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アケミおじさん奮闘記  作者: 庚サツキ
第三部 炭鉱のエルフと囚人冒険者

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187 幕間 ティアの昇級試験 その3

 バリバリとホーンラビットを美味しく食べていた草刈マンティスは、頭を食べきると死骸を地面に捨て、クルリとティアさんたちの方を向きました。

 鎌の掃除をしていたもう一匹の草刈マンティスも頭だけティアさんの方を向きます。


「えーと……何であたしたちを見るのかなー?」

「あたしたちに近づかないでくれるかなー?」

「鎌構えて、体を揺らさないでくれるかなー?」


 二匹の草刈マンティスは、三人のティアさんに近づくと、戦闘態勢に入りました。

 どうもティアさんのかけた幻影魔術が解けてしまったみたいです。

 そして、魔術をかけたティアさんたちを餌認定したみたいです。


「ちょっと、あんたたち、見てないで助けてよー! こいつら、何を考えているのか分からなくて、すっごく怖んだからー」

「助けても良いが、その時は、昇級試験は失格になるぞ」


 三人で抱きつくティアさんにギルマスが無下に答えます。


「何でそうなるのよー!?」

「当たり前だ。ホーンラビットを討伐する為に呼んだ草刈マンティスだろ。そいつらの後始末も討伐の一環になる。自分で蒔いた種だ。冒険者足るもの事故処理もしっかりやり遂げろ」


 ギルマスは、腕を組んでティアさんたちに一流の冒険者について語り始めますが、草刈マンティスに睨まれているティアさんは、震えるだけで聞いていません。


「本当に駄目なら言え。その時は、俺が片付けてやる」


 それ、見守り役の私とエーリカ先輩の役目なのですが……。


「あーん、もう! やってやるわよー!」


 そう言うなりティアさんたちは、横一列に並ぶと、「ぶんしーん!」と叫びます。今回は、余裕がない事から音と炎の演出はありません。

 ティアさんたちは、一人一体の分身体を作り、全部で六人になりました。

 突如、人数が増えたティアさんを見た草刈マンティスは

動きを止め、首を動かし、大きな目でティアさんたちを観察します。


「二人はこの場に残って時間稼ぎ。残りはあたしに続けー!」


 そう言うなり、四人のティアさんは、再度、森の中へ入っていきます。残された二人のティアさんは、「ちょっとー!?」と叫びました。


「出遅れたー!」

「あたしたち二人で何が出来るのよー……うわっ、危ねッ!」


 森に向けて愚痴を吐き捨てていたティアさんに草刈マンティスの鎌が襲い掛かりますが、距離があいていたので最悪の事態は回避します。


「人が話しているのに急に襲い掛からないでよー!」

「さっき美味しい物を食べさせた恩を忘れたのー? この恩知らずカマキリー!」


 ティアさんたちは、悪態を吐きつつ、執拗に攻撃してくる草刈マンティスの攻撃を空を飛び回りながら躱していきます。


 それにしても人間と同じ大きさのカマキリが体の小さな可愛い妖精を襲っているのに、ティアさんの態度の所為か、何だか間抜けな感じがして緊張感がありません。

 そんな状況ですが、私自身の役目をしっかりとやらなければいけません。

 私は、いつでもティアさんを助けられるように体中に魔力を循環させていきます。

 ちなみに私と同じ役目のエーリカ先輩は、ティアさんの様子を見ながら欠伸をしているだけでした。

 

「しつこいカマキリめー。これでも食らえー! 『幻夢』!」


 ティアさんが叫ぶと、一匹の草刈マンティスの顔に灰色の靄が纏わりつきます。

 しかし、その靄はすぐに霧散して消えてしまいました。


「お腹が膨れて抵抗力が上がっているわー!?」

「ただ戦闘体勢に入って集中力が上がっているだけよー……って、飛んできたー!」


 上空に退避していたティアさんに向けて、翅を広げた草刈マンティスが飛び上がります。


「『幻身』!」


 すぐに別のティアさんが、体のぶれる魔術を発動させ、飛び上がった草刈マンティスの狙いを逸らします。


「これならどうだー! 『幻影』!」


 ティアさんが腕を伸ばすと、草刈マンティスの顔に黒い靄が覆います。黒い靄はすぐに消える事はなく、しっかりと纏わりつきました。


「よっしゃー、成功したー! これでカマキリちゃんの視界を奪った……って、何で狙い通りに襲ってくるのよー!?」


 視界を奪われた筈の草刈マンティスは、今までと変わらず逃げ惑うティアさんを追いかけては、鎌を振っています。

 たぶん、触覚の働きでティアさんの位置が分かるのでしょうね。こういう所が昆虫の恐ろしい所なのです。


「もう、しつこーい!」

「二人の力で怯ませてやるわよー」


 二人のティアさんが草刈マンティスから距離を置くと、お互いに向き合い「『幻空』!」と叫びます。すると、ティアさんたちの間に炎の壁が現れました。

 地面から立ち上る炎からは熱を感じません。空気を焼く音もしません。虚像の炎です。

 そんな見た目だけ立派な炎に一匹の草刈マンティスは怯み、後退し始めます。

 

「はっはっはっ、怖いだろー、怖いだろー」

「燃えちゃうぞー。焼けちゃうぞー」


 ジリジリと後退する草刈マンティスを嬉しそうに近づくティアさんたち。楽しそうで何よりです。

 ただ、草刈マンティスはもう一匹いるのを忘れているようです。


「ティアさん、危ない!?」


 私が叫ぶと同時に、草刈マンティスの鎌が伸びます。


「ぐわー、捕まった!?」

「炎が怖くないのー……って、視覚を奪っていたんだったー!」


 幻影魔術で視覚を奪われている草刈マンティスに、虚像の炎を認識する事は出来なかったようです。その所為で二人のティアさんは、草刈マンティスの両鎌に捕らわれてしまいました。


「ちょっと、ちょっと、顔、近い。顔、近い!」

「うわー、食われるー!?」


 まずいと思い、私は魔力を集めた右腕を持ち上げます。そして、風の刃を飛ばそうとする瞬間、またもエーリカ先輩が私の前に移動して、魔法攻撃を中止させました。


「先輩、さすがに今回は助けないと!」

「問題ありません。間に合いました」


 私の言葉を遮るエーリカ先輩は、森の方へ視線を向けます。


「待たせたわねーって、ヤバイ状況じゃない!?」


 森から現れたティアさんは、今にも草刈マンティスに食べられそうになっている二人のティアさんを見て、目を丸くします。


「そうよー! 絶体絶命よー」

「絶望の淵! 打つ手なし! 万策尽きたー! 助けてー!」

「あたしに任せなさーい! お前たち、出番よー!」


 森から出てきたティアさんの背後から緑色、黄色、土色のスライムが地面を滑るように出てきます。その姿を見たエーリカ先輩は、「スライムですか……駄目そうですね」と呟きました。


「お前たち、あいつが侵入者よー。縄張りを荒らしたあいつらを蹴散らしなさーい!」


 幻影を見せられているスライムたちは、一直線に草刈マンティスに向かって行きます。

 ティアさんたちを捕らえている草刈マンティスに、二匹のスライムが飛び上がり、体当たりをしました。

 パンパンに膨れたお腹にぶつかったスライムは、傷を与える事も出来ず、逆に跳ね返されます。

 草刈マンティスは触覚をピクピクとさせると、地面に落ちた黄色と茶色のスライムに向けて、四本の脚を動かし、ブチュブチュと踏み潰します。


 もう一匹の緑色のスライムは、虚像の炎で後退した草刈マンティスに向かいました。こちらも草刈マンティスに近づくと、飛び上がり、体当たりをします。ただ、スライムがぶつかる手前で、鋭い鎌が伸びて、輪切りにされてしまいました。

 本来、草刈マンティスの鎌は、相手を捕まえるだけの腕であり、剣のような切れ味はありません。それなのに、簡単に切れてしまうあたり、スライムの(もろ)さが凄く分かりました。


「ああ、あたしが連れてきたスライムちゃんがー!?」

「何の役にも立たない魔物を連れて来ないでよー」

「もっと強い魔物を……うわー、マジで食われるー!?」


 視覚を奪われた草刈マンティスが、小さな口を広げて、右鎌に捕らわれているティアさんを引き寄せます。


「話は聞かせてもらったわー。今度はあたしの出番ねー」


 森から別のティアさんが現れました。

 

「カタツムリちゃん、美味しそうな肉が目の前にあるわよー。動けなくしてから、食べて良いわよー」


 ティアさんが連れてきた二匹の魔物は、化け蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる、人間の膝丈ほどもある大きなカタツムリの魔物でした。

 水色に発光している化け蝸牛は、ネズミが走るような速度でティアさんの横を通り過ぎます。

 テカテカと地面を濡らしながら草刈マンティスの元まで近づいた化け蝸牛は、今にもティアさんを食べようとする草刈マンティスの顔目掛けて、ビュビューと粘液を飛ばしました。

 化け蝸牛の口から飛び出した粘液は、初めは透明ですが、空気に触れると泡が立ち、そして固まります。

 そんな粘液を腕や顔に掛かった草刈マンティスは、ティアさんたちを離し、固まった粘液を鎌を使って剥がそうとします。


「ぐえっ!?」


 右鎌に捕らわれていたティアさんは、鎌と一緒に化け蝸牛の粘液をもろに浴びてしまい、そのまま地面に落下してしまいました。


「ちょっとー、泡が固まって、体が動けなくなってきたー。助けてー!」

「今、行くぞー!」


 粘液で固まりつつあるティアさんの叫びを聞いて、残り三人のティアさんが駆けつけます。


「うわー、想像以上に固いー」

「ナイフで削らないといけないわねー」

「ちょっと、ちょっと、もう一匹のカマキリちゃんがこっちにくるよー!?」


 もう一匹の草刈マンティスが翅を広げながら飛んで来ます。

 ティアさんたちは、粘液塗れのティアさんをズルズルと地面を引きずって退避します。

 

「カタツムリちゃん、そいつも固めて……ああ、やられたー!」


 飛んできた草刈マンティスは、着地と同時に鎌を振るい、一匹の化け蝸牛を一刺しします。殻ごと潰れた化け蝸牛は、原型が分からないような物体になってしまいました。

 化け蝸牛という魔物は、口から吐き出す粘液は非常に危険なのですが、本体がとても脆く、さらに火に弱い為、低級の冒険者でも討伐可能な魔物なのです。


 スライムは簡単に潰され、化け蝸牛は一匹を失いました。

 草刈マンティスは、まだ二匹います。

 このまま無事に討伐が出来るのでしょうか?

 私が不安に思っていると、草刈マンティスの後方の森から別のティアさんが飛び出してきました。


「草場の陰から様子を見ていたわー。今度は、あたしの出番ねー! お前たち、大事な仲間を殺した仇を……って、話を最後まで聞けー!」


 ティアさんが話している途中で、森から二体の黒い影が飛び出してきました。灰色の毛に鋭い牙を生やした四足歩行の魔物は、スモールウルフです。

 通常の犬よりも一回りも二回りも大きい二匹のスモールウルフは、粘液で苦しんでいる草刈マンティスに飛びかかります。

 一匹は細い胴体に、もう一匹はパンパンに膨らんでいるお腹に噛み付きました。

 噛み付かれた草刈マンティスは、痛みで暴れます。

 細い足でバタバタと動きスモールウルフを振り払いますが、強く噛み付いたスモールウルフは、体を振られながらも離れる事はありません。

 

「もう一匹が逃げようとしているわー」


 形勢不利と悟ったもう一匹の草刈マンティスが翅を広げて後退していきます。


「カタツムリちゃん、逃がさないでー」


 今にも飛び立とうとする草刈マンティスに、化け蝸牛の口から粘液が飛び出し、広げた翅と足に掛かり、動きを封じます。

 草刈マンティスの胴体に噛み付いていたスモールウルフは、口を放し、もう一匹の草刈マンティスに駆けつけます。そして、逃げる事も出来なくなった草刈マンティスのお腹に噛み付きました。

 粘液で思うように動けない二匹の草刈マンティスは、スモールウルフの攻撃から逃れられる事が出来ず、一方的にやられていきます。

 スモールウルフは、パンパンに膨らんでいる草刈マンティスのお腹を噛み千切り、傷口を広げていきます。そして、体ごとお腹の中に入り込み、内部を破壊し始めます。

 その頃になると、草刈マンティスは地面に倒れ、ドロドロの液体を垂れ流しながら、虫の息になっていました。



「うーむ……凄い、光景だな。元の依頼が何だったのか分からない」


 黙って見守っていたギルマスが唸ります。

 緑色の血で汚れきった二匹のスモールウルフは、草刈マンティスのお腹から飛び出し、ブルブルと体を振って汚れを落としています。

 化け蝸牛は、ウロウロと周りをうろつき、地面を粘液塗れにしています。

 本来の目的であったホーンラビットの死骸は、潰れたスライムと共に土塗れになっていました。

 その光景を満足そうに五人のティアさんが見ています。


「これで本当に依頼達成ねー」

「大変だったけど、良い依頼だったわー」

「粘液が全然取れないんだけどー」

「誰かナイフ持ってなーい?」

「元の一体に戻ったら、消えるじゃないかなー?」


 無事に依頼を達成したティアさんたちが私たちの方へ集まってきます。


「お前たち、集まる前に魔物たちを森の奥へ戻してこい。また魔術が切れて、襲ってきたら厄介だ」


 私たちの元に来たティアさんたちは、ギルマスの指示を聞いて、また魔物たちの元へ戻っていきます。

 その時、私はある事に気が付きました。


「ねぇ、ティアさん。最大六人に分裂しましたよね。まだ、一人戻って来ていないティアさんがいるんですが?」


 森の入口にいるティアさんは五人だけです。もう一人いるはずです。

 まだ、草刈マンティスを相手にする魔物を探しているだけなら良いのですが、もしかしたら、命の危険に遭っているかもしれません。


「大丈夫、大丈夫。すぐ近くにいるわー」


 一人のティアさんが森の方に指を指すと、言葉通り、残りのティアさんが帰ってきました。


「主役の登場! お前たち、待たせたわねー……って、すでに終わってるじゃない!?」


 お腹を食い破られて絶命している草刈マンティスを見て、帰ってきたティアさんは、出番が無くなってガッカリします。

 

「折角、面白い魔物を見つけて連れて来たのに……」


 心底残念がるティアさんは、トボトボとみんなの元へ合流します。


「あたしのワンちゃんが止めを刺したのよー」

「あたしのカタツムリちゃんが動きを止めたのよー」

「あたしのスライムちゃんも良い働きをしたわよー」

「嘘を言うなー!」

「それで、何の魔物を見つけてきたのー?」


 ギルマスの指示を完全に忘れているティアさんたちは、連れてきた魔物たちを放置しながら話し始めました。

 その様子を見ているギルマスとエーリカ先輩は、やれやれと首を振ります。


「あたしが連れて来たのは、面白系よー。おいでー……」


 一人のティアさんが森の入口に戻り、声を掛けます。

 しばらくすると、草木を分けながら、ノシノシと歩く変な物体が現れました。

 ずんぐりむっくりとした白い体。帽子を被ったような赤色の頭。太く短い脚は生えていますが、手は無く、耳も目も口もありません。

 二足歩行で歩いているのに人間の形をしていません。

 その魔物は……。


「マタンゴ!?」


 ティアさんが連れてきたのは、キノコの魔物でした。

 

「妖精の嬢ちゃん、何てものを連れて来たんだ!」


 ギルマスが叫ぶのも無理はありません。

 マタンゴ自体、特に強い魔物ではありません。斬撃に弱く、炎に弱いので、簡単に討伐する事は可能です。

 ただ、マタンゴには厄介な性質があるのです。

 

「なーに、そんなに焦っているのよー。変な形をしているけど、良く見ると可愛い姿をしているわよー」


 そう言うなり、ティアさんはポンポンとマタンゴの傘を触ります。


「ティアさん、刺激を与えたら駄目です!」


 私が急いで注意しますが、時すでに遅く、マタンゴの体が見る見る内に膨れていきます。

 

「えっ、えっ、何!?」


 驚くティアさんの横でマタンゴは、パンパンに膨らんだ体から桃色の胞子を吹き出しました。

 

「皆さん、絶対にあの粉を吸い込んでは駄目です。手で口を押えて、距離を空けてください!」


 私は急いで、口と鼻を手で押さえます。

 私の言葉を聞いたエーリカ先輩とティアさんたちも押さえます。

 ただ、すぐ横にいたティアさんはマタンゴの胞子をもろに受け、パタリと地面に落ちてしまいました。

 

 マタンゴは、外部に刺激を受けると体中から胞子を噴出するのです。

 この胞子が厄介で、吸い込むと毒、麻痺、睡眠、発狂、衰弱と様々な異常状態を起こします。

 事前に異常状態の耐性を高めておくか、異常状態を直す薬を用意しておかなければいけません。

 残念ながら、今の私は異常状態を直す薬を持参していません。エーリカ先輩も然りです。様子を見るにギルマスも持ち合わせていないでしょう。

 つまり、私たち全員がマタンゴの胞子を吸ってしまうと、異常状態を起こし全滅してしまいます。


「先輩、私たちは風下にいます。呼吸を止めながら、ティアさんたちの所に移動しましょう」


 胞子で倒れたティアさんが気になりますが、今は助けに向かう事は出来ません。

 私とエーリカ先輩は、焦らずゆっくりとマタンゴから距離を空けつつ、移動して行きます。

 五人のティアさんが集まっている場所は、風上になっています。

 魔物と言うだけあり、スモールウルフと化け蝸牛もティアさんたちの近くに避難していました。

 私たちもそこまで行けば安全です。

 その後は、私の魔法で倒すなり、エーリカ先輩の魔術で倒すなりすれば良いのです。

 そう思っていると、口を押えているエーリカ先輩が、私の服をクイクイと引きました。


「あれは、どうしますか?」


 エーリカ先輩の可愛い指が、先程まで私たちがいた場所を指差します。

 そこには、地面に片膝をついて項垂(うなだ)れているギルマスがいました。



 ギルマス、何をやっているんですか!?



 ギルマスの周りには、マタンゴの胞子が漂っています。

 つまり、ギルマスは、胞子を吸って異常状態に掛かってしまったようです。

 本当に元冒険者なのか疑問に思う程の体たらくぶりです。

 そんなギルマスは、ゆっくりと立ち上がると、背中に背負っていた大剣を抜きました。

 ギルマスの様子から見るに、毒や麻痺といった異常状態ではありません。

 獣のように荒げる呼吸。

 涎を垂れ流す口元。

 焦点が定まっていない赤く染まった目。


 暴走、または、狂人化。

 それがギルマスが掛かった異常状態です。

 元銅等級冒険者の狂人化……寄りにも依って、最悪の異常状態です。



 本当に、何をやっているんですかっ!?


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