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しばらくして先ほどの女性が兵士と入ってきた、女性の手には新しい服が用意されバスタオルのような大きな布も持っている。
「ああ、食べていただいたのですね、良かった。では早速体を洗って着替えましょう」
女性はレイラの手を取って奥の部屋へ連れて行こうとすると兵士がその先にある扉の鍵を開けた、扉を開くと浴室になっている。
レイラと女性が浴室に入って扉を閉めようとすると、兵士が入口に立ったまま扉を押さえ、監視するように見ている。
「ちょっとあんた、何を考えているのよ、王女様の沐浴と着替えを覗くなんて最低よ、さっさと出ていきなさいよ」
「しかし・・・」
「しかしも何も無いわよ、失礼な男ね、早く出て行きなさいよ」
女性は強引に兵士を押し出して浴室から追い出し、内側から鍵を掛けると兵士に向かって叫ぶように言い放った。
「覗いたりしたらただじゃおかないからね、私はダルガム様から直接王女様のお世話をするように言われているんだから」
「わかったから、さっさと済ませろ」
兵士の足音が遠ざかり、部屋から出ていく音が聞こえた。
「さぁ、これで良いわ、私もいると恥ずかしいでしょうけど、女同士だから良いわね」
レイラは少し恥ずかしかったが、母親と一緒に沐浴した頃のことを思い出した。
「平気です、色々気を使っていただいてありがとうございます」
「私なんかに丁寧な言葉なんて使わなくて良いのよ、貴女は王女様なんだから」
「あの・・・」
「どうしたの?痛かった?」
「いえ・・・貴女のことを何て呼んだら良いのですか?」
「ああ、そうね、名前を言っていなかったわね、私はサイヤよ」
「サイヤさん・・・」
「サイヤで良いわ、貴女は王女なのでしょ、さっきも言ったけど丁寧な言葉は使わないで」
レイラは思い切ってサイヤに全てを打ち明けた。
「そうなの、突然連れてこられて王女様なんて言われてもねぇ、だから言葉遣いも普通なのね」
「私、ジゼルのことは何も知らないんです。ここに来て初めて兄がレミル様というアルムでは伝説の戦士の子孫だと聞かされ、私もその子孫だと」
「もう8年くらい前になるのかしら、お兄様のことはカレルでも噂になったわ。アルムに現われた魔物と悪魔を倒した勇敢な戦士がいるってね、貴女はその妹さんなのね」
「私、怖いんです、なんとか家に帰りたいんです、どうしたら良いのでしょう」
「大丈夫よ、私が付いているわ、それにダルガム様は優しい方だから安心して」
レイラは返す言葉が見つからなかった、あのダルガムという男が自分に言った言葉、そして野望・・・だが今はこのサイヤの言うことに従おうと思った、いつかきっと、必ず兄さんは助けに来てくれる、ただそれだけを信じて待とうと思った。




