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いよいよ3番目の集団の中にシールが姿を見せ、ようやくシールの番がまわってきた。
(いよいよシールの番だ、学校で1番強いという実力を見せてもらおうか)
号令でシールは剣を構えた、その構えはいかにも学校で教わった構えだが、無駄な力が入っているようすは無く、全身から放たれる威圧感は兵士を圧倒している。
(なかなか良い構えだな、凄みを感じさせているから兵士も迂闊には飛び込めない)
双方とも動かず、互いに相手の動きを見極めようとしているが、突然兵士が仕掛けた。
シールは基本に忠実な動きで兵士の剣をかわし、まだ反撃のチャンスを伺っている。
(冷静だな、あれだけ相手の動きをちゃんと見ているなら、次に兵士が仕掛けたら決まるぞ)
(そうだな、動きの速さはいまいちだけど、動きに無駄が少ないから速く見える)
兵士が体制を整えて仕掛けた瞬間、シールは懐に入り込んで兵士の胴に剣を叩きこみ、健人が予想したとおり勝負が決した。合格を告げられたシールはラミルを見上げて手を振り、ラミルもそれに応えた。
そして、いよいよ最後の受験者が中庭の中央に現われた、その中に体はそれほど大きくないが、かなり場慣れしている雰囲気がある男がいる。
(ラミル、あいつ強そうだな、疲れた兵士じゃ相手にならないかもしれないぞ?)
(そう?)
(うん、なんか嫌な雰囲気の男だ、何度か試験を受けている奴かな・・・場慣れしていると言うか、実戦経験者かもしれないな)
(実戦経験者?そんな奴が兵士試験を受けに来ることは無いと思うけど)
(ちょっと、こいつは要注意だよ)
はじめの合図があり、男は兵士が構える前に剣を振り上げていきなり襲いかかった。
(速い、というか隙を付く動きだ、やはりあいつは絶対に実戦経験がある)
男は兵士の兜の上に木剣を叩きつけ、兵士がふらついた途端に腕や胴をめった打ちにした。
兵士が倒れて他の兵士が止めに入ろうとした瞬間、男は懐に忍ばせていた短剣を王様に向かって投げつけた。
(あぶない!)
ラミルは王様の前に立ちはだかり、左腕の盾で短剣をはじいた。
それを見た兵士たちが剣を抜こうとした瞬間、近くにいたシールが、持っていた木剣で男を背後から殴り倒し、兵士たちが男を取り押さえた。
「シール・・・」
(ラミル、投げられた剣を良く見ろ!)
刃の部分が青く輝いている。紛れもなくセラム鉱石で作られた物だ。
(セラム・・・奴らか?)
ラミルは壁を飛び越えて中庭に飛び降りると、兵士たちをかき分けて男に近づいた。
「貴様何者だ?神の戦士を名乗る奴らの仲間か?」
「くそっ、お前さえいなければ命令どおり王を殺せたものを・・・その鎧の色、そうか貴様がラミルか・・・」
(こいつ兵士か、他に様子を見ている奴がいるかもしれないな、ちょっと見せしめにやるぞ)
(健人・・・別にいいんじゃないのかなぁ)
(いや、王様を襲っても無駄だというのをわからせる必要がある、ここは俺にやらせてくれ)
(まったく・・・しょうがいないなぁ、わかったよ)
「こいつと1対1で戦う・・・みんなを安全な場所へ移動させてくれ」
健人は近くにいた兵士に言うと、男を取り押さえている数人の兵士を残し、兵士も合格者たちも中庭から出て行った。




