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サムはラミルの動きを慎重に見ようとして動く気配はないが、ヘルはすぐに襲いかかった。
ラミルは左足を軸にして体をわずかに回転させ、その場からほとんど動くことなく左腕の盾と王の剣だけでヘルが繰り出してくる攻撃を全てかわし、ヘルの動きを完全に見切ったところでヘルの繰り出した剣先を左手の指先でつまんで止めて見せた。
「これが貴様の全力か?なんだ、こんなものか?おいおい、本気でこいよ、まさかこれが本気とか笑わせるようなことぬかすなよな、もしこれがお前の本気、全力だって言うなら、お前なんかあいつにだって勝てないぞ」
健人はわざと挑発するように言って兵士を次々と倒していくシールを顎で指して鼻で笑った。
「くそっ、舐めやがって」
ヘルは力を振り絞ってラミルの左指につままれたままの剣を引き抜いて、そのまま剣を振り下ろしてみせたが、ラミルはその動きに合わせるように懐にもぐりこむと、左拳が全て減り込んでしまうのではないかと思うほどの力でその顔面に拳を叩きこんだ、ヘルは鼻の骨が折れた鈍い音とともに鼻血を噴き出しながら倒れた。
サムはその隙にラミルの後ろに回り込んで襲い掛かったが、ラミルはその気配を素早く察すると、わずかに体を横にずらして攻撃をよけ、剣を持っているサムの右手首を強く掴んで剣先を鼻が潰れて口を大きく開けて息をしているヘルの口に深く突き刺した。
ヘルが断末魔の奇声を発して息絶えるとラミルはサムの手を放したが、仲間を刺して動揺したサムは剣を見つめたまま呆然としている。
「貴様には前に言ったよな、お前らの動きは遅えんだよ、まったく相手にならねえんだ」
その言葉で我にかえったサムは、恐怖と怒り、そして憎しみに震えながら無謀に剣を振り回してラミルに襲いかかったが、ラミルはその攻撃をことごとく剣で撥ね返し、最期に大振りになったサムの剣を大きく弾き飛ばして丸腰になったところで、その胴めがけて王の剣を振りぬいた。
サムが奇声を上げて腹を押さえて後ずさりすると、近くにいた他の戦闘士がラミルの前に立ちはだかり、すぐさま魔法師がサムに近づいてケールを施して回復させていく。
(なるほど、そういう連係なのか、それならまずは魔法師と魔導師を倒す必要があるな)
(健人、ケールじゃ蘇生できない程度までやるしかないってことだよな)
(そうだ、もう手加減なんてことは考える必要はねえぞ)




