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ラミルは王の間を出てザハールにある自宅に戻ると、慌しく戦いの準備をはじめた。
「どうしたの?戦いの準備なんて、どこかの町で何か起こったの?」
「いや、アルムではなく、北にあるカレルが何者かに滅ぼされた」
「カレル?はじめて聞く名前だけど・・・」
「兵力はアルムの10倍以上と言われていた、先代の王様が不可侵の取決めを結んでいたから侵攻して来なかったけど、もし侵攻されていたらアルムなど簡単に滅ぼしてしまうぐらいの強大な国だよ」
「そんな国がいったい誰に?」
「神の戦士という百数十人の兵らしい」
「たった百数十人ですって?アルムの兵士よりも少ないじゃない」
「それだけの人数で、アルムの10倍以上の兵を倒して国を滅ぼすなんて想像できないだろ」
「それで?カレルへ行くの?」
「それはまだわからない。王様宛の書簡が来て、我らの王に忠誠を誓うなら危害は加えないと警告してきた、だから準備をしておかなければならない」
「そうなの」
「ところでリリアは?」
「お昼寝をしているわ、すぐに王宮に戻るのでしょ、顔だけでも見て行けば?」
「そうだな、準備ができたらそうするよ」
ラミルは急いで準備を終えるとリリアの顔を見に部屋へ入った。
アルムの国はもちろん、誰よりもナナとリリアを守りたいと思っているが、相手がどのような集団なのかわからないため不安になる。
(もし本当に奴らの言う王が私だとするとリリアは王女でナナは王妃ということになるな。やはり今のうちに2人を安全な場所へ行かせるべきだろうか)
ラミルはリリアの寝室を出ると、ナナに声をかけた。
「ナナ、もし神の戦士と戦うことになるとザハールは戦場になるかもしれない。今のうちに少しでも安全な場所へ避難しておいてくれないか?」
「でも、どこへ行けば」
「西北のデルダ、そしてカレルへ進んできているようだから、南部・・・そうだ、スプラのお婆さんの所が良いかもしれない」
「でも、もし百数十人の兵士で2つの国を滅ぼしたなら、まさか魔王が復活なんてことは」
「いや、魔物が出たという話はどこにも無いし、魔王の軍団なら神の戦士とは絶対に名乗らないだろう。それに8年前、僕は確かに魔王を倒したから復活はありえないよ」
「どうしてもスプラへ行かないとだめ?これでも私はあなたと共に戦った仲間よ、今だって体術の鍛錬は怠っていないからリリア1人なら守れるわよ」
「馬鹿なことを言うなよ、相手はわずか百数十人で、万を超える兵を倒して国を滅ぼしてしまうような奴らだぞ、いざとなったら僕だって危険を承知でジゼルまで太陽の剣を取りにいかなければならないかもしれない、もしもの時に僕はお前やリリアを守ることはできないかもしれないんだ、頼むから言うことを聞いてくれ、僕は君たち2人を失いたくない!」
ラミルの大声でリリアが目を覚まし、驚いて2人の様子を見に部屋から出てきた。
「パパ、ママ、喧嘩しちゃだめ!」
ナナがリリアを抱き上げると、ラミルはリリアの頭を撫でながら微笑んだ。
「大丈夫だよ、喧嘩しているわけではないからね・・・ナナ、お願いだから、頼む」
ラミルの気迫に押されて渋々と承諾し、ナナもリリアと奥の部屋へ行って支度をはじめた。
「ナナ、リリアを頼むぞ、そしてお前も無事でいてくれよ」
ラミルは支度をしているナナに声をかけて家を出た。
ナナも早々に支度を済ませると、王宮で生活している間に乗れるようになった馬に2人分の荷物を積んでリリアを背負い、スプラの祖母の家へと向かった。




