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18

 アンに着いたのは町が寝静まっているはずの真夜中だった。

「ラミル様、アンの町の中で野宿するのですか?」

「心配するな、ちゃんと寝る場所は用意してもらうから安心しろ」

 広場に向かうと、いつになく多くの兵士が集まり、なにやら火が焚かれている。

「おい、お前たちどうした?」

「あっ、ラミル様、実は・・・」

 神の戦士たちが谷の入口に現われ、50人余りの兵士と、ハスバルを含む3人の戦士が殺されたことを知った。

「なんだと!ハスバル様が殺されただと!そんな・・・それで、奴らは?」

「ロザイル様が術を使って被害を食い止めたところで、ラミル様に伝えろと言葉を残して突然目の前から消えてしまいました。」

「奴らは何と?」

「妹の命は剣と引き換えだ、すぐに剣を持ってカレルへ来いと」

「あいつら・・・絶対に許さん、ロザイルはどこにいる?」

「負傷しましたが、まだ谷の入口にいると思います」

「わかった、シール行くぞ、もう一刻の猶予も無い」

 急いで谷の入口へ向かった、東の空が薄っすらと明るくなってきている。

「ロザイル、ロザイルはいるか?」

 腕に布を巻き、辛そうな顔をしてロザイルが顔を出した。

「ラミルか・・・入ってくれ」

 ロザイルは足もやられたようで、引きずるようにして歩いて椅子に腰掛けた。

「奴らがここに現われたのか?」

「ああ、ハスバル様がやられた、多くの兵士も・・・」

「アンで聞いたよ」

「奴らは雷の呪文を使ってハスバル様たちを動けないようにしておいて、嬲り殺すような真似しやがった、ちくしょう・・・お前もジゼルの末裔だろ、レミルの子孫だろ、何とかしてくれよ」

 ラミルは返す言葉が無かった。

「負傷した者は?」

「重傷者は隣にいる、俺はまだこれでも軽症だ、中には腕や足を斬り落とされ、馬で引きずり回されて殺された奴もいる、人のやることじゃない」

「そんな酷いことを・・・ようすを見てくる」

 ラミルはロザイルのいた小屋から出ると、呻き声の聞こえる隣の小屋へ入る。

 小屋の中は血の臭いが漂い、ちょうど今息絶えた兵士を運び出そうとしている。

 ラミルは、まだ息のある者1人1人にケールを施していった、軽症者はすぐに動けるようになったが、手や足を斬り落とされたような重傷者には血を止めてやることしか出来なかった。

(それにしても酷いことをする。奴らは綺麗事を言っているが、ロザイルが言っていたように、これは人のやることじゃない)

 ラミルはロザイルのもとへ戻り、ロザイルにもケールを施すと、呪文で治っていくロザイルの傷を見てシールが驚いている。

「ラミル様はそのようなことも出来るのですね」

「ラミル、その兵士は?」

「兵士試験に合格したばかりのシールだ。8年前にシーバで助けて、母親をウルトへ連れていっただろ?」

「ああ、あの時の・・・でもなぜそんな新入りを?」

「こいつもジゼルの宿命を背負っているんだ、俺と同じようにな」

「そうか・・・すまん、今はジゼルの名を聞きたくない」

「そうだな、ただ僕たちはあいつらとは違う、奴らを許すわけにはいかない」

「本来なら、こうして傷を治してもらったんだし、聖戦士として奴らに立ち向かわなければならないだろうが今はそんな気分になれない。すまないがラミル、君に手を貸すことはできない」

「わかった、でも少しここで休ませてくれ、休んだらすぐ谷へ入る」

「ああ、空いている部屋があるから好きに使ってくれ」

 ラミルとシールはロザイルのいる小屋を出て空いている小屋に入ると、2時間ほどの仮眠をとり、日が昇るとすぐに谷へと入っていった。

「ラミル様、あんな残酷なことをする奴らを、私は許せません」

「私だって同じ気持ちだ。今まで同じジゼルの末裔だと思って多少手加減していたが、もう許せない、レイラを取り返すだけじゃなく、抵抗するなら倒すしかない」

「ラミル様、変なことを聞くかもしれませんが、ラミル様はハスバル様のことを聞いたとき、とても辛そうな顔をしたように思うのですが」

「ハスバル様か・・・私が戦士となって始めて出兵したとき、ジクーズ様と、ハスバル様、そしてアルノ様の4人で魔物退治に出たんだ」

「8年前のあの時ですか?」

「そうだ、戦士になったばかりでジクーズ様以外は誰も認めてくれなかったが、シリムへ魔物退治に行き、そこで功績をあげた僕をハスバル様はすぐに認めてくださって、それからハスバル様は私にとても良くしてくださったのだ、年下の私のことを、時には弟のようにかわいがってくれたこともあった」

(そっか・・・僕の知らない間に、そんなことがあったんだな、確かに豪快で、気さくで良い人だったもんな)

 健人もハスバルと初めて出兵したときのことを思い出した。

「だからこそ、もう奴らを許すことは出来ない。シール、ここからは実戦になると思うが、お前は私との鍛錬で実力をつけた。臆することはない、自分の力を信じて戦うんだ、いいな」

「はい、わかりました」

 どこか不安そうな声で答えた。

「シール、不安なのは当たり前だ。元気をだせ、お前は1人じゃない」

「はい、わかりました」

 もう一度言った言葉は、少しだけ元気な声でこたえた。

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