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ラミルが宿営地に到着すると、ロザイルに声をかけた。
「さっきウズルに神の戦士の兵士が現われた。ここを通過しなかったか?」
「奴らが現われただって?いいや、ラミルがウズルへ行った後は誰も通っていないぞ」
「そうか・・・」
ラミルはサザルで兵士が殺されたこと、そして、そいつらはウズルまで来たことを話した。
「どうやってアルムに入ったのだ、このバイスの山のどこかに抜け道があるのか」
「あなた!」
突然ナナが馬に乗って現われた、鎧を身に着け、水の杖を持っている。
「ナナ!なぜここに来た?スプラに行けと言ったはずだぞ、リリアは?」
「リリアはおばあちゃんに預けてきたわ」
「なんで来たんだ、レイラだけじゃなくお前の身に何かあったら・・・」
「レイラちゃんに何があったの?なぜ教えてくれないの、私はあなたの妻なのよ」
「お前の夫だからこそ、お前を危険な目に遭わせたくないんだ、そんなこともわからないのか」
ラミルはナナを連れて宿営地の小屋から離れた木陰に移動すると、神の戦士がジゼルの末裔で、レイラを連れ去り、これから神の戦士たちと戦わなければならないことを話した。
「神の戦士はあまりにも危険だ、それほど強くない者も確かにいるが、前にも話したが百数十人で万を超える兵を倒すということは、かなりの強敵がいるはずだ」
「わかっているわ、でも私だって聖戦士の1人よ、それにあなたの妻、少しでもあなたの力になりたいのよ」
「その気持ちは嬉しい、でも今は妻でありリリアの母だ、妻だから力になりたいと言うなら、すぐにリリアの元に帰ってくれ、そしてリリアを守ってくれ!」
「でも・・・」
「帰れと言っているのがわからないのか!」
大声を上げて怒鳴りつけた。
その声を聞いたロザイルが駆け寄ってくる。
「ラミル、ナナ、どうしたんだ?」
「ロザイル、すまないがナナを頼む、俺はすぐに谷へ入る、時間が無い」
ラミルは吐き捨てるように言うと、馬の方へ歩きはじめた。
「ラミル、お前・・・」
ラミルはそのまま馬の近くに行き、荷物を確かめはじめた。
「わかった、言うことを聞くわ、だけどこれだけは持っていって」
ナナはラミルの側に駆け寄り、左指に輝く指輪をはずしてラミルに手渡した。
「あの時の指輪、私を守ってくれたアーシャ様の指輪よ」
ラミルは指輪を革の紐に通して首に縛りつけると、ナナの頬を流れる涙をぬぐった。
「ありがとう。指輪のこと忘れていたよ、さっきは怒鳴ってすまなかった。でもわかってくれるよな、わかって欲しいんだ、今回の相手は恐らく魔物よりも危険だ。ただでさえレイラが人質になっている、君が足でまといだとは思わないが1人で行動した方が良いと思っている。君にはリリアだけを守って欲しい、リリアのことは頼んだぞ」
優しい笑顔を見せてナナを強く抱きしめて馬に跨った。
「絶対帰ってきてね、必ずレイラちゃんも連れて帰ってきてよね、いつまでも待っているから」
ラミルはナナに向かって合図するように手を上げると谷へと馬をすすめた、出来る限り馬を急がせてジゼルを目指す。




