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「どうしたラミル、私に何か用か?」
「父さん、彼は新しく兵士になったシール、訳あって彼に剣を作らなければならないんだ、作業場を貸して欲しい」
「急になんだ、剣はそんな簡単に作れるものじゃないぞ・・・」
「何度か作るのを手伝ったことがあるよ、作るための道具と窯が必要なんだ」
「なんだ、急に、お前が言うのだから何か理由があるのだろう、わかった、窯を使って良いか頼んでくるから待っていなさい」
ラシンドが店主に事情を説明すると、店主もラミルの頼みでは断るわけにはいかないと承諾し、ラシンドは火をおこしはじめ、シールも手伝って準備を進める。
「材料は鉄と鋼で良いのか?」
「いや、これを溶かして使う」
ラシンドは、ラミルが袋から取り出した石盤を手に取って驚いた。
「おい、こんな重い鉱石で剣なんて作ったら振れないぞ」
ラミルは石盤を軽々と持ち上げて、シールに渡した。
「詳しいことは後で話すよ・・・シール、まずはこの石盤を溶かすんだ」
「何か書かれているようですが、よろしいのですか」
「良いんだ、そんなことは気にするな。どうしてもこの鉱石じゃないと駄目なんだ、でもこの鉱石は簡単に手に入れられる物ではないんだ」
シールは言われるままにラシンドが用意した容器に2枚の石盤を入れて窯の火力を強める。
「いったい何なんだ、この鉱石は、いくらお前たちの力が強くても、こんなもので作った剣は重すぎて振ることなんて出来ないぞ」
「父さん、この石はジゼルに古くから伝わるセラム鉱石という石なんだ」
「ジゼル・・・またジゼルか、母さんも、お前も、そして今度はレイラが連れ去られた、お前たちはいったいジゼルとどんな関係があるんだ!?」
「父さん、黙っていたけど、母さんも僕も、そしてレイラも伝説の聖戦士レミルの子孫なんだ」
「レミル様の子孫だと?馬鹿なことを言うな、いくら母さんが子孫で、その母さんから産まれたからといって・・・父さんの血だって混じっているじゃないか」
ラミルはセラムで出来た剣を父親に差し出した。
「この剣、持ってみてよ」
ラシンドはその剣のあまりの重さに驚いた。
「お前、こんな重い剣を使っているのか、これで戦えるのか」
「このシールは兵士になったばかりの新人だよ、でも彼だってこの剣を軽々と振り回すことができる、それがジゼルの末裔の血、そして力なんだよ」
「だからって母さんやお前、そしてレイラがレミル様の子孫だなんて・・・」
「子孫だから呪術を使うことができる。だから8年前に僕は魔王を倒すことができたんだよ」
ラシンドはまったく納得できないようだ。
「とにかく、今は僕たちに任せて、レイラも必ず連れて戻ってくるから」
ラシンドは納得できないまま作業場を出て行ってしまった。
「ラミル様、よろしいのでしょうか?」
「気にするな、今は剣を作ることが先だ、それより鉱石の溶け具合はどうだ」
「だいぶ溶けてきています、型に入れてみますか?」
「いや、もう1枚足そう、それでは剣を作るには足りない」
ラミルは見様見真似で覚えたやり方を思い出しながら、シールに指示していく。
シールが窯を見ている間に適度な太さの剣の型を探し出すと、溶けきった鉱石を流し込むように指示し、流し込まれた鉱石を小さなハンマーのようなもので叩き始めた。
作業場所から金属を叩く音が響いてくると、頭をかかえて出ていったラシンドが戻ってきて、2人のようすを見ていたが、2人が慣れない手つきで剣を鍛えようとしているのを見て、その危なっかしい手つきにたまらず声をかけた。
「それじゃだめだ、肝心なときに折れてしまうぞ、いいから貸せ」
ラシンドが熱せられたセラム鉱石を叩いて整形していく。
ラシンドには剣は重くて持ち上げることができないので、窯への出し入れはラミルが行い、シールが窯の火力を調整する。
やがて剣の刃の部分の形が完成し、もう一度熱して鍔と持つ部分が形作られると、いよいよ剣の原型が完成した。
「さて、これから研ぎだ、この鉱石は鋼と同じように研げるのか?」
「この剣は研ぐ必要は無いんだ。仕上げは呪文でやるからここまでで良いよ、本当にありがとう」
「また呪文か・・・お前が特別な力を持っていることはわかったよ、ラミル、頼むからレイラを助けてくれ、頼む・・・」
「父さん、そんなの当たり前じゃないか、僕にとってもレイラは大切な妹だよ、母さんを助けたように必ずレイラを助け出すから待っていて、母さんにもそう伝えて」
そう言って出来上がった剣を布に包み、馬に乗せて2人は鍛冶場を後にした。
「ラミル様、その剣はまだ使えないのですか?」
「そうだ、呪文で仕上げをしなければならない、そのためにこれからジゼルへ向かう」
2人はザハの丘の南を回り込んでアンを目指した。




