275 魔物の集落 その2
魔物の集落の先に魔女の廃村に通じる廃道がある。その廃道に出る為には、集落を突破するしかない。
戦闘は避けられないが、最低限の戦闘で済むように画策する。
「ゴブリンの時のように目潰しをする?」
先頭を走るレギンに提案すると「やれ」と許可が下りた。
私は急いで右手に魔力を集める。今回は魔物の集団を一網打尽に目潰しをするので、ガンガンに魔力を集めた。
開幕一番に目潰し攻撃。うん、危険が無くなるなら卑怯で結構。
「みんな、目を逸らして! リディー、絶対に見たら駄目だよ、絶対だよ!」
「分かっている! 何度も言うな!」
横を走るリディーが目を瞑っているのを確認した私は、集落の入口に集まっている魔物に向けて魔力弾を放った。
光の魔力弾が破裂する瞬間、鼻をクンクンとさせていた二足歩行のウサギが「キューキュー」と鳴くと、魔物たちは急いで顔を覆ったり、剣や包丁を顔の前に持っていき閃光を防いでしまった。
「目潰しが失敗した! 気をつけて!」
薄目で確認していた私は、閃光から顔を逸らしていた仲間に伝える。
「それなら力押しだ! おらぁー!」
木の棒のような槍を持ったワーウルフが入り口を塞ぐように突き付ける。
そんな槍衾の入口に全身鎧で身を包んだレギンが強引に突っ込み、槍とワーウルフの集団を吹き飛ばした。
レギンの捨て身で開いた場所に、フィーリンは両手に持った土斧を投げる。
地面に刺さった二本の土斧が爆発し、周りにいた魔物と近くにいたレギンを吹き飛ばした。
「レギン、ごめんねぇー」
「いえいえ、姫様。俺に構わず、どんどん攻撃してください」
巻き添えを食らったレギンは、すくっと立ち上がり、近くにいる魔物を蹴散らしていく。
リディーは「矢がもったいない」と弓を肩に掛けると、短剣を握って魔物の集団に突進していった。私に「僕の近くに居ろ」と言っといて、一人で危険な場所に入っていかないで欲しい。
魔物はワーウルフが多い。
二足歩行の狼で、安っぽい剣を使って機敏に攻撃をしてくる。
それをリディー、フィーリン、レギンの三人で対処する。
リディーは、木の葉が舞うようにワーウルフの攻撃を避け、その隙に短剣で斬り裂いていった。
フィーリンは、左手の土斧でワーウルフの剣を受け止め、右手の土斧で叩き斬っていく。
レギンは、ワーウルフの攻撃を避けたり受けたりする程機敏に動けない。その代わり、盾のように手甲で防いでから攻撃をしていた。
この三人がいれば、ワーウルフは問題なさそうだ。
ただ、少し離れた場所にコボルトと毛むくじゃらの小人と二足歩行のウサギがいるので、油断は出来ないだろう。
「ご主人さま、わたしたちは補佐に回りましょう」
少し離れた場所で戦いを見守っていた私、エーリカ、エギルの三人は中距離からサポートに回る。
エーリカはリディーの背後に移動し、邪魔な場所にいるワーウルフに魔力弾を放って誘導し、リディーに止めを刺させていく。
エギルはフィーリンのサポートに回り、魔術で作った石の塊を放って、ワーウルフの邪魔をする。
そういう事で、私は残ったレギンに付いた。
全身鎧を使ってワーウルフの攻撃を防いでいるレギンの邪魔にならないよう、少し離れたワーウルフに光の刃を放つ。
少し広く放ってしまった光の刃は、ワーウルフの腹を斬り裂くと同時にレギンにも当たり、大事な鎧を傷付けてしまった。
「おいっ!」とレギンに睨まれ、「ご、ごめん」と謝っておく。
私は何もしない方が良さそうだ。
「ご主人さま、危ない!」
エーリカの忠告を聞いた私は、急いで後ろを振り返る。
「グゲッ!」
「うわっ!?」
いつの間にか土塗れのコボルトが背後にいて、スコップのような形の道具で攻撃してきた。
急いでコボルトの攻撃を避けると私はタイミングを見て蹴っ飛ばして倒す。そして、すぐにレイピアで一突きして殺した。
うん、コボルトもゴブリンと対して変わらないので、やりやすい。
「待機していたコボルトが居なくなった。地下道に入ったのだろう。どこから出てくるか分からん。気をつけろ」
一匹のコボルトと対峙しているエギルが地面を指差す。
私たちの下に地下道が走っていて、至る所に入口の穴が空いているのだろう。どこに穴があるのか分からないので、いつコボルトに背後を取られるか分からず、注意が散漫してしまう。
「ご主人さま、穴を発見しました」
「エーリカ、さっきみたいに穴の中を炎まみれにしてくれる」
すぐにエーリカが草花に隠れた穴に近づくと、ちょうど一匹のコボルトが出てくる所だった。
「えいっ!」とエーリカが魔力弾を放って、コボルトを穴の中に戻す。そして、穴の中に腕を突っ込むと、炎の魔力弾を数発撃った。
集落の数カ所から炎の柱が上がり、数匹のコボルトが炎に塗れながら地上に出てきた。
「キュー……」
少し離れた場所にいた二足歩行のウサギが一鳴きすると、近くで待機していた毛むくじゃらの小人が散開する。
「あの魔物は何? モップの魔物か何か?」
「ドモヴォーイだ。家事が得意な魔物だ」
「何で家事? 私たちを掃除するって事? 強いの?」
「弱い。ただ……」
数匹のドモヴォーイが私たちを取り囲むように展開すると、手に持っていた箒を私たちに向けた。
「魔法が来るぞ!」
ドモヴォーイが持つ箒の先端から炎、水、風、土の塊が飛び出した。
「えーと……えいっ!」
私の方に炎の塊が飛んできたので、レイピアで斬って霧散させる。
ドモヴォーイの放つ魔法は、以前、洞窟内で戦ったブラッカスレベルの魔術で、速度、大きさ、威力と非常に弱かった。
とはいえ、囲むように展開しているドモヴォーイの魔法攻撃は、ゴブリンの矢並に鬱陶しい。
「リディー、遠くのドモヴォーイを片付けられる?」
「僕を誰だと思っている。ついでにワーラビットも片付けてやる」
一匹のワーウルフを片付けたリディーは、一歩後退すると矢筒から三本の矢を掴む。そして、目にも留まらぬ速さで矢を放つと、遠くにいたワーラビットと二体のドモヴォーイの額を撃ち抜いた。
「なら、アタシもぉー」
手持ち無沙汰になったフィーリンが一匹のドモヴォーイに向けて土斧を投げるが、ドモヴォーイはススッと横に動いて回避してしまった。
「あららー」と情けない声を出すフィーリンだが、すぐに手斧を爆発させ、ドモヴォーイを爆風で吹き飛ばす。
「さすが、フィーリンさん! 僕もやりますぞ」
フィーリンの背後にいたエギルは、地面に手を付いてブツブツと呟く。すると、氷の塊を飛ばしていたドモヴォーイの目の前の地面が隆起し、細く尖った土の槍で突き刺した。
私だって! と近くにいたドモヴォーイにレイピアを振って、光の刃を放つ。
スパンッと箒ごとドモヴォーイが輪切りなる。
うん、私、強く成っている。
「最後の一匹、おらぁー!」
レギンがワーウルフの剣を手甲で受け流すと斧で足を砕き、中腰になったワーウルフの頭を粉砕した。
私たちの周りには、ワーウルフ、コボルト、ドモヴォーイの死骸が転がっている。
数は多かったが、特に苦戦する事はなかった。
あとは……。
「デカ物と犬どもを片付けたらお終いだな」
集落の中心に二足歩行の豚と猪、その脇に三匹のスモールウルフが待機している。
こいつらを片付けたら、見える範囲に魔物は居なくなる。
そのピッグオーガとボアオーガーは上空に顔を向けると、「ブヒィー!」「プゴォー!」と鳴き出した。それに合わせるようにスモールウルフも遠吠えをする。
「おいおい、冗談だろ。まだ、こんなにもいるのかよ」
森の中に鳴き声が響き渡ると集落の奥から魔物が現れ出す。
バラックのような建物からワーウルフとドモヴォーイが、地面の中からコボルトが、森の茂みからワーラビットを肩に乗せたピッグオーガとボアオーガがゾロゾロと集まり出してきた。
その数は、死骸と成って地面に倒れている魔物の約二倍。
大して苦戦する事も無く倒せたが、さすがに倍の数を相手にするのは厳しい。それに魔女の廃村までまだ距離がある。こんな所で足踏みしている訳にはいかない。
「こんな数を相手にしていられないよ。当初の予定通り、廃道まで駆け抜けよう」
私が提案すると、みんな無言で頷き、駆け出した。
目の前のピッグオーガとボアオーガ、さらに脇にいた三匹のスモールウルフが動き出す。
「僕の矢では豚と猪に致命傷を与えるのは無理そうだ。犬を片付けるからエーリカとフィーリンで吹き飛ばしてくれ」
リディーは三本の矢を連続で放つと一直線に襲ってきたスモールウルフの額を撃ち抜く。
土煙をあげて倒れるスモールウルフを見る事なくエーリカとフィーリンが前に出て、グレネードランチャーと土斧を構えた。
「はっ!」
「えぃ!」
ピッグオーガとボアオーガを中心に爆発が起きる。
だが……。
「防がれました」
「アタシもぉー」
エーリカのグレネードランチャーは、ピッグオーガが持つ幅広の包丁を盾のようにして防がれる。フィーリンの土斧に至っては、ボアオーガの持つ太く長い槍で弾かれて、空中で爆発して終った。
「エーリカ、フィーリン、もう一度、お願い!」
叫んだ私は、右手に魔力を溜めるとピッグオーガとボアオーガに向けて、小さな光の魔力弾を放つ。
一直線に飛んで行った光の魔力弾は、ボアオーガの槍に弾かれるが、その衝撃で破裂し、小規模の閃光を走らせた。
「流石です、ご主人さま。……はっ!」
「今度こそ……えぃ!」
目を覆うピッグオーガとボアオーガに向けて、再度グレネードランチャーと土斧が襲う。
爆発音と共に血肉が飛び散り、辺りを汚す。
大きな腹部が無くなったピッグオーガと頭部が無くなったベアオーガがドスンと倒れるのを見ながら私たちは集落の奥に向けて走り出す。
「不味い、伏せろ!」
先頭を走っていたリディーがその場に止まると中腰になった。
理由も分からないまま、私たちはリディーを真似るように地面に伏せる。
その直後、ドスドスと棒きれのような槍が地面に刺さり、ドゴンドゴンと爆発していった。
「な、何!?」
「あいつ等、槍に爆発する豆を巻き付けて投げてきやがった」
「フィーリンの土斧みたいに成っているって事?」
「アタシの斧よりかは威力はないけど、当たると酷い事になるよぉー」
ワーラビットが槍にそら豆みたいな爆発豆を巻き付け、ワーウルフに渡している。そして、豆付き槍を受け取ったワーウルフは、槍投げ選手のようにブンブンと投げていく。
ただ、命中率は低い為、私たちの近くに刺さってはドゴンドゴンと爆発して終わった。
「このまま無視して進む? それとも先にあいつ等を片付ける?」
今は槍に括り付けて投げているだけでいいが、豆まきみたいにバラバラと投げてきたら、もち米を投げられたキョンシーみたいになってしまう。
「エーリカ、僕の矢を出してくれ」
エーリカから矢を受け取ったリディーは、集落の脇まで走るとバラックのような寝床の屋根に飛び乗り、弓を構える。そして、今にも豆付き槍を投げようとするワーウルフに矢を放った。
瞬速で飛んだ矢は、ワーウルフが持つ槍に当たり、ワーラビットを巻き込んで爆発が起きた。
「援護する。行け!」
屋根の上からリディーが見守る中、私たちは集落の奥へと走り出す。
集落の奥に行くにつれ、魔物の数が多くなっていく。
無視して進みたいが、それも出来ない。
最低限の戦闘は避けられないだろう。
私たちに向けて飛んできた槍が、リディーの狙撃で空中で爆発が起きる。
そんな中、寝床や木々の影からドモヴォーイが魔法を放ってきた。
ドモヴォーイの魔法は速くもなく威力も弱い。その為、邪魔になりそうなドモヴォーイだけを攻撃する。エーリカは魔力弾で、フィーリンは土斧で、私は光の刃で数体のドモヴォーイを黙らせる。それ以外は無視した。
寝床からワーウルフ、木々の根っ子からコボルトが飛び出すように襲い掛かってくる。
エーリカ、フィーリン、レギンは難なく目の前のワーウルフとコボルトを屠っていく。エギルはちょっと危なめで、距離を空けては土魔術で攻撃していた。
無論、私の方にも襲い掛かってくる。
ゴブリンレベルのコボルトならまだしも、ワーウルフは厳しい。
身長一六〇センチの二足歩行の狼。手には安物のショートソードを持ち、機敏に斬り掛かってくる。
剣の腕は大した事はないが、狼の姿をしている事から動きは早い。
まともに剣を交える事が出来ず、へっぴり腰の状態でワーウルフの剣を躱し、逃げるように距離を空ける。そして、振り向きざま光の刃を放ち、ワーウルフの片足を斬った。
ワーウルフが地面に倒れるが、安全の為、今の場所からもう一度、光の刃を放ち、止めを刺した。
「おっさん、横の森から来るぞ!」
リディーの忠告通り、森の木々からワーウルフとコボルトが同時に襲い掛かってきた。
ひぃー、二体同時は無理!
私が後退りしていると、コボルトの頭に矢が刺さり、ワーウルフの前に倒れた。
リディーの矢で絶命したコボルトを踏み付けた事でワーウルフの体勢が崩れる。
「『光刃』!」
急いで光の刃を放つが、ワーウルフが剣を振って、弾き返された。
爪が甘いのは百も承知。
すぐに左手に溜めていた魔力を放ち、小さな光の魔力弾でワーウルフの視界を塞ぐ。
「もう一度……『光刃』!」
視界を失ったワーウルフを仕留めた。
うん、目潰しからの光の刃。私の必勝パターンにしよう。
「みんな、前を見ろ! 豆を巻き付けたスモールウルフだ!」
前方から爆発豆をグルグル巻きにされたスモールウルフが二体、私たちに向けて走ってきていた。
「リディー!」
「分かっている!」
自爆覚悟のスモールウルフに向けて、リディーが素早く二本の矢を放った。
一匹のスモールウルフに矢が当たり、爆発四散する。
だが、もう一匹のスモールウルフは横に避けて、リディーの矢を躱した。
「アタシに任せてぇー!」
相手にしていたワーウルフをエギルに押し付けたフィーリンは、手斧をスモールウルフに投げつけた。
クルクルと回転する土斧をスモールウルフは難なく躱す。だが、真横で土斧が爆発し、その衝撃で豆も誘爆し、近くにいた魔物たちを巻き込んで死んだ。
その後、フィーリンは両手を地面に付けるとズボズボと土斧を作っては、魔物が密集している個所に次々と投げては爆発させる。
「えい、えい、えいぃー!」
バラックの寝床は吹き飛び、地面は穴だらけ。
ドスドスと近づいて来たピッグオーガにも何度も投げつけて、爆発の嵐で屠る。
「フィーリンねえさん、無茶をしないで下さい。このままでは魔力が無くなりますよ」
フィーリンの代わりにエーリカが、グレネードランチャーでボアオーガを仕留めた。
「大分、殺したがまだまだ居やがる。逃げるにも逃げれんぞ」
廃道まで駆け抜ける筈が、結局、魔物の数が多くて立ち止まってしまった。
辺り一面、死屍累々の魔物の死骸だらけだが、まだまだ魔物はいる。
「安心しろ。援軍が来た」
屋根の上で援護をしていたリディーが戻ってきて、訳の分からない事を言った。
「えっ、援軍? こんな森に仲間なんか……」
私が言い終わる前に森の中から「ギャアギャア……」と聞き慣れた声が聞こえ始めた。
「これを機にゴブリンどもが押し寄せている。巻き込まれる前に逃げるぞ」
リディーが駆け出すと森の至る所からゴブリンが現れた。それも凄い数。
大量のゴブリンが集落にいる魔物を襲い始める。そんな中、私たちは脇目も振らずに走り抜ける。
何匹か私たちの後を追ってくるが相手にしない。
「あそこが廃道だ。このまま進むぞ!」
若干、枝や蔦で塞がれているが気にせず突っ込み、廃道へ戻る事が出来た。
密度の高い木々が左右に生い茂り、落ち葉と枝で地面を覆っている廃道。
大木の根っ子が盛り上がり、転倒しないように注意をしながら走る。
立ち止まって休憩をしたかったが、廃道に入ってもまだ後ろから魔物が追いかけてきていた。
いちいち相手にしていられないとみんなが立ち止まらないので、息も絶え絶えの私も必死に足を動かすが……もう無理。
過呼吸で視界と思考がぼやけだしている。
足の筋肉がピクピクと痙攣していて、いつ転んでもおかしくなかった。
「見てぇー。この先が明るいよぉー。また集落かなぁー?」
「違う。ただの開けた場所だ」
先頭をいくフィーリンとリディーは、前方の様子を伺いながら走る。
一方、殿を走るエギルとレギンから「魔物どもが諦めたぞ」と後方の様子を教えてくれた。
「ご主人さま、大丈夫ですか?」
私の横を付き添うように走るエーリカが心配してくれた。
「だ、駄目……もう走れない……休ませて……」
意地を張っても良い事がないので、ここは素直な気持ちを伝える。
リディーからすぐに「止まれ、止まれ!」と指示が飛ぶ。
ただ、「この先に入るな!」と叫んだので、私の状態を察した訳ではないらしい。
前方を走っていたフィーリンとリディーが脇によって動きを止める。
私の横にいたエーリカも同じ事をする。
だが、疲れ切っていた私は急停止する事が出来ず、よろめきながら廃道の先まで行ってしまった。
さらにすぐ後ろを走っていたエギルも止まる事が出来ず、私とぶつかって、さらに奥まで吹き飛んでしまった。
ドサッと私とエギルが地面に倒れる。
痛みはない。
地面は、新雪のような柔らかい土で、そのおかげで怪我は一切しなかった。
どこまでも透き通った青々とした空を眺めながら、荒れた呼吸を整える。
鬱蒼としていた木々が無くなり、心地よい風が流れている。
フカフカの土の上でゆっくりと休憩が出来る。
そう思っていると、一緒に倒れたエギルから「すぐに立ち上がれ」と厳しい声が飛ぶ。
「良い知らせと悪い知らせがある」
無理矢理、上体を起こした私は、眉間に皺を寄せているエギルを眺めた。
「良い知らせは、魔女の廃村まで近いって事だ」
「はぁはぁ……そ、そうなんだ……」
疲れ過ぎていて、エギルの報告をまともに理解できないでいる。
「そ、それで悪い知らせは何?」
「悪い知らせは……」
そう言うとエギルは、ズボッと土の中に手を突っ込んだ。
そして、土から手を引き抜くとスパゲッティフォークの麺のように指先から何やら長い物がはみ出していた。
「……今居る場所がミミズ畑って事だ」
エギルの手の平に乗っているのは、大量のミミズだった。




