表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アケミおじさん奮闘記  作者: 庚サツキ
第一部 魔術人形と新人冒険者
27/324

27 レナさんのお説教

長くなったので、二分割しました。

今回は短めです。


「アケミさん、無茶な事をしないでください!」


 馬車酔いでヘロヘロになりつつ無事に街へ戻ってきた私たちは、依頼完了の報告をする為に冒険者ギルドまで足を運んだ。そして、担当のレナに会うなり、挨拶も省いて説教を貰ってしまった。


「アケミさん、自分のレベルを分かっているんですか。大ミミズは銅等級冒険者以上でないと退治依頼が出来ない危険な魔物なんです。退治出来たから良いですが、普通なら丸のみにされて死んでいましたよ」


 改めて言われると、本当にヤバイ状況だったようだ。

 私はレベル三の冒険者見習い。村長たちはただの村人。まともに対応できたのはエーリカだけである。あの場でエーリカがいなければ、今頃、大ミミズの腹の中にいたかもしれないと思うとゾッとする。

 私はエーリカを見て、頭を撫でる。

 急に頭を撫でられたエーリカは、眠そうな顔をしながら私を見つめる。

 それを見たレナが、「話をしている途中でじゃれ合わない!」と余計にプリプリしてしまった。


「私だって口やかましく言いたくはありませんが、冒険者の命を預かっている冒険者ギルドの職員です。今度からは、退治を前提に動くのでなく、時間を稼ぐなり、避難したりと命を第一に行動してください」


 私は別に好戦的であったり、英雄願望があったりする訳ではない。

 村の中で急に現れ、私たちに襲ってきたから成り行きで退治する事になったのだ。

 あんな気味の悪いミミズなんか、見るのも嫌だし触るのも嫌だ。

 本当なら家の隅に座って震えていたかったけど、なぜか退治する流れになってしまった。

 人間って、混乱すると何をするか分からないね。


「はぁー……まぁ、私もその時の現場を見ていた訳ではありません。その時の流れや状況でどうしても退治するしかない時もあります。村人が襲われるとか、魔物が好戦的に襲ってくるとかありますし……」


 レナが純粋に私たちを心配して怒っているのが分かるから、私たちも口応えせず、黙って聞いていた。


「それなのに、ギルマスったら! 直接現場を見に行ったのに注意もせず、大ミミズを買い付けたとホクホク顔で帰ってくるんですよ!」


 今度はギルマスのヘルマンに怒りの矛先が向く。

 組織の中で働いているのだ、レナも色々とあるのだろう。

 「まったく、もう!」とお怒りのレナは、溜め息をつくとわざとらしく咳払いをした。


「……んん、まぁ、危険と隣り合わせの冒険者なんです。危険を回避できる時はなるべく危ない橋を渡らないでくださいね。……本当、無事で良かったです」


 レナのプリプリしていた顔から安堵の微笑みへと変化する。

 お説教タイムが終わったので、私はリンゴの収穫の手伝いと大ミミズの討伐の報告をした。

 レナは受付の顔に戻り、真剣に私の報告を木札にメモをしていく。


「完了報告は無事に終わりました。こちらが今回の依頼料です」


 昼食代にしかならないお金を受け取る。


「昇級試験の結果は、ギルド内で検討してから報告します。また、大ミミズの買い取り金は、明日には用意できますので、昇級試験の結果と含めて、明日、もう一度来てください」


 試験に受かれば、明日から正規の冒険者である。大ミミズの買い取り金も含め、わくわくしてきた。


 報告も一段落したので、レベルの確認をする。

 一匹の大ミミズを倒した事でレベルが二も上がり、現在はレベル五になった。

 確実にレベルは上がっているが、あまり実感は湧かない。せいぜい足に豆が出来なくなったぐらいだろう。


「アケミさん、ここを見てくれますか。備考欄に見た事のない記述が追加されています」


 レナは私が分かりやすいように半透明の画面の一部を指差した。 


「すみません、私、文字が読めないんです」

「ああ、そうでしたね。……えーと、『けいじ』って書いてあります」

「『けいじ』?」


 けいじ? どういう字だろうか?

 刑事、掲示、啓示、慶事と思い出せる漢字はこのぐらい。

 どれが正解か分からない。それにどれも備考欄に記述される意味が分からない。

 そもそも何で今になって追加されたのだろうか?

 正式な冒険者に成ったからか? レベルが五に上がったからか? 大ミミズを倒したからか? 何が切っ掛けで追加されたのか分からない。


 ……あっ、もしかしたら!


 教会でお祈りをしたのが切っ掛けかもしれない。

 こんな見た目だけど、一応、聖女として強制転移された私だ。嫌でも教会とは縁が出来ている。

 それなら、神や女神に関する事から『啓示』が合うだろう。

 そう考えると、思い浮かぶ事象がある。

 たまに危険が迫った時に頭の中で無機質な声でアドバイスをしてくれるアレである。

 それが『啓示』なのだろう。

 原因が分からなくて気味が悪かったが、これでスッキリした。

 謎の声は、『啓示』さんの声なのだ。うん、そうだ。そういう事にしておこう。



 自分だけ納得した私は、レナに感謝と謝罪を伝えると、エーリカと共に冒険者ギルドを後にした。


心配で怒ってくれるレナさん。

ご褒美タイムです。

レベルも上がりました。

でも、まだ弱い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ