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ラミルがシールとレイラを連れてデルガで王宮の中庭に現われた。
亡骸をどこかへ運ぼうとしている兵士を制してナナのもとへと駆け寄ると、レミルに聞いたように王の剣を抜き、ナナの胸の上に置いて指輪を握った左手を剣に添えて呪文を唱えた。
「リバエス!」
指輪を握り締めた左手と剣が輝き、その輝きがナナの体を包んでいく・・・腹部の傷がケールを施したように消えて無くなり、青白い頬に赤みがさしてくる。
剣に添えている左手に、胸の上に置いた剣を伝ってナナの心臓の鼓動を感じるようになると、まるで眠りから覚めたようにナナは目を開け、ラミルの顔を見て声をあげた。
「ラミル・・・私はいったい・・・確か敵にやられたはずなのに生きているの?」
ラミルはナナから左手と剣をはずすと、力いっぱい抱きしめた。
「そうだよ、ナナ・・・君は生き返ったんだ、良かった、本当に良かった・・・」
「ラミル、そんなに強くしたら痛いよ、それにレイラちゃんの前で・・・恥ずかしいよ」
レイラは2人を見てにっこりと微笑む。
「お兄ちゃん、まだ他にも生き返らせてあげなきゃいけない人がいるでしょ、早く!」
「そうだな」
ラミルは、中庭に横たえられている人の半分にも満たない数だが、原型をとどめている戦士や兵士たちを次々と呪文で蘇らせていった。
中庭にいてラミルの呪文によって死者が次々と生き返っていくと、その騒ぎを聞いた戦士や兵士、そして王の一族や王宮で働く給仕たちまでもが中庭に出てきて、蘇った者たちと言葉や握手を交わし、抱き合い、そして大きな歓声がわきあがった。
ラミルは、神の戦士との戦いと何度もリバエスを使ったため、もはやその疲れは極限にまで達していたが、最後の1人・・・最後の力を振り絞ってカーズを蘇らせた。
ゆっくりとカーズは目をあけてラミルを見た、周りの歓声を耳にし、喜び合う光景を目にし、ラミルの手をしっかりと握ると、ゆっくりと体を起こした。
「俺は・・・助かったのか?」
「カーズ、すまない、戦いに巻き込み、一度は君を死なせてしまった」
「そうか、俺はやはり死んだのか?でも生きているぞ、ラミル、お前の顔も見えるし、みんなの歓声も聞こえる」
ナナがカーズのもとに歩み寄って声をかけた。
「ラミルが、私も、貴方も、そして多くの兵士たちも蘇らせてくれたの、ジゼルの魔法で」
「ラミル、そうか、やっぱりお前が、こんなに多くの者を蘇らせるなんて流石だな、でもこれ以上はお前の体が駄目になってしまう、奴らとの決戦に備えないと」
「もう君で最後だよ、他の者たちは残念だが蘇らせることができない」
「そうか・・・」
「それに、奴らとの戦いはもう終わった、全て終わったよ」
ラミルの言葉を聞いた者たちが歓声を上げ、多くの兵士たちがラミルとシールを称えた。
ラミルは再びナナを抱き寄せようとしたが倒れ込んでしまい、シールが走り寄る。
「ラミル様・・・」
「ラミル・・・」
シールが側にいた兵士にラミルを部屋へ連れていくように頼むが、ナナがすぐに止めに入り、ロザイルに声をかけて王宮の外にあるラミルの家に運ぶように頼んだ。
寝室で深い眠りについているラミルの側に、見守るようにナナとレイラが座っている。
「レイラちゃん、無事に帰ってくることができて本当に良かった」
「うん、お兄ちゃんはきっと助けに来てくれるって信じていたし、ちゃんと食事も用意されていたし、感じの良い女性が付いていてくれたから・・・あのダルガムって男は最低だったけど」
ナナはラミルを見つめた。
「この人は約束どおり敵を倒してアルムを守ってくれたわ、レイラちゃんも疲れたでしょ、隣の部屋が空いているから休みなさい」
「はい」
レイラは、開放された安心感からか、ベッドに横たわるとすぐに深い眠りについた。




