
怪我をする前から良い感じに付き合っていた酒場の娘との間に出来た子供だ。
良い機会という事で、俺は冒険者を引退し、結婚し、父親になった。
仕事に関しては、冒険者時代から仲の良かった前ギルド・マスターのジジイの誘いで冒険者ギルドへ就職した。冒険者を引退し、冒険者ギルドへ就職。これも良くある話だぜ。
それから十年、前ギルマスは年齢を理由に退職した。
そして、前ギルマスは、なぜか俺をギルマスに指名しやがった。
確かに俺は、元冒険者で腕は立つ。今でも現役と変わらない筋肉と現場の知識を持っている。
たまに色街に行って遊んではいるが、今もこれからも妻を一生愛す事を誓う愛妻家だ。子供も三人に増え、自他共に認める素晴らしい父親でもある。
そういう事で、褒められる部分の多い俺であるから、仲の良いジジイが俺をギルマスに推薦したのは分からなくもない。
だが、俺よりも冒険者ギルドで長く働いている奴は沢山いる。そんな奴らを出し抜いて、本当にギルマスに成っても良いのだろうか? そんな不安を抱いていたのだが、他の職員からは特に反対の意見は出てこなかった。
どちらかといえば、ぜひやってくださいみたいな雰囲気だ。皆はそんなに俺の下で働きたいんだな。うんうん、分かるぜー。俺って魅力的だからな。わっはっはっ。
そういう事で、俺は冒険者から冒険者ギルドの職員へ。そして、ただの職員からギルド・マスターへと大出世をしたのである。これは良くある話ではないな。
ギルマスに成って初めて分かった。
ギルマスの仕事が書類地獄だという事を……。
来る日も来る日も休みなく、大量に積まれた木札や羊皮紙を確認して、一枚一枚サインをしていく。
たまに会合があり、その日だけは書類地獄から解放される。だが、その会合も地獄なのだ。
商業ギルドと工業ギルドの会合や街の有権者が集まる会合はまだ良い。
前置きの長い挨拶から始まり、お互いの近況などの報告会と反省会だ。あーでもない、こーでもないと時間が許す限り話し合う。それもお互いにケチをつけたり、自分の失敗を他のギルドに責任を押し付けたりとネチネチネチネチと話し合うのだ。
「ウガー! 喧嘩してーなら拳と剣でしやがれー!」と何度も叫びそうになるが、いかんせん、ここに集まっている奴らは、俺と違って良い所のボンボンだ。今まで一度も喧嘩などした事もない連中の集まりである。
俺は三人の子供を持つ立派な父親だ。俺だけ拳を振り上げて、暴れてしまう訳にはいかない。だから、俺は目を瞑り、時が過ぎるまで睡魔と対話している。本当、出来た大人だな、俺は。
だが、こんなのはまだ良い。問題は、貴族や教会が関わる会合である。
あいつらは住んでいる世界が違い過ぎて、会話自体成立しない。本当に同じ人間か? と思ってしまう事が何度もあった。もしかして魔物かもしれない。斬ってしまおうか、と思う事も何度もあった。
ギルマスとはいえ、俺たちはただの平民。貴族や教会の方が立ち場は上である。
その為、貴族や教会の仕来りに沿って会合をしなければいけない。
会合と名乗っているが、実際は話し合う訳ではない。向こうが一方的に話して、聞かれた事を返答するだけだ。
静々と淡々と進む会合ではあるが、非常につらい。胃に穴が開きそうになる。ちょっとした事で、貴族の癇に障れば、被害は俺だけでなく、平民全体にまで及んでしまう。
分かるだろ、俺の気持ち。ここも地獄なんだぜ。
そういう事で、ギルマスに成った俺は、毎日毎日、書類地獄と会合地獄の日々を休みなくやっている。こんなんじゃ俺の筋肉が萎んじまうぜ。
今なら分かる。前ギルマスのジジイが俺をギルマスに推薦した理由を。仲の良かった俺を生贄にしたのだ。そして、他の職員を救ったのだ。
他の職員もギルマスの仕事内容を知っているので、誰もやりたくなかったのである。ただの職員である俺がギルマスに成る事に反対しなかったのも頷ける。
知らなかったのは俺だけだ。
そういう事で俺はこの一年、ギルマスとしてやっている。
そんな俺の元に冒険者が一般人の金を盗んで喧嘩をしていると、ギルド職員から報告が上がった。
この街は特殊で、貴族よりも立場が上の教会が山の上から睨みを利かせている。
精励潔白、質実剛健の教会は、犯罪を許さない。
そんな教会のお膝元で活動している冒険者ギルドの現役冒険者が犯罪を起こしたとなれば、冒険者ギルドまで目を付けられてしまう。
俺は今すぐに現場まで駆けつけて、喧嘩に加わる……んん……仲裁をしなければいけない、と思い書類仕事を中断し席を立ったら、太い手が両肩に添えられて、再度、椅子へと押し返されてしまった。
後ろを振り向くと、ゴーレムのような女性が睨むように俺を見ている。
「現場には他の職員が向かっています。ギルマスは職員から報告が上がるまで、仕事をしていてください」
有無を言わさない威厳のある声で俺を椅子に縛りつける女性は、ビルギッドという俺の秘書だ。
前ギルマスのジジイの時から秘書をしていて、現在も俺の秘書として引き継いでいる。
そんな彼女の見た目はゴーレムのように迫力があった。
人間見た目ではないと言うが、彼女に関しては論外だ。秘書に成るよりも冒険者に成った方が似合っている。現役を退いたとはいえ、まだ俺の筋肉は絶好調だ。そんな俺を両肩に手を乗せられただけで、動けなくさせるのだ。彼女が冒険者になれば、絶対に金等級冒険者まで昇り詰めるだろうに……。
そんな事を思っていると、無表情で何を考えているのか分からないギルド職員のレンツが報告に帰ってきた。
どうやら、犯罪を犯した冒険者は、被害者に返り討ちに遭い、衛兵に連れていかれたとの事。
「そうか……では、被害者の謝罪は俺がしなければいけないな。少しお茶でも飲みながら……」
「必要ありません」
俺の両肩に乗せているゴーレムの手に力が加わり、席を立たせてくれない。
「ビルギッドさんの言う通り、被害者の対応はレナがしていました。彼女に任せれば問題ないでしょう」
いやいや、冒険者が不祥事を起こしたんだ。この場合、冒険者ギルドの代表である俺が、直接謝罪をしなければいけない筈だ。決して、書類仕事をしたくない訳ではない。そう、少しお茶を飲みながら、仕事が終わる時間までゆっくりと謝罪をしなければいけない。うんうん、誠心誠意の謝罪はこのぐらい時間が必要なのだ。
その事をゴーレムのビルギッドと無表情のレンツに伝えると……。
「ギルマスからの謝罪も必要なのは重々承知です。ただ、それは後日でお願いします。今回の件について、他の職員から様々な調査報告と今後の対応について、話し合わなければいけません。書類も増えるでしょう。定時に帰れれば良いのですがね」
不穏な事を言うレンツ。
その日、レンツの言葉通りに成ってしまった。
レナ嬢について少し話そう。
彼女は、前ギルマスだったジジイの孫娘だ。
幼い頃からジジイに連れられて、よく冒険者ギルドへ顔を出していた。その所為か、年頃になった彼女は冒険者ギルドへ就職した。
彼女は窓口担当を希望していたが、荒くれ者の相手にする窓口をジジイが孫可愛さに拒否をして、長い間、裏方へ回していた。
だが、そのジジイも退職し、俺がギルマスに成ったおかげで、最近、念願の窓口担当へ異動したのだった。
幼い頃から冒険者ギルドに通い、ギルド職員のイロハを知っている彼女は、知識も経験もあり、さらに男連中を虜にする面構えである事から男性冒険者から高嶺の花とされている。
ちなみに、俺たちギルド職員はガキの頃から知っているので、妹みたいな感じになっている。さらに前ギルマスの孫である事を知っているので、色恋に発展する事はない。
そんなレナ嬢から新しく冒険者になった者がいると報告を受けた。
これは有り難い。
ここ最近、新しく冒険者になる者は少ない。
その理由は単純で、割りに合わないからだ。
入って早々の新人冒険者では、低賃金の依頼しかなく生活するのも一苦労だ。
昇級していけば、それなりの収入を得られるが、その分、危険度も上がる。一人前に成ればなるほど、怪我も増えるし、最悪、死んでしまう。俺が良い例だ。
余程、腕に自信のある奴か、一年後、十年後と先を考えていない奴しかならない職業だ。ちなみに俺がそうだった。うんうん、俺も若かったな。
「その新人はどんな奴なんだ?」
俺が聞くとレナ嬢が新人冒険者について話してくれた。
名前はアケミ・クズノハ。珍しい名前だ。遠くの国から来たのだろう。
外見は、禿頭で筋肉質の中年男性。一見、凄腕の兵士とか、武器屋のオヤジに見えるそうだ。うん、俺に似ているな。まぁ、俺の方が髪の毛はあるから俺の勝ちだ。わっはっはっ。
「その人、不思議な事にレベルが二しか無いんです」
「はぁー?」
レナ嬢の報告を聞いて、俺は間抜けな声を出してしまった。
レベルニって、そこいらの子供よりも低いぞ。今までどうやって、生きてきた? っというか、冒険者としてやっていけるのか? 草木の陰で震えているスライムですら倒せない気がするが……。
「魔術石板が壊れていると思い、何度も叩いたのですが……」
「おいおい、叩くなよ。貴重な魔術具なんだから……」
「ええ、知っています。能力値も変で、魔力量だけが異常に高いんです。銀等級の魔術師以上です」
「はぁー?」
「その他の能力値はレベル二相当です。ああ、運の値がそこそこ高かったですね。魔力量程ではないですけど……」
「それ、壊れているな。後で俺が見ておこう」
「そう思い、私自身で試したのですが、別段、変な所はありませんでした。本人も間違ってないと言っていました」
うーん、一体、何なんだ? 訳が分からん。
「あっ、ちなみにそのアケミさん……新しく入った冒険者の方が、昨日の事件の被害者です」
「昨日の被害者って……そういうのは先に言え!」
こうしちゃいられない。ギルマスとして、今すぐにその新人冒険者に会って、謝罪をしなければいけない。相手は俺と同じような歳恰好だ。酒を交わしつつ、謝罪と冒険者の心得を教えておかなければいけない。
「ギルマス、仕事が残っています。その書類を全て終わらせてから、好きなだけ謝罪をしてください」
前の机で書類仕事をしていたビルギッドが、私の方を振り返り、壁のような顔で睨んでいる。もう少し、愛想良くすれば、ゴーレムからオーガぐらいに変わるのに。
「ギルマス、アケミさんは既に帰られました。謝罪はまたの機会にして、仕事をした方がいいですよ」
レナ嬢がニッコリと俺の机の上を見る。
俺も机に積まれている木札や羊皮紙の束に目を移す。
これ、今日中に終わるのか? っというか、今日中に帰れるのか、俺?
案の定、本日の仕事は夜遅くまで掛かってしまった。
ちなみに、俺自身で魔術石板を試してみたが、特に壊れてはおらず、正常に作動した。
翌日、いつも通り、書類相手に戦っているとレナ嬢が現れた。
「ギルマス、人形も冒険者に成れますか?」
「はぁー、人形?」
何をとんちきな事を言っているのだ、この娘は?
「実は……」
俺が胡乱な目になっている事に気が付いたレナ嬢が、一から順番に説明してくれた。
昨日、冒険者に成ったアケミ・クズノハが連れてきた少女の話である。
「人形って事は、その子は木で出来てるのか? それとも案山子みたいな奴か?」
人形といえば、木を人間ぽく削って作ったものか、布を丸めて人間ぽくしたものしか、俺は見た事がない。
「いえ、私たちと同じで、凄く可愛い女の子です。そうそう、魔術人形って言っていました。ちなみに年齢は百八二歳とか……」
魔術人形……聞いた事がある。
魔術具の一種で、人間と同じ姿、人間と同じように動く事を想定した道具。そのような魔術具を研究している連中がいると聞いた事がある。ただ、完成したという話は聞いた事がない。噂では、人の形をした置物が出来ただけで失敗続きとの事。
もしかしたら、人形というのは、ただの比喩表現で……例えば、その子は奴隷であり、買われた主人に人形のように扱われているだけかもしれない。
まぁ、奴隷云々は別に犯罪ではないので、俺たちがとやかく言う事ではない。
「ここで聞いていても分からん。直接、俺が……」
そう言って、俺が席を立つと「ギルマス」と前の机で仕事をしていたビルギッドが鋭い視線を俺に浴びせてきた。
「……と思ったが、仕事が溜まっているから止めておく。その子が人形だろうが奴隷だろうが、魔術石板に登録できれば、冒険者に成っても構わないだろう。後はお前の判断に任せる」
俺は渋々、席に座り直した。
その後、無事に魔術石板に登録できた事を聞き、新しく作った冒険者証を見たら、種族欄に『魔術人形』と書かれていた。
まったく、意味が分からない。
毎日毎日、どうしてこうも書類が作られていくのか?
俺は机に積まれている木札や羊皮紙を見て、溜め息が出る。
書類の内容は様々。新規の依頼内容。依頼達成の報告。冒険者の情報。魔物の情報。街の情報。外の情報。さらに、商業ギルドや工業ギルド、貴族や教会に関する報告書類がどんどん積み重なっていく。
それらを全て目を通して確認をしなければいけない。
その為、新人冒険者のアケミ・クズノハとエーリカの情報もレナ嬢から報告で知る事になる。
新人冒険者が必ず依頼を受ける馬糞回収や水路の掃除、草むしりも問題なく達成している。
安い賃金にも関わらず、文句も言わず、丁寧に依頼をこなしているそうだ。
成り行きで、下町のゴロツキや化けネズミを退治したらしく、腕の方も良さそうだ。
ただ、報告の中にアケミ・クズノハが同性愛者の疑いの報告が入っている。話し方も立ち振る舞いも見た目に反して女性ぽく、男性冒険者から敬遠されているとの事。
まぁ、女性ぽい男なんて、色街に行けばゴロゴロといる。同性愛に関しても、貴族連中には沢山いる。これに関しては、別に問題ないだろう。
あと、気に成る報告と言えば、最近、ピザなる食べ物が評判で凄く美味しいらしい。
俺もぜひ食べてみたいものだ。仕事が終わったら、家族の為に買って帰ろう。うん、仕事が終われば……。
「ギルマス、アケミさんの事で相談です」
ピザなる食べ物に心を奪われていた俺の元にレナ嬢が現れた。
「新人がどうした? 何か問題でも?」
「アケミさんとエーリカさんに問題はありません。とても優秀で頼りがいのある冒険者です。問題は私たちです」
「ん? 俺たち? どういう事だ?」
「新人冒険者に与える依頼がありません」
ああ、そういう事。
新人冒険者には、正規の冒険者になるまで、安い賃金で街の奉仕活動をしてもらっている。それをする事で、冒険者の人柄を見たり、街に対する思いや仕事の心構えを培う為にしている。
その奉仕活動の依頼が無いのだろう。
「無いなら、ギルド内の便所掃除でも書類整理でも回してみたらどうだ」
自分で言っといて何だが、書類整理、凄く良いんじゃないか。是非とも、俺の前に積まれている書類を片付けて貰おう。
「ギルド職員じゃないんですから、そんな事をさせたら辞めてしまいますよ」
まぁ、そうなるわな。冒険者の仕事じゃない。
「それなら、さっさと正規の冒険者にしてしまうか」
「流石に早くないですか?」
「早い遅いは関係ない。そいつの人柄や依頼に対する行動が分かればいいんだ。さっき、お前も優秀で頼りになると言っていただろ。担当のお前の判断で構わん。どうだ、正規の冒険者にしても問題はないか?」
「はい、問題はありません」
「なら、良し」
即断即決、大いに結構。
あっ、そう言えば、少し前に新規の依頼が書かれていた木札を読んだな。
俺は山積みになっている木札や羊皮紙の中から、目的の木札を見つけ、引っ張り出す。
山積みになっている書類が雪崩を起こすが、見なかった事にしよう。
「これこれ、ちょうど良い依頼がある。街外の依頼だ。昇級試験にはぴったりだろう」
街外にあるリーゲン村でリンゴ採取の手伝いの依頼が書かれた木札をレナ嬢に渡す。
レナ嬢は木札を一読してから「分かりました」と合意した。
「日付は二日後だったな。明日の依頼は、鉄等級の簡単な依頼でも回してやれ」
俺は思いつきでぱっぱと決めていく。
仕事が出来る男なのである。
「相談は以上か? 無いなら一つ聞きたい事があるんだが」
「はい、何でしょう」
「お前、ピザなるものは食べた事あるか?」
新しい物好きで知られているレナ嬢に、先程、考えていたピザについて聞いてみた。
ちなみに、食に関して興味のないビルギッドには、無駄だと分かっているので聞いていない。
「今夜、食べに行く予定です」
「なに? じゃあ、俺も一緒に……」
「無理でしょう」
レナ嬢が雪崩を起こした俺の机を見て言った。
むむむー、確かに……。
「では、仕事を頑張る俺にピザの土産を!」
「人気があり過ぎて、すぐに売り切れてしまうそうです。私は親族権限で食べさせてもらいます」
「親族?」
「ピザを出しているのは、私の叔母さんのパン屋なんですよ」
レナ嬢の叔母といえば、前ギルマスのジジイの娘か。
確か、ジジイには八人の子供がいた。その内の一人が、パン屋の倅と結婚したと、冒険者時代に聞いた覚えがある。色街で酒を飲みながら、ジジイが泣いていたのを思い出した。
「ちなみに、ピザを教えたのはアケミさんだそうです」
「新人の?」
「私がアケミさんに叔母さんの宿を教え、アケミさんが叔母さんにピザを教えたんです。つまり、私が我が儘を言って、ピザを食べに行っても問題ないですよね」
「いや、それは知らんが……」
「そういう事で、私は定時になりましたらすぐに帰りますので、ギルマスは頑張って書類を片付けてください」
そう言うなり、レナ嬢は受付へと戻って行った。
それにしても、あの新人冒険者は一体何者なんだ?
中年のおっさんなのに子供のようなレベルで、自動人形と一緒に冒険者をしている。同性愛者疑惑や女性のような言動をする変わり者。さらに見知らぬ料理まで教えて、街中に流行らせた。
書類上では知っているが、未だに直接会った事がない。
一度、会って話してみたいと思っていると、その機会はすぐに訪れた。
書類から逃げたいギルマスと壁のように立ち塞がる秘書さん。
そんなギルマスに、変な新人冒険者の報告がレナさんから上がってきています。
徐々に興味が引かれているようです。




