7
ラミルは村長の家の中に戻ると、外の騒ぎが気になって手を止めて外を覗いていた村長がラミルに話しかけた、すでに4枚の石盤の翻訳が終わり、最後の1枚を書こうとしている。
「何が起こったのですか?」
「神の戦士の奴らが石盤を奪いに来ました」
「えっ?大丈夫なのでしょうか?」
「平気です、もう追い払いましたから。しかし、翻訳が終わったらこれは私が持っていきます、ここに置いておくのは危険です」
ラミルは椅子に腰掛け、翻訳の済んだ紙を手にした。
クイーク
天地の神の力、竜巻の力を以って、大地を揺るがし、地の底へ封じ込める
(これも『大地の剣』が持つ力かな)
メル
森の神の力、生命の源を絶ち、死の休息を与える
(森の神の力って何だ?これは良く考えないとわからないな)
リバエス
死神の力、死せる者の魂を操る
(死神って・・・死せる者の魂を操るって何だ?これはちょっと怖い呪文かもな)
「さぁ、終わりましたよ、これが最後『ジゼル』です」
ジゼル
全知全能の神の力、太陽の力、降り注ぐ、善なる者は繁栄し、悪なる者は消滅する
「村長、これを見る限り、ジゼルは最終破壊呪文ではないようですね、どうやらこれは太陽の力で善と悪、それぞれの者に天の裁きが下る、そんな呪文のようですね」
「そのようですね、魔王には悪なる心を持った者への制裁が下ったということでしょう」
「ありがとうございました、石盤は持っていきます。それから、石盤に書かれていたこと、そして存在も忘れてください、そして何も見なかったということにしてください、村長が襲われるといけない」
「わかりました、気をつけます。ラミル様もお気をつけて」
「ありがとうございます、ではジゼルへ行ってきます」
ラミルは石盤を袋に入れると、アルム語で書かれた紙を懐に入れて谷へ向かった。
(でもなぜ窯の中に石盤が隠されていたのだろう?)
(ロムさんたちはジゼルの末裔なんだから、あってもおかしくないんじゃない?)
(じゃあなぜ8年前に教えてくれなかったのかな)
(ロムさんも知らなかったということ?前からあそこに隠されていたんじゃないの?)
(それはおかしいよ、8年前にあの窯で火を起こし、この鎧や剣を作ったんだぞ、灰の中にあったら溶けるか変形していたはずだよ)
(そうか・・・)
(いったい誰があそこに隠したんだろう・・・)
(もしかして、ロムさんが亡くなって、サーさんたちが溶かしてしまおうと思って入れたんだけど、その前にザギルの野郎に襲われてしまったのかもしれないね)
(そうか、そういうこともあるのか、それにしても、これを見つけたのが僕たちで良かった)
(そうだね、あいつらも石盤とは言っていなかったから、恐らく何を持ち出したのかわかっていないんだろうな)
ラミルがサザルの門近くを通ると城壁の様子がおかしいことに気付き、馬を止めて近づいていくと女たちのすすり泣く声と男たちの怒りの声が聞こえる。
(何かあったのかもしれない、様子を見に行こう)
ラミルは門の前で開門するように言うと、中から目を赤く晴らした兵士が顔を出した。
兵士はラミルの顔を見て慌てて涙をぬぐい、ラミルを中へ入れる。
「どうした?いったい何があったんだ?」
門を入ってすぐの広場に、数人の兵士が地面に横たえられていて、その傍には兵士たちの妻や子供と思われる者たちが寄り添って泣いている。
「さきほど、見たこともない3人の兵士が来て、ラミル様を出せと。この者たちが門の外に出て、ラミル様はここにはいないと言ったのですが、納得しなかったので言い合いをしていたら、いきなり剣を抜いて」
「その3人にやられたというのか?」
「はい・・・」
(くそっ、とうとうアルムでも犠牲者が出たか)
(ラミル、カレルでも兵士は全滅したって言っていたよな)
(そうだよ)
(と言うことは、やっぱり同じように兵士たちの身内は悲しんでいるはずだ、やはり神の戦士がやっていることは間違っている、ただのジゼル再興じゃない)
(そうだな、この人たちだって兵士とは言っても戦争しているわけじゃないし、こんな突然の悲しみを味わうなんて思っていなかっただろう。あいつら・・・帰さずに倒すべきだったな、そうすれば彼らの悲しみを少しは癒せたかもしれない)
(この人たちの仇を討つのは簡単だ、でもそれだけじゃだめだ、もちろん奴らを許すつもりはないし謝って許されることじゃないけど)
ラミルは横たえられた兵士たちに手を合わせると、身内の者たちに仇を討つことを約束してサザルを後にした。




