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アケミおじさん奮闘記  作者: 庚サツキ
第三部 炭鉱のエルフと囚人冒険者

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210/347

210 脱出 その2

 一般炭鉱夫の青年と囚人たちは、キルガーアントが支配しつつある炭鉱から脱出する為に、出入り口である坑口へ向かってしまった。

 私も一緒に向かいたかったのだが、『啓示』の指示でその場に立ち止まっている。

 『啓示』は坑口のある通路には行かず、反対の道に行けと私に言った。

 もしかしたら青年が案内する通路は危険なのかもしれない。だから『啓示』は、行くなと指示を出したのだろう。それなら、すぐにみんなを呼び留めなければいけない。

 私は遠ざかる囚人たちに声を掛けようとすると……



 ―――― 違いまーす ――――



 ……と無機質な声で『啓示』に訂正された。

 違うって事は、危険じゃないって事? じゃあ、何で駄目って言ったの?

 


 ―――― 反対の道へ行こうねー ――――



 再度、『啓示』から指示が飛ぶ。

 どんどん囚人たちが離れていく。

 もしかして私一人で炭鉱の奥へ行けって事?

 寂しくて怖いんだけど……。



 ―――― そうでーす ――――



 …………。

 ……マジですか?

 どうして!?

 もうすぐで地上に出られるのに、何で危険を冒してまで炭鉱の奥へ行かなくてはいけないの?

 理由! 理由を望む!



 ―――― ………… ――――



 『啓示』からの返事はなし。

 肝心の事はだんまりである。

 ムキーッと私はその場で地団駄を踏んで、キルガーアントを潰していく。

 

「……痛っ!?」


 一匹のキルガーアントが、私の体に這ってきてお臍辺りを噛み付いてきた。

 バチンッとキルガーアントを手で潰す。

 日本にいた時は、素手で昆虫を潰すなど絶対にしたくない行為だったが、今は親指サイズの蟻を素手で殺す事にまったく躊躇いがなくなっている。

 ワラワラと扉の隙間からキルガーアントが進入してくる。

 このまま、この場に佇んでいたら体中にキルガーアントが群がり、生きたまま細切れ肉にされてしまう。

 囚人たちの後を追って地上に出るか、反対の道に行って炭鉱の奥へ行くか、今すぐに選ばなければいけない。

 左側の通路を見る。

 すでに囚人たちの姿が見えなくなっていた。


「まったく、もうっ!」

 

 私は右側の通路へと走り出す。

 『啓示』の意図がまったく分からないが、何度も命を助けてくれた『啓示』だ。

 滅茶苦茶嫌だし、物凄く嫌だし、尋常でないぐらい嫌だけど、今回も『啓示』を信じる事にした。



 第一炭鉱は走りやすかった。

 地面はしっかりと均され、採掘道具などは壁の窪地に綺麗に置かれている。天井を支える支保も等間隔に作られ、隙間を埋める為に岩や木材をかましたりもしていない。

 嫌々労働させられている囚人と違い、働いて結果を出さないと生活が出来ない一般炭鉱夫が働いている場所だ。効率良く働けるように職場環境を整えているようである。

 特に明かりが多いのが良い。支保に埋め込まれている光の魔石だけでなく、火の点いたランタンが分かれ道に必ず置かれているので、目印としても役に立った。

 『啓示』の指示でランタンを入手する。

 坑道内で火を使うとガスや粉塵で爆発する恐れがあるが、今はもっと怖い生き物が後ろから迫っているので、火気厳禁など気にしている余裕はない。


 ワラワラ、カサカサ、ギギギィと大量のキルガーアントが私を追い駆けるように向かってくる。

 何となくだが、ブラッカスたちの方には行かず、私だけを追い駆けている気がする。

 キルガーアントに向けて、沢山魔力弾を撃ったのだ。私の魔力を覚えたのかもしれない。


「はっ!」


 後ろに腕を伸ばして、光の魔力弾を放ち、閃光でキルガーアントの動きを止める。

 その隙に逃げて、距離を稼いでいく。

 ゼイゼイ、ハァハァと息苦しく呼吸をしながら、狭く暗い坑道内を走り続ける。

 怖くて仕方がない。

 先程までは、私と同じ境遇の囚人たちが一緒にいたので、何とか恐怖に潰されずにいた。

 だが、今は一人。

 酸欠で頭がぼんやりして倒れそうになる。足が震えて止まりそうになる。

 もし坑道内がもっと暗かったら、私の精神は崩壊して、地面に座り込んで震えていただろう。

 何とか体が動かせるのは、『啓示』の声のおかげかもしれない。

 ―――― 右へ ――――、―――― 左へ ――――、―――― 斜め後ろ ――――と分かれ道の度に指示を出してくれる。

 姿形の見えない『啓示』であるが、常に指示を出してくれるので、一人っきりという意識は薄かった。そんな『啓示』のおかげで、私は恐怖に飲み込まれる事はなかった。

 未だに目的地が分からないのが、凄く不安だけど……。


 キルガーアントに向けて光の魔力弾を撃ちながら、『啓示』のナビ通りに坑道の奥へと進む。

 どんどん奥へ行くほど、坑道内の作りは雑になる。

 支保の数が減り、魔石の明かりも減り、薄暗くなっていく。

 木板で封鎖された古洞が目に付き、キルガーアントとは別に恐怖を感じる。

 『啓示』を信じて坑道内を進んでいるけど、本当に理由があって進んでいるんだよね?

 もしかして『啓示』自身、迷子になっているオチじゃないよね?

 私が疑問に思うのは仕方がなかった。

 だって、『啓示』の指示通りに進んだ先は……。


「……封鎖されてますよ」


 つい思った事が口から洩れてしまった。

 今いる場所は直進の通路である。その通路の途中で、交差させた二枚の木板が道を塞いでいるのだ。

 封鎖されていると言う事は、奥へ行っては駄目と言う事だよね。入ってはいけない場所だよね。危険だよね。だから、入らない事にしよう。



 ―――― 体当たりすれば、入れまーす ――――


 

 いや、そう言う事を言いたいんじゃないんだけど……。

 後方からカサカサとキルガーアントたちが迫る音が近づいてきた。

 うーむ、迷っている時間はなさそうだ。

 私は、『啓示』の言う通り、封鎖している木板に向けて肩をぶつけると、バキッと音を立てて、木板の根元が折れた。

 長年放置されていた所為か、木板は腐りかけていたらしく簡単に壊れた。

 これで先へ行ける。

 私は急いで奥へ進むが、すぐに足を止めてしまう。

 

「また、行き止まりなんですけど……」


 正面は完全に壁である。

 ランタンを動かして周りを見ると、左側が先程と同じように木板で封鎖されていた。

 隙間を覗くと、小部屋のような空間が広がっている。

 ここも木板を壊せばいいのだろう。

 そう思い、体当たりの体勢に入ると……



 ―――― 右へ ――――



 ……と『啓示』から指示が飛ぶ。

 右? と首を傾げる。

 袋小路の右側は壁になっている。

 何を言っているのだろうか? と理解出来ずにいると……



 ―――― 体当たりすれば、入れまーす ――――



 『啓示』から先程と同じ指示が飛ぶ。

 改めて右側の壁を観察すると、『啓示』の指示の意味が理解できた。

 右側の壁は、土や石を適当に積み上げた即席の壁であった。

 急ごしらえで作ったような壁、とても意味深で怖い。

 行きたくないが、すぐ近くまでキルガーアントの足音が迫っているので行くしかない。

 私は、木板を壊した要領で壁に肩をぶつけた。

 非常に痛い。

 だけど、迫りくるキルガーアントの恐怖に押されるように、二度、三度と肩をぶつけると、土や石の壁はガラガラと崩れた。

 周りの土や石を蹴って壊し、急いで通路の中に入る。

 ここは学校の教室二つ分ぐらいの部屋で、縦や横、斜めと穴空きチーズのように壁や地面が穴だらけに掘られていた。

 昔の切羽現場だったようである。

 切羽の真ん中辺りまで入った私は、足を止めるとゴクリと唾を飲み込んだ。

 封鎖された原因が分かった。

 地面や壁が黒い粉で汚れている。そして、奥の方では靄のように黒い粉が舞っていた。

 

 この部屋、粉塵塗れじゃない!

 

「……ッ!?」


 突然、頭がクラリと揺れ、足に力が抜けそうになる。


 も、もしかして、粉を撒き散らしているのって……ガス?


 奥の壁を中心にグルグルと上下に粉塵が舞っているのを見て、私はそう考えた。

 粉塵塗れな場所にガスまで吹いているのだ。急いで封鎖した理由が分かった。

 急いで逃げなければ。

 このままここに居たら、ガスで意識を無くしてしまう。

 いや、それだけじゃない。

 今、私の手には火の点いたランタンが握られている。もし引火するガスなら、私は非常に危ない場所に火気を持ち込んでいる事になる。これでは弾薬庫で煙草を一服する兵士の状況だ。


 通路に戻ろうとした時、カサカサと足にキルガーアントが這ってきた。

 周りの状況を観察していてキルガーアントの事を忘れていた。

 バンバンと手でキルガーアントを潰すが、次から次へと這い上がってくる。

 後ろを振り返ると、絨毯が敷かれるように大量のキルガーアントが切羽現場の中へ雪崩れ込んでくる。

 手や足でキルガーアントを潰しても追い付かず、下半身から順にキルガーアントが体中を埋め尽くしていった。


「……痛っ!?」

 

 足や腹、腕が噛まれ、痛みで地面に膝を付く。

 ガスでやられる前にキルガーアントに食い殺される。

 体を這うキルガーアントの上に別のキルガーアントが群がり、徐々に重みで体が動かなくなっていく。

 頭にもキルガーアントが群がり始め、視界が黒く染まっていった。

 私の口の中に入ろうとモゾモゾと動いているのが分かり、歯を食いしばって進入を伏せぐ。

 

 た、助けてッ!


 体を丸めながら私は心の中で叫ぶ。



 ―――― 奥にランタンを ――――



 私の願いを『啓示』が応えた。

 だが『啓示』の指示通り、こんな粉塵とガス塗れの場所にランタンを投げたら、痛みと死の恐怖で混乱している頭でもどうなるか分かる。 

 だけど迷っている暇はない。

 ランタンを持っている右手に力を込めて腕を上げるが、キルガーアントの重みで持ち上がらない。

 そこで私は、左手に魔力を溜めると、自分の体に向けて光の魔力弾を放つ。

 体を中心に強い閃光が迸り、体中に群がっていたキルガーアントが弾かれるように地面に落ちた。

 すぐに別のキルガーアントが私の体を這ってくる。

 だが、一瞬だけど腕が自由になった。

 右腕を振って、切羽の奥へとランタンを投げる。

 放物線を描くようにランタンが飛んで行くのを見ながら、キルガーアントに体中を覆われ、地面に倒れた。

 壁の手前でガシャンとランタンが落ちる。

 視界を埋め尽くすキルガーアントの隙間からランタンを中心に火が燃え広がるのが見えた。

 キルガーアントに覆われた私を食い殺すかのように、一瞬で火が迫ってくる。

 

「……ぐはぁっ!?」


 壁にぶつかったような衝撃が走り、体中を覆っていたキルガーアントが吹き飛んでいく。私の体も衝撃で浮かび上がり、体に火を纏わりながら後方へと吹き飛んでいった。



 切羽の入口まで飛ばされた私は、そのまま反対の部屋の木板を破壊し、火を纏ったキルガーアントと共に部屋まで吹き飛ばされ、ドボンッと水の中へ落ちた。

 状況が呑み込めない私は、水を飲みながら両手足をバタつかせ、溺れる。

 だが、すぐに水深が浅い事が分かり、水面から顔を出した。

 真っ暗で良く分からないので、粘着魔力弾を壁に貼り付ける。

 どうやらT字路の左側は、湧水を溜めておく部屋のようで、プールのように水が溜められていた。


 はぁー、助かった……。

 

 私の口から大きな溜め息が漏れる。

 キルガーアントが追ってくる気配がなくなった。

 地面を覆い尽くす程のキルガーアントの群れだ。先ほどの粉塵爆発で全滅した訳ではない。ただ、気配が無い事から逃げて行ったのは雰囲気で何となく分かった。


 ふぅー、ともう一度溜め息を吐く。

 キルガーアントの噛み付きと爆風の衝撃と粉塵の火で、体中が噛み傷と打ち身と火傷だらけであるが、何とか助かった。


 それにして『啓示』さん、他にやりようはなかったの!?

 大量のキルガーアントから逃げる事は出来たけど、その所為で私の心と体は満身創痍だよ。

 そこんところ、どうなの? 『啓示』さん?



 ―――― ………… ――――



 返事がない。

 いつもの事である。


 三回目の溜め息を吐いた私は、水から上がる。

 さて、地上に出るにはどうすれば良いだろうか?

 今いる部屋は、湧水が溜まっているだけの小さな部屋だ。

 爆発を起こした部屋は、行き止まりなのは先程見て知っている。

 元来た道を戻るか? と考えたが、止めておく。戻っている途中に逃げて行ったキルガーアントと鉢合わせしてしまう可能性が高いからだ。


 本当にどうしようかな?



 ―――― 右の部屋へ ――――


 

 私が悩んでいると『啓示』から指示が出た。

 今日は、沢山『啓示』と話している気がする。それだけ異常な状況なのだろう。たまには日常会話ぐらいしてくれても私は構わないよ。特に暇な時。

 私は『啓示』の指示通り、部屋から出て、爆発が起きた右側の部屋に恐る恐る入った。

 空気の流れが悪い坑道内で爆発や火災が起きたら、一酸化炭素などの有毒ガスが発生して、二次被害が起きると聞いた事がある。

 『啓示』の指示だから大丈夫だと思うけど、つい呼吸が浅くなってしまう。


「……あれ?」


 焦げたアーモンドのように死んでいるキルガーアントをパリパリと踏みながら奥へ入ると不自然な事が目の前に起きていた。

 ガスが噴き出していた壁は、爆発で崩壊して塞がっている。その崩壊した一部の壁から淡い光が射し込んでいるのだ。

 引火したガスが燃え続けている訳ではない。

 温かみのある黄色い光。

 まるで太陽のような光で、つい外に繋がったと勘違いしてしまう。

 どういう事だろう? と近づくと崩壊した壁の奥に左右に伸びる通路があった。

 その通路が光っているのだ。

 通路の壁自体が光っているのではなく、カーテン越しの太陽の光のように、壁の中からライトを照らしているように光っていた。

 暗闇一色の坑道内を照らす光に、緊張していた心が凪いでいく。

 『啓示』は、ここに連れて行きたかったのだろうと悟った。


 ―――― 左へ ―――― と『啓示』の言う通り、左右に伸びる通路を左に曲がって進む。

 大人一人が通れる狭い通路。

 岩盤を手掘りでくり抜いたような通路であるが、壁の明かりがあるので、危なげなく歩ける。

 そして、しばらく進むと……


「行き止まりなんですけど……」


 今日、何度目かの袋小路に到着した。

 


 ―――― 壁に手を ――――


 

 疲れ切って考えるのを放棄している私は、言われた通りに壁に手を付ける。

 少し湿っている壁を触ると、手を中心に金色の線が走り、模様が刻まれていく。大きな円の中に直線が走り、ミミズのような文字が浮かび上がった。

 所謂、魔法陣である。



 ―――― 魔力を注いでねー ――――



 何も考えずに壁に魔力を流すと魔法陣が強く光り出し、そして霧が霧散するように消えた。

 

「……うわっ!?」


 魔法陣が消えると同時に、目の前の壁がふっと無くなった。

 その所為で、私は前のめりに地面へ倒れてしまった。

 もしかして、さっきの魔法陣って、隠し扉のスイッチだったのかな? それならそうと事前に教えて欲しかった。

 

 擦り剥いた腕を擦りながら、私は辺りを見回す。

 隠し扉の中は六畳ほどの小部屋になっていた。


 もしかして……祠?


 小部屋を見た私は、直感的にそう感じた。

 理由は単純。

 その部屋の奥には、岩を加工した祭壇みたいなのがあったからだ。

 長方形の土台があり、その上に岩の皿が乗っている。そして、皿の中には拳大の石が置かれていた。

 その石は、炭で汚れたように黒かったが、中心が僅かに黄土色の光を発している。

 

 こんな感じの石……どこかで見たな?


 記憶を探りながら石に近づき手を伸ばす。

 ―――― 触れて ―――― と『啓示』から指示が出るが、すでに触れている。

 無意識に触ってしまったと言うよりも自然と体が動いたと言って良いだろう。

 そして、後悔する。

 黒い石に私の魔力が流れ出した。

 吸引力の強い掃除機に吸われるように、魔力が吸い出される。

 今日はキルガーアントに向けて、沢山魔力を使った。その上、魔力を無理矢理吸い取られているのだ。私の魔力はあっという間に底がつきそうになり、気分が悪くなった。

 視界が歪み、クラクラする。頭の中にガラス片が刺さるような痛みが襲う。吐き気が起き、全身から脂汗が湧き出る。

 体中の力が抜けて倒れそうになるが、石から手が離れない。

 強引に魔力を吸い取られ続ける。

 このままでは魔力が無くなり、倒れてしまう。いや、下手すると死んでしまう。


「貴様、そこで何をしている!?」


 意識が飛びそうになった時、ガツンと右頬に衝撃が走り、吹き飛ばされた。

 壁に体を打ち付けた私は、崩れるように地面に倒れる。


「その姿……お前、囚人だな」


 魔力の欠乏と殴られた痛みで顔を顰めながら上を向くと、数人の兵士が私を見下ろしていた。

 ただ兵士は兵士でも、私たち囚人を監視している兵士とは違い、仕立ての良い兵服を身に纏っていた。たぶん、位の高い兵士なのだろう。


「答えろ! 囚人のお前が、どうやって、ここに入った?」

「キ、キルガーアントに襲われ……に、逃げてきたん……です」


 薄れる意識を何とか繋ぎ止めながら、兵士の質問に答える。


「逃げて辿りつける場所じゃない! もしや、お前が盗人か?」

「……盗……人?」


 何を言っているのか、まったく意味が分からない。


「これを見てください。結界が壊れています」


 別の兵士が報告すると、私に質問をしていた兵士は、私が入ってきた通路に顔を向けた。

 今まで気が付かなかったが、私が入ってきた通路の横には、別の扉付きの通路があった。兵士たちはそこから入ってきたようだ。


「私は魔石を回収する。お前たちは、こいつを引き連れて撤収しろ。キルガーアントが来る前に引き上げるぞ!」


 質問をしてきた兵士が残りの兵士に命令を下すと、再度、私を見下ろした。


「お前には、色々と聞かなければいけないようだ」


 兵士の足が持ち上がる。

 

「班長が直々に取り調べるだろう。それまで寝ていろ!」


 兵士の靴底が目の前に迫ると、ゴツッと頭に衝撃が走る。


 そこで私の意識は途切れた。


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