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ラミルは部屋に置いてあった2本の鍛錬用の木剣を手にすると、松明に照らされて薄明るくなっている中庭にシールを連れ出した。
「何をはじめるのですか?」
ラミルは木剣をシールに投げ渡した。
「試験で見せた実力は、お前の本当の実力ではないはずだ、それを俺に見せてみろ」
「しかし・・・」
「なんだ?あれがお前の実力なのか?そんなはずはないだろう、他の者の目は騙せても、この私の目を騙すことは無理だぞ」
「私には、あの短剣を投げつけた男を倒したときの、ラミル様の剣は見えませんでした」
「全く見えなかったのか?」
「いいえ、全くではありません、薄っすら線のような物が走ったのは見えました」
(ラミル、あれがわずかでも見えるなら見込みはあると思うぞ、たぶん他の兵士や戦士でも見えなかった奴がほとんどのはずだ)
(そうだな)
「薄っすらとは見えたのだな。そうか、たぶん私の動きが薄っすらでも見えたのは、お前だけだ」
「えっ?」
「やはり覚醒は始まっているようだな。さぁかかって来い、来ないならこっちから行くぞ」
ラミルは剣を構え、それを見てシールも慌てて剣を構える。
ラミルは手加減しながらシールに襲い掛かったが、薄明るい中でも手加減したラミルの剣が見えているのか、シールはしっかりと自分の間合いを保ちながら攻撃をかわしている。
(無駄が無くて良い動きだな、やはり素質・・・魔闘士の血だな。よし、これならどうかな?)
今度は少しだけ動きを速めてみると、多少見えにくくなったのか避けるための動作が大きくなったが、それでもなんとかかわしている。
「どうした、避けるだけでは、いつまでたっても相手は倒せないぞ」
返事がない、どうやら言葉に反応できないほど必死になっているようだ。
(もう余裕がないな、今はこれが限界か)
ラミルは力強くシールの剣を弾き飛ばして、首筋に剣を突きつけた。
「今日はここまでだ、所詮学校で1番の腕前でも、まだその程度だと言うことだ」
シールは息が上がり、肩で大きく息をしながらラミルを見ている。
「いきなり・・・そんな・・・」
今にも泣き出しそうな目をしている。
「シールよ、さっきも話したようにお前は恐らく魔闘士の末裔だ。しかも、その覚醒は始まっている。これからもっと強くなるだろう、しかし・・・」
ラミルは躊躇した、いくら探していた魔闘士の末裔とは言え、未熟なシールを巻き込んでしまって良いのかと。
ようやく息が整ってきたシールは、目に涙をいっぱい溜めながらラミルを見た。
「どうしてなのですか?私は、今日兵士になったばかりです。ラミル様の言うように魔闘士の末裔かもしれません。でも学校を卒業して、やっと兵士になったばかりなのに・・・」
涙声で必死に訴えようとしている。
「シール、私が戦士になったのは学校を卒業する前だ、もちろん王様にも色々考えがあってのことだろうが、当時衛兵をしていた男に勝った」
「それはラミル様の実力で、私にはそのような実力など・・・」
ラミルはシールの体に触れた、背はラミルよりわずかに低いが、兵士の中では大きい方で、右腕の筋肉は重い剣でなければ、それなりの速さで振ることができる程度に筋肉が付いているが、胸や背中、左腕、腿などの筋肉はあまり鍛えられていない。
「お前はあまり重い剣では体を鍛えていなかったようだな」
「いえ、そのようなことは」
「一番重い剣か?」
「いいえ、みんなよりは多少重い剣でした」
「やはりな、確かに右腕の筋肉は多少鍛えられているが、その他がまったく駄目だ」
「重い剣は振り回すことができなかったので」
「そうだ、重い剣を振るためには腕以外の筋肉も鍛えなければならない。足、腰がふらついてしまっては、振り回すことはできないだろ」
(ラミル、ちょっと良いか、ここからは僕が話すよ・・・)
「シール、すぐに私のようになれとは言っているのではない。しかし、お前には素質、いや魔闘士の血が流れ、その力が覚醒を始めている、今鍛えることで私にとってより大きな力になる」
「ラミル様の力に?」
「そうだ、これから話すことは他の者に話してはならない、お前が魔闘士の子孫だから話す」
シールは驚いた表情のまま、ラミルの目を見つめた。




