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アケミおじさん奮闘記  作者: 庚サツキ
第四部 ドワーフの姫さま(仮)とクリエイター冒険者

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281 地下通路

「おい、これはどういう状況なんだ?」

「お前たちが探していたのは、このゴーレムじゃないのか?」


 先程合流したアーロン、アーベル兄弟が砂塵と化したサンドゴーレムと瓦礫と化したロックゴーレムを見ている。

 私は何も知らない二人に助けてくれたお礼とこれまでの事を説明した。

 そんな二人は「魔物の集落だと!? 俺も戦いたかった」「昆虫の魔物に襲われたって!? 俺も戦いたかった」と残念がっていた。


「二人はどうやってここまで来たの?」


 どうも、この二人は私たちが通った道から来た訳ではなさそうだ。


「ゴブリンを全滅させた後、お前たちと合流する為に森の中を彷徨っていた」

「ウロウロとしながら魔物を蹴散らしていたら、遠くで赤い光が立ち上っていたから一直線に走ってきた」


 教会を覆っていた結界のおかげで合流できたみたいである。

 私たちも一直線に進めば、魔物の集落もミミズ畑もヒル沼も回避できたようだ。まぁ、脳筋の二人が一直線に来たって言うから、大木を斬って、魔物を蹴散らして、道無き道を進んで、本当に一直線に来たのだろう。


「そういう事だ」

「さっさと先に進もうぜ」


 結界を壊した事で教会跡地の地下に通じる扉が僅かに開いている。

 説明を聞いたアーロンとアーベルは、扉に付いている取っ手を掴むと力任せに開けた。

 ドコンッと完全に扉が開くと、地下に続く階段が姿を現す。

 ただ……。


 うーむ、行きたくない。


 階段は狭く、そして暗闇に染まっている。こんな場所で、魔女の罠があったら一溜りもない。


「何を怖気ついている。ここまで来たんだ。ちんたらしていたら日が暮れちまう。こんな場所で一泊したいのか? 早く行って、早く帰るぞ!」


 せっかちなレギンがドスドスと暗闇の階段を下りていく。またもや、率先してカナリヤに成ってくれるようだ。

 とはいえ、真っ暗の階段だ。明かりが無くては進めない。案の定、すぐにレギンは引き返してきて、「松明に成るような物は無いか?」と聞いてきた。


「壁沿いに魔法陣があります。そこに魔力を注いでみて下さい」


 暗闇の階段を覗き込んでいたエーリカから助言がでる。

 「これか?」とレギンが壁を触ると、階段の側面がポツポツと明かりが灯っていく。

 以前、教会の宝物庫に進入した時みたいに小さな魔法陣が設置されており、そこから光が発しているようだ。


「これで行けるぞ。お前たちもすぐに来い」


 ドスドスと階段を下りていくレギンの姿が見えなくなってから、私たちも順番に降りて行った。

 若干歪曲している階段を下りていく。

 階段の高さも幅も安定しているので、薄暗くても足を踏み外す事はない。

 特に問題なく建物二階分ほど降りると通路に出た。

 高さ三メートル、幅二メートル程の通路。

 手掘りでなく、レンガのような石材が壁や天井を覆っている。ドワーフ村の村長の家みたいに強固な地下であった。

 ただ村長の家とは違い、小さな魔法陣で光が灯っているので、非常に薄暗く、閉鎖感が半端ない。


「一体、何の目的で作られた場所なんだろう?」


 不安や恐怖を紛らわすつもりで、私は呟いた。

 堅固な作りで、光が灯る魔法陣が設置してある事から、何かしらの理由で作られた地下道だろう。

 ただ教会の床にわざわざ作る意味が分からない。

 もしかしたら、地下墓地だろうか? それか、村の各要所に繋がっているのかもしれない。

 結局、奥まで進めば分かる事なので、私の呟きに答える者はいなかった。


 先頭をレギン、少し離れてエギル、フィーリン、エーリカ、私、リディーと縦一列に進む。最後尾はアーロン、アーベル兄弟で「数年前に行った、地下迷宮に似ているな」「骸骨どもが大量に出てきた所だな。あれは楽しかった」と不吉な事を話ながら付いて来ていた。



 曲がり角の無い一直線の地下道。

 アーロン、アーベル兄弟の呟きがフラグに成る事もなく、特に何も起きないでいた。

 このまま何事なく最奥へ行けそうだ、と思っていた矢先の事……。


「レギン、止まれ! 地面に窪みがある!」


 二番目に歩いていたエギルが叫ぶ。

 「何だ?」とレギンが聞き返すと同時にガコンッと音が鳴った。


「壁に寄れ!」


 エギルの指示が飛ぶと、目の前のエーリカが壁際へ移動した。訳が分からない私も釣られるように移動する。

 すぐにカンカンと金属の叩く音と共に、シュンシュンと風が斬り裂く音が体の横を通過していった。


「な、何だったの?」

「罠だ。床板を踏むと前方から矢が飛んでくる」


 罠の床板を踏んだレギンは、ゆっくりと私たちに振り返る。


「ふぅー、危ない、危ない。鎧を着ていなければ、ハリネズミに成る所だったぜ」


 レギンの足元には鎧で弾いた数十本の矢が落ちていた。

 それを見た私たちは息を飲む。

 罠の位置は、等間隔に並ぶ光の魔法陣のちょうど真ん中。つまり、光が交わらない暗い部分である。

 それもある程度、進んだ先にあった。

 完全に悪意しか感じない。

 この地下道は、非常に危険だ。

 私たちは気を取り直して、慎重に進むのだった。



 少し進むと、直角に曲がる角に当たった。

 先頭を行くレギンが角から顔を覗かせる。

 

「直進の道が伸びている。魔物の待ち伏せもない」

「また罠があるかもしれん。気をつけろよ」

「ああ、分かっている」


 エギルの忠告を素直に聞いたレギンが慎重に角を曲がると、すぐに「うわっ!?」と叫び声を上げた。

 急いで曲がり角を曲がると地面に穴が空いている。

 恐る恐る覗くと、尖った槍の中でレギンが倒れていた。


「これは酷いねぇー。気を付けていても落ちちゃうよぉー」

「曲がってすぐに落とし穴か……この通路を作った奴は、良い性格をしているな」


 フィーリンとリディーが呑気に感想を言っている。

 

「はぁー、本当に鎧を着ていて良かった」


 落とし穴の底で溜め息を吐いたレギンは、底に設置してある槍をゲシゲシと蹴って、折っていく。


「おい、槍に八つ当たりをするな。さっさと登れ」


 エギルが手を伸ばして、レギンを引き上げる。

 気を取り直した私たちは、再度、気を引き締め、先へ進んだ。



 その後も罠は続く。

 二股に別れた先の事。

 行き止まりだった壁に手を付いたレギンは、壁から伸びた光のロープで固定される。そして、背後から転がってきた丸い岩に壁ごと押し潰された。

 私たちは、避難場所のような隙間に身を隠したので助かる。レギンも鎧を着ていたので岩に押し潰されたが何とか助かった。

 

 または、一人部屋のような場所に入ったレギンが閉じ込められた。そして、天井から爆発する豆が降ってきて、四方八方と爆発し、もみくちゃにされた。

 幸い、鎧を着ていたのでレギンは助かった。


 さらに通路の出っ張りに躓いたレギンが前のめりに倒れると、天井からギロチンのような刃が下りてきた。

 刃はレギンの鎧に当たるとレギンを輪切りにする事なく、逆に刃が欠けてしまった。

 

 うーむ、ドワーフ製の鎧が凄いのか、ドワーフが逞しいだけなのか、分からない。まぁ、どっちもなんだろうね。



 そういう事もあり、カナリヤ役のレギンのおかげで、広々とした部屋に辿り着いた。


「うーん……何もないな? まさか、ここが最奥か?」


 一直線に進んだ先の部屋。道中、曲がり角もないので、引き返した所で意味はない。

 エギルの言う通り、ここが最奥なのかもしれないが、本当に何も無い部屋である。

 

「また隠し扉か何かじゃないのかな?」


 私たちは四つん這いになって、地面を観察する。

 扉も無ければ、罠のへこみもない。精々、赤黒い染みが至る所に付いている。

 試しに天井を見るが、爆発する豆が落ちてくる穴も無く、赤黒い染みが付いているだけだった。

 隠し扉と言う事は、やはり壁かな? と思い、壁際を沿って、観察していく。

 綺麗に切られた石材を組んだ壁で特に変な所は……あった。


「みんな、来て。一カ所だけ色の違う場所があるよ」


 薄暗い部屋の壁は灰色の石材で作られている。ただ私が見つけた個所は、真っ黒の石材が埋め込まれていた。

 

「あからさまに色が違うな。罠なんじゃねーのか?」


 散々罠にかかったレギンの言う通り、非常に怪しい。

 だが、他の壁を調べてみても、この怪しい個所以外、変な所はなかった。


「エーリカ、教会の隠し扉みたいに魔力を感じたりはしない?」

「ありません」


 エーリカがきっぱりと断言する。

 魔力による隠し扉がないのなら、この黒い石材が先に進む鍵なのだろう。

 ただ問題は罠の可能性があると言う事。

 触ってみるか、止めるべきか、それが問題だ。


「ああ、じれったい! 触って見なければ、安全か罠か分かるだろう!」


 そう言うなり、せっかちのレギンが黒い壁を押し込んだ。

 ズズズッと奥まで石板が押し込まれていくと、それに合わせて、すぐ横の石材が動き出し、扉が現れた。

 

「レギン、良くやった。これで進めるぞ」

「待て待て待て、これも罠だ! 腕が抜けん!」


 黒い石材を肘まで押し込んだレギンが「ふんぬー!」と赤い顔をしながら腕を引き抜こうとしている。


「腕が太くて引っ掛かっているだけじゃないのか?」


 リディーが阿呆を見る目で呟くと、レギンが「違うわ!」と唾を飛ばしながら吠える。


「奥まで押し込んだ瞬間、壁の中が狭まって、手首を固定しやがった」

「手が抜けなくなっただけだから、レギンはここに置いて、先に進もうかぁー」


 フィーリンが提案すると、「姫様ぁー、そんなぁー」とレギンが情けない声を出す。


「冗談、冗談。壁ごと破壊すれば、取れるでしょー」

 

 フィーリンが土斧を構え、狙いを定める。

 「直接、腕を攻撃しないでください」とレギンが身を屈める。


「……あれ?」


 フィーリンが今にも土斧を振るおうとした時、私の頭に違和感を感じた。

 手で頭を触ると砂が付着している。

 炭鉱で崩落事故に巻き込まれた記憶が蘇った私は、すぐに天井を見上げた。


「みんな、屈んで! 天井が落ちてくる!」


 ズズズッとプレス器のように天井が下降してきた。

 私たちは、急いで頭を抱えながら地面に伏せる。


「ふんっ!」

「ぬうっ!」


 ドンッと天井が途中で止まる。

 助かったと顔を上げると、一番背の高いアーロンとアーベルの二人が背を丸めながら天井を支えていた。


「お前たち、早く奥へ行って、戻って来い!」

「俺たち二人だけでは、長くは支え切れん!」


 血管を浮き出しながら赤い顔をしているアーロンとアーベル。膝が震えているのを見るに、今にも天井の重さで潰されそうだ。


「それよりも罠を解除させる方が早い。すぐに見つけるから!」


 隠し扉が開いた瞬間、天井が落ちて潰れる罠。

 これも悪質な罠である。

 罠と言う事は、次の犠牲者を出す為に、元の位置まで天井を戻す必要がある。

 その為の解除する装置がある筈だ。


「通って来た道もこの部屋にもそれっぽいのはない!」

「あるとすれば、さらに奥だ!」

「頼む! 早く、見つけて助けてくれ!」


 壁から腕が抜けないレギンが泣きそうな声で「早く、行け!」と叫ぶ。

 

 そんな三人を助ける為、私、エーリカ、リディー、エギルは隠し扉を抜けた。

 レバーなどの罠を解除できる装置を探しつつ、奥へと進む。

 そして、何も見つけられないまま最奥へと辿り着いてしまった。


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