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アケミおじさん奮闘記  作者: 庚サツキ
第三部 炭鉱のエルフと囚人冒険者

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201/347

201 女神の日 囚人編 その2

 宴は続いている。


「酒、買った。飲め」


 席を外していたオルガが、ドワーフ印の密造酒を三人分買ってきた。お酒は、一つのコップに入っており、オルガがクピリと飲むと私にコップを回した。


「ありがとう。でも、お金がないから私はいい」


 これ、嘘。

 昨日、服と木札を買ったが、まだ銅貨数枚は残っている。ただ純粋にお酒を飲みたくないので、言い訳として使わせてもらった。そうしたら、「リンゴと肉、代わり。遠慮、駄目」とオルガの優しさの前では、飲まざるを得ない事になってしまった。

 色は透明。匂いはゴムのような刺激臭がする。

 非常にヤバそうな匂いがして、すでに体が拒否反応を示す。

 恐る恐る舌を伸ばし透明な液体に浸けると、ビリッと電気が走る。そして、舌の先がビリビリと痛みだし、体全体が熱を帯びてきた。


「な、なに、これ……美味い不味いの前に痛い……」


 少し舐めただけでこの有様である。一口、飲んだら死んでしまうのではなかろうか。


「がっはっはっ、これ、ドワーフの酒。火酒。痛いの美味い」


 私の様子を見て、オルガが声を上げて馬鹿笑いをしている。もしかして面白半分で飲ませたな。優しさだと思っていた私の気持ちを返して。

 睨むようにオルガを見てからペーターにコップを渡す。

 ペーターは、慣れた様子でクピリと火酒を飲むと、「ゲハッゲハッ」と涙目になりながら咽た。


「あ、相変わらず……酷い酒だね」


 顔を真っ赤にしたペーターは、残りの火酒をオルガに渡す。オルガは咽る事もなく、残りの火酒を喉に流し込み、「美味、美味」と満足そうな顔をしていた。



 そんな私たちの周りに名も知らない囚人たちが集まってきた。

 「オルガ、楽しんでいるか?」「ほれ、オルガ。パンを余計に貰ってきた。食え」「あとで拳闘してこい。お前に賭けるぜ」とオルガに絡んでいく。私やペーターでなくオルガが目的らしい。人気者である。

 そんなオルガとは対照的に、一人でフラフラと散歩をしているディルクを見つけた。

 酒飲み対決をしているドワーフたちを見ては遠ざかり、自家製パイプを吹かしながら音楽を奏でている小人たちを見ては遠ざかっていく。

 誰とも関わらず、一人のんびりと過ごすディルクを見て心が和む。


 うんうん、分かる、分かる。


 私も日本ではあんな感じだった。

 ぼっちは楽しいよね。気楽だよね。

 今では色々な人と話したりしているが、私の基本はぼっちである。何をやるにも一人で事足りるし、一人で行動した方が気楽で楽しい。まぁ、ディルクが私と同じぼっち気質かどうか分からないけど……。

 傷だらけで強面のディルクであるが、その反面コミュ力は高い。同じ班の囚人とは上手くやっているし、あのブラッカスとも仲良くなったと聞いた。こんな私にも気軽に話し掛けてくれる。

 そんなディルクだ。たまたま一人でのんびりとしているだけなのだが、何となく目が離せなくなった。

 あっちを見ては離れ、こっちを見ては離れて、徐々に広場から遠ざかっていく。そして、囚人宿舎を囲う木柵に沿ってゆっくりと歩いていった。

 このままでは兵士に不審者扱いされて怒られそうだ。

 そう思った私は、ディルクの元に行こうと立ち上がると……。


「ここに居たか。探したぞ」


 ……と、誰かに呼び止められてしまった。

 オルガに集まっていた囚人たちは、その声の主を見て、気配を消すように遠ざかっていく。

 無理もない。相手はルドガーと子分Aの二人だ。私もどこかに行きたかったが、彼が私の元に来る理由を分かっていたので留まる事にした。

 ちなみにディルクは、目を放した隙にどこかへ行ってしまった。


「ルドガー、来るな。おで、お前、嫌。どこか、行け」


 誰にでも優しいオルガであるが、ルドガーに対しては感情を隠さずに嫌な顔をしていた。ペーターも居心地悪そうだ。

 ルドガーは誰にでも嫌われているな。


「うるせーぞ、オルガ! 俺だって、お前のケツに興味はねーよ!」


 オルガに唾でも吐く勢いで怒鳴ると、ルドガーは私の方を向いた。


「おっさん、昨日からずーっと待っていたんだ。頼んでいたのは出来ているんだろーな」


 これが人に物を頼んだ態度だろうか? 性癖云々の前に、その性格を直して欲しい。


「昨日は作業場が違っていたから渡せなかったんだ。文句を言うな……って、それよりも、なんでブラッカスたちまで居るの?」


 ルドガーの後ろには、ニヤニヤと気味の悪い笑顔をしているブラッカス一味が待機していた。

 あえて見ないようにしていたが、つい我慢ならずに聞いてしまった。


「お前にもう一枚、絵を頼もうと思ってな。ついでにルドガーがどんな絵を頼んだか気になって見にきた」

「筋肉馬鹿のてめーには見せねーよ」

「ケチケチ言うな。俺のは見せただろ」

「勝手に見せにきたんだろー!」


 やんややんやとブラッカスとルドガーが睨み合いながら楽しそうに言い合っている。この二人、結構、仲が良いのかもしれない。

 そんな二人にうんざりした私は、さっさと革袋から二枚の木札を取り出て渡した。

 その木札を見たルドガーと子分Aは、「おおっ!」と目を見張る。脇から覗き見したブラッカス一味とペーターは、「うげっ」と眉を寄せる。種族が違う所為か、オルガは興味なさそうであった。


「おっさん……お前、天才か?」


 口の悪いルドガーからお褒めの言葉を賜った。

 それもその筈、久しぶりの男性の絵という事で、楽しく描いた自慢の作品だ。

 ルドガー用に描いたギルマスをモデルにした絵は、今にも汗の臭いが漂いそうな暑苦しい作品に仕上げた。子分A用に描いたラースをモデルにした絵は、キラキラ増し増しの俺様作品に仕上げた。

 やはり、私は女性よりも男性を描くのが好きそうだ。


「気にいった。上乗せしてやる。ほれ、報酬だ」


 そう言うなりルドガーは、大銅貨二枚を私に渡した。その際、手をニギニギとされた。子分Aからは通常の金額を貰った。大銅貨一枚多いが、手を握られたので気にせず貰っておく。

 今まで嫌な顔をしていたブラッカスだが、ルドガーと子分Aに描いた木札を興味深そうにジロジロと見ている。もしかして、開花してしまったのだろうか?


「なぁ、俺の絵は描けるか?」

「はぁ?」

「だから、俺を模した絵を描いてくれと言っているんだ」


 なぜかブラッカス一味の取り巻きたちから「おおっ!」と感嘆の声が響く。逆にルドガーが嫌な顔をした。

 仕方が無いので地面にブラッカスをモデルにした簡単な絵を描いてみた。


「ポポタンじゃねーか!」


 ポポタン……どこかで聞いたな。


 「もっとしっかり見ろ」とブラッカスが上着を脱いで、筋肉を見せてくる。勘弁してくれ……。

 その後、「もっと恰好良く」「もっと凛々しく」「もっと筋肉を」と何度もリテイクされる事五回目、ようやく満足いく絵を描く事が出来た。

 その絵を基準にブラッカス一味から五人分の依頼を受ける羽目になってしまった。ブラッカスをモデルにした絵を……。とほほ……。

 ちなみにペーターにも「女性も描けるけど……いる?」と営業してみたら、「ぼ、僕には妻と娘がいるからいらない」と断られ、胸がジーンとなった。頼りなさそうなペーターだが、立派な父親で感動する。なお、「逃げられたけど……」と小声で呟いたのは聞かなかった事にした。



 なぜかこの後もルドガーとブラッカスが居ついてしまった。

 私の左右にルドガーとブラッカスが居る。なに、このカオスな状況。

 ペーターとオルガは、子分と取り巻きたちと楽しそうに酒を飲んでいる。私もそっちに交じりたい。


「おっさん、俺の腹も治ってきたし、あとで殴り合いしようぜ」


 ルドガーが良い案だと言うように拳闘をしている場所に親指を立てる。


「絶対に嫌! 痛いのは嫌いだ」

「お前、まったく分かってねーな。それが良いんじゃねーか。殴るのも気持ち良いし、殴られるのも気持ち良いんじゃねーか」

 

 どっちも理解できない。


「俺が相手してやるぜ。また飯を食えなくしてやる」

「お前の筋肉を殴っても面白くねー」


 私を挟んでブラッカスとルドガーが言い合いを始める。


「ああー、煩い! もっと、まともなスポーツ……運動や競技はないの!?」

「競技って何だ?」

「運動? 筋肉を鍛える事か?」


 二人の反応から察するに、この世界には私が思っているスポーツはなさそうだ。

 そもそも娯楽の少ない世界である。その日その日を稼いで生きていくので精一杯なのだ。スポーツをしている時間は無いのだろう。ただ、拳闘もある意味スポーツなので、まったく無い訳ではなさそうだ。


「おっさんが考えているようなものは、貴族がやるような事だ」

「あいつらは馬に乗ったり、狩りをしたり、石を使って陣地取りをしていると聞いたな。何が面白いんだか」


 ああ、貴族ね……やってそうだね。


「お前、色々と知っていそうだな。この場で何か出来る事はないか?」


 期待に満ちた顔をするルドガーに応えるのは癪だが、このままでは拳闘に参加されそうなので、必死に考える事にした。

 スポーツと聞いてすぐに思いついたのは、野球とサッカーだ。

 道具はその辺の木の棒や石で代用すれば出来そうだが、一からルールを説明して、訳が分からずやらせても面白いと思わないだろう。

 それならもっと単純なスポーツが良いはずだ。

 例えば、砲丸投げや円盤投げのように大きな石を遠くに飛ばして、飛距離が高い人が優勝みたいなものにしてみようか。

 うーむ……これだとブラッカスみたいな筋力のある囚人が有利になってしまう。

 やはり、拳闘みたいな格闘系が良いのかな?

 でも、痛いのは嫌だし……。

 それなら……。


「……相撲?」


 ……と、つい言葉が出てしまった。


「スモー?」

「スモーとはなんだ?」


 やばっ、二人が食いついてしまった。


「えーと……土俵……円形の競技場で二人の選手が組み合って、地面に倒したり、場外に押し出して勝敗を決める競技」


 相撲の「す」の字も知らない二人に簡潔で分かりやすく教えていく。


「殴ったり、蹴ったりしないのか?」

「暴力はなし。体全体を使って、相手を押したり逸らしたりする」


 張り手については無しの方向にしておく。痛いのは嫌だからね。


「体全体……力と力のぶつかり合いか」


 ブラッカスの片眉が上がる。


「基本、体格が良い方が有利だけど、体格や力だけが全てじゃない。体が小さくても、やり方によっては勝てる。……あとは、裸で行う」


 「裸」と聞いて、ルドガーの片眉が上がる。


「裸と言っても、廻し……褌……えーと、下着姿だよ」


 廻しも褌も説明し難いので、パンツ一丁にしておこう。いや、別に服を着たままでも良いか。本格的に相撲のルールに沿ってやる必要はない。ここは異世界だし、普及したい訳じゃない。


「やり方は分かった。早速、やってみよう」


 そう言うなり、ルドガーはパパパッと服を脱ぎ出した。


「な、何で全部脱ぐ!? パンツぐらい履け!」

「二人の男が裸になって、肌と肌をぶつけながら、押したり出したりするんだろ? 楽しそうだぜ」


 人の話を聞け!


「がっはっはっ、力と力のぶつけ合い。俺に相応しい運動だ」

「ブラッカス、お前もか!」


 素っ裸になったブラッカスは、「鍛え抜かれた体。見られる為にある」と訳の分からない事を言いながら、素っ裸のルドガーと対峙した。

 はぁー、仕方が無い。

 この二人に言っても、都合の良い部分しか耳に入らない。

 痛む頭を押さえながら、二人の周りに土俵用の競技線を木の棒で描いていく。

 立ち合いの二人は、お互いの顔を睨みながら腰を落とす。

 ブラッカスは既に地面に両拳を付けている。ルドガーは、ブラッカスの目を見ながら、片手だけ地面に付けて、様子を見ていた。

 一応、始まりの方法は聞いていたようだ。素っ裸だけど……。

 しばらく、睨み合いが続くと、ルドガーが両手を地面に付いて突進した。

 だが、体の低いブラッカスの方が速く、低い姿勢のままルドガーの懐に飛び込む。

 素肌同士がぶつかり、バチンッと痛々しい音が響き渡る。

 全身の筋肉を膨らませたブラッカスの勢いは止まらず、腰にしがみ付いたまま、あっという間にルドガーを競技線まで押し出した。


「寄り切り、ブラッカスの勝利」


 私が宣言をすると、「今のはなし。初めてだから練習だった」とルドガーが再戦を希望する。

 

「何回でも来い。蹴散らしてやる」


 ブラッカスがやる気なので、二回戦が始まる。

 今回も開始と同時にブラッカスが低い体勢で突進するが、予想していたルドガーは横へと移動し、ブラッカスを躱す。そして、急いで後ろに回ったルドガーは、ブラッカスの尻を押して競技線の外へと出した。


「送り出しかな? ルドガーの勝利」


 私が宣言すると、「今のはなし。次で決着だ」とブラッカスが食らい付く。


 そして、三戦目。

 駆け引きなどせず、お互い抱き着いて、体全体を使って押し合っている。

 教えていないのに、ルドガーは張り手の要領で、臍あたりに顔を埋めているブラッカスの顔を引き剥がそうとする。

 

「お前のイチモツも見飽きたぜ。これで終わらせてやる」


 ルドガーのお腹に埋めていたブラッカスが、全身の力を使ってズルズルとルドガーを競技線近くまで押していく。

 素足が地面を擦りながら踏ん張るルドガーだが、急にブラッカスが後ろに引いた事により、体勢を崩し、前に倒れてしまった。


「えーと、何だろう? まぁ、いいや……ブラッカスの勝利」


 ブラッカスは嬉しそうに腕をカポカポしながら雄叫びを上げる。一方のルドガーは、悔しそうに地面に倒れていた。


「何度やっても俺には勝てん。俺様、最強。誰か俺に挑む奴はいないか? 誰でも相手してやるぞ。俺に勝ったら、熊の頭をくれてやる」


 調子に乗ったブラッカスは、調理人が丁寧に焼いている熊の頭を景品にしてしまった。「勝手に決めるな!」と言う調理人の言葉は耳に入っていない。

 景品に釣られたのか、距離を開けて様子を見ていた他の囚人たちは、次々と服を脱ぎ、ブラッカスに挑み始めた。

 殴る蹴るの暴力的な行為が無い分、格闘を苦手とするひ弱そうな囚人も参加している。

 そんな相手にも全力を出すブラッカスは、千切っては投げ、千切っては投げと、有象無象の囚人たちに勝ち続けた。

 その頃になれば、賭けをする者まで出てくる。

 拳闘場と同じになってしまった。


 日本の皆さん。ごめんなさい。

 大事な国技を変ね感じで異世界に教えてしまいました。

 みんな楽しそうになんちゃって相撲をしているので、大目に見てください。


「おで、出る。熊の頭、ほしい」


 無双のブラッカスの前にオルガが立ち上がった。無論、スッポンポンだ。

 茶色い肌の歪な肩をしたオルガの長身は私よりも高い。一方、ブラッカスは低身長のダルマのような姿。トドとアザラシが並んでいるみたいである。


「オルガか……お前とは一度、相手してみたかった。来い!」


 嬉しそうに立ちはだかるブラッカスであるが、人間ではないハーフオークのオルガの前では、子供のように負けてしまった。

 やはり人間とハーフオークでは基本性能が違うようで、ブラッカスがタックルをするようにオルガの腰に突進したが、オルガを後ろに下がらせる事が出来ず、そのまま横に払われ、ゴロゴロとボールが転がるように倒れてしまった。

 観戦していた囚人から歓声が上がる。ブラッカスの取り巻きからは、悲痛の叫びが上がった。


 そんなオルガであるが、三回の防衛戦の後、二足歩行の馬と対決して負けてしまった。

 なんちゃって相撲の優勝者は二足歩行の馬に決まる。

 そんな馬は、肉は食わんという事で、景品の熊の頭をオルガに譲ると、「ブヒヒーン」と一鳴きしてから立ち去っていった。

 急遽、景品を手に入れたオルガは、嬉しさのあまり雄叫びを上げる。そして、心優しいオルガは、相撲参加者と共に丁寧に焼かれた熊の頭を食べるのであった。

 フォークで頬肉を剥がして食べる。スプーンで目ん玉を取り出し、飴玉を舐めるように口の中で転がす。そして、ハンマーとノミを使って骨を砕き、頭蓋骨の中で蒸焼きになった脳みそを囚人たちと黙々と食べていた。

 一応、私も呼ばれたが、丁重にお断りした。



 相撲も一段落し、熊の頭が骨だけになった頃、空を覆っていた黒い雲から雨が降り始めた。


「おいおい、こんな時に雨かよ」

「ついてねーな」

「どうせなら汚れた体を洗っちまうか」


 相撲で土塗れになった囚人たちは、再度裸になり、雨を使って体を洗い始めた。

 頼もしい人たちだ。


「お前たち、今すぐに宿舎に戻れ! 早く、早く!」


 雨が強く成り始めた頃、兵士たちが木柵を越えて、囚人たちを宿舎に入れていく。

 囚人たちはブーブーと文句を言うが、兵士の言葉に従い、素直に平屋の中に入っていった。


 どうも変だ。

 囚人を監視していた兵士は十人程度だった。

 それが今では数十人に増えている。

 雨が降ってきたからお祭りを中断した訳ではなさそうだ。


「アケミ・クズノハ、お前もここにいたのか」


 兵士の中にフリーデもいた。

 そんなフリーデは私を見つけると、「お前も小屋に戻れ……いや、私も一緒にいく」と囚人宿舎から連れ出した。


 広場には、数人の兵士たちが地面を見ながら、ウロウロとしている。

 炭鉱の方にも選炭場の方にも兵士の影が見える。

 『女神の日』で休みだった兵士たちが駆り出されているようだ。

 間違いなく何かがあった。

 無言で私と並行しているフリーデに理由を尋ねたかったが、険しい顔付きになっているフリーデに尋ねる事が出来なかった。

 そして、雨が降りしきる中、リディーの小屋まで辿り着く。


「私たちの許可があるまで小屋から出るな」


 フリーデに釘を刺された私は、押し込まれるように小屋に帰ってきた。


 こうして、私にとって二回目の『女神の日』は、訳も分からずに終わったのである。


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